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改正民法物語16(保証債務7)

2021年2月18日 公開 / 2021年2月22日更新

テーマ:法律コラム

コラムカテゴリ:法律関連

今回は、事業性貸金等債務に関する個人保証について、例外的に許される場合をご説明します。民法は、事業性貸金等債務についての個人保証を原則的に禁止しつつ、そこに一定の例外を設けました(法465条の6第1項)。

例外なき個人保証の制限も主張されたのですが、それは中小企業融資の実態を無視した議論であるとの経済界の反対を受け、その意向を受け入れて最後の最後になって例外的に創設された制度です。

私の記憶では、唐突に出てきた例外でした。法465条の6第1項は、公正証書によって保証債務の履行意思を確認するというものです。この制度は、いわば妥協の産物であり、今後どの程度利用されるか不明というのが率直な感想です。

細かい要件については、条文を確認していただく以外にないのですが、要するに、保証人が公証人に口授(くじゅ)すべき事項を詳細に規定することで、保証人の保証意思を明確にするとともに、熟慮の機会を確保しようとしたものです。

このとき作成する公正証書のことを「保証意思宣明公正証書」と言いますが、これは、あくまで保証意思の確認を公正証書で証明しようとするもので、保証契約自体を公正証書で行うよう定めたものでありません。

というのは、保証契約自体を公正証書で行ってしまうと、保証人にとって困った事態が生じうるからです。つまり、公正証書には、通常「執行受諾約款」という特約がつけられるのが普通ですが、これいきなり強制執行をされても良いですよという内容なのです。

ということは、普通であれば保証人は裁判によって債務名義を取られた後でないと強制執行を受ける可能性がなかったものが、公正証書を作成したばかりに、いきなり強制執行を受ける事態に陥ることになります。

それでは、本来保証人の利益を守るための制度が、逆に公正証書を要求したばかりに、不利に作用することになります。立法経緯からしても、この制度がそのような事態を予定していないことは明らかなので、保証契約自体を公正証書で行うことを要求するものではないことは明らかです。

しかし、保証契約を公正証書で行うこと自体を禁止することもできません(本来当事者間の自由です)。そこで、現在では保証契約を公正証書で行うとしても、その前に保証意思宣明公正証書が作成されていなければならない、と考えられています。

では、2,3時間前ならよいのか。どの程度の期間をおいて公正証書を作成すれば有効と認められるのかが問題となります。この点について議論があり、少なくとも同じ日に公正証書を作成することは制限すべきと主張されています。

そうすると、日を変えて2回公正証書を作成することになりますが、金融機関がそんな面倒くさいことをするのかという疑問が出てきます。そこで、前述のように「今後どの程度利用されるか不明というのが率直な感想です。」という見解につながって来るわけです。

最後に、保証意思宣明公正証書を作成する際に、公正証書で確認した保証契約の内容と実際の契約内容が異なるときに、その有効性をどう判断するかという問題があります。

これについては、借入額、利率、遅延損害金、違約金等に若干の相違がある時にどう考えるべきかですが、個別事案毎に判断するほかないでしょう。いわゆる判例の集積を待つことになります。このように、新しい法律を作ると新たな問題が生じることがあるのです。

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この記事を書いたプロ

中根弘幸

企業法務・事業再生のプロ

中根弘幸(中根・車元法律事務所)

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