
コラム
改正民法物語20(保証債務・終章)
2021年2月22日
最後に、事業性貸金等債務に関する個人保証の制限について、大まかな感想を述べてみたいと思います。
これまで保証債務について10回ほど項目を挙げて説明してきました。保証債務に関する改正について、皆さんはどう感じられたでしょうか。必ずしも十分に保証人の利益を守れる改正と言えるか、疑問なしとしないという人もいます。
確かにそうかもしれません。経営者保証の例外の範囲、保証意思宣明公正証書の問題等、法律改正によっても問題が残ったとも言えます。しかし、現在の時点ではこれが精一杯の改正であったと思います。
関係者は、よりよい保証制度を作りたいと思って議論を重ねてきましたが、できあがったものがその思いに合致したものか不明です。ただ、すべてのステークホルダーにとって満足がいく内容の制度を作ることは困難です。
この点、弁護士の立場は、多少複雑です。というのは、消費者たる保証人の側から債務整理を進める立場で関与することもあれば、債権者たる金融機関の立場で債権回収を図る場合もあるからです。
その意味では、両方の気持ちが分かるのです。そういう弁護士の立場から一言今回の改正について意見を表明することが許されるなら、保証人と債権者の利益の調和点として、まあまあ良い法制度ができたと感じます。
不十分な点は数多く残っていますが、それは今後の運用を通じて修正することも可能だと思います。法律は一度作ると一人歩きすることがあります。社会や時代の変化につれて法律の解釈もまた変遷を余儀なくされるのです。
今後更なる改正が必要となる時まで、今回の改正民法で世の中を律していく他ありません。全てのステークホルダーがよりよい運用を心がけるべきだと思います。
今までと異なり、今回の改正では金融機関側にも一定の負担が求められており、慎重な対応が必要とされます。今までのように、兎に角保証人を取るというよりも、キチンと会社の事業性を評価する手腕が求められるわけです。
その意味では、金融機関の側にも一定のスキルが要求されるわけで、良い意味での緊張関係が出てくるかもしれません。何でもかんでも保証人を取るような融資は、双方に取って不幸な融資方法であると思います。
今回の改正によって、金融機関側は融資に際して保証に頼ることなくキチンと事業性を評価して融資するようになれば、銀行員のスキルも上がり、必要な融資がキチンと選別されるかもしれません。
今後そうなることを祈って改正民法物語とのタイトルのコラムを終了したいと思います。
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