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改正民法物語19(保証債務10)

2021年2月21日 公開 / 2021年2月22日更新

テーマ:法律コラム

コラムカテゴリ:法律関連

今回は、事業性貸金等債務に関する個人保証に関し、主たる債務者の履行状況に関する情報提供義務をご説明します。前回は、主たる債務者の保証人に対する契約締結時の情報提供義務を取り上げました。今回は、同じ情報提供義務といっても、債権者の保証人に対する義務です。

もっとも、この債権者というのは、一般的に金融機関ということになりますから、これは、消費者たる個人が保証人になった場合に、金融機関に対して一定の情報提供を求めることができることを意味します。

具体的には、遅滞なく以下の情報を提供する義務があります。すなわち、①主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行、②並びに、これらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報です(法458条の2)。

実はこれ、債権者たる金融機関にとって結構負担となる義務なのです。そこで、法制審議会においてもかなり抵抗があったと聞いています。しかし、保証人は通常情義に基づいて無償で保証する場合が多く、その保証人に何らの情報提供を行わないというのでは、理屈に合いません。このようにして債権者に対しても情報提供義務が課せられることになりました。

保証人としては、主たる債務者がキチンとその債務を履行しているか重大な関心があります。しかし、これを主債務者に尋ねても、ちゃんと支払っているというに決まっています。

そこで、債権者に直接その履行状況等について問い合わせる権利を認めたのですが、これを債権者の側からすれば、情報提供義務という債務を負うことになったことになります。

問題は、情報提供義務という名の「債務」として法律上構成したことです。実は、これ結構重要な改正が行われたと言えます。というのは、金融機関が保証人に対して一定の義務(債務)を負担することになったからです。

普通保証人は金融機関に対して義務を負担するのみで、債権を有することはありません。しかし、今回の改正では消費者が保証人の立場で、金融機関に対して情報提供を求める内容の債権を持つことになります。

法文上債権者の情報提供義務が債務として規定されている以上、民法上の債務不履行一般の効果が発生すると考えられます。債務不履行の効果は、通常損害賠償義務となりますが、理論的には情報提供義務の不履行を原因とする保証契約の解除もあり得ることになります。

仮に、金融機関が融資に際して保証人を取りながら、保証人からの情報提供請求に不十分な対応しかできず、結果的に保証契約を解除されたら、金融機関としては致命的な問題となります。そこで、この情報提供義務が大きな問題となります。

特に問題となるのが、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における債権者の情報提供義務です(法458条の3)。期限の利益喪失というのは、主債務者が約束通り支払いをせず、そのため債権者に一括返済義務を負った状況のことです。

債権者は、期限の利益喪失の時から2ヶ月以内にその情報を保証人に通知する義務があります。このとき、保証人の住所を把握できていれば良いのですが、所在が不明な場合は、どうするのでしょうか。

そして、債権者が前記通知を怠った場合は、通知するまでに生じた遅延損害金を請求することができなくなるという効果が生じます。この点は、実は大きな問題となりうるのです。

主債務者が支払を停止し期限の利益を喪失したとき、直ちに一括請求(訴訟)を行う金融機関は実はそれほど多くありません。普通は、まず債務者と協議しながらリスケジュールを中心とした返済計画を立てますが、これに数ヶ月単位の時間がかかるのです。

しかし、その間も期限の利益を喪失した債務者には、遅延損害金が発生し続けます。その後、数ヶ月経過して返済条件の合意ができなかった場合、主債務者は遅延損害金の支払義務を負いますが、後日保証人には請求できない結果となります。

そこで、今後は主債務者が期限の利益を喪失した場合は、主債務者との返済協議を行う前に保証人に通知しておく必要があるわけです。

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この記事を書いたプロ

中根弘幸

企業法務・事業再生のプロ

中根弘幸(中根・車元法律事務所)

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