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改正民法物語4(契約上の地位の移転)

2021年1月23日 公開 / 2021年2月22日更新

テーマ:法律コラム

コラムカテゴリ:法律関連

いわゆる契約上の地位の移転についても、旧法上は明文規定がなく、今回の改正によって初めて認められたものです。

民法では、契約当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する合意をし、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位がその第三者に移転すると規定しています(民法539条の2)。

少し分かりにくいので解説します。契約上の地位の典型的なものは何だと思いますか。不動産の貸主という地位です。というのは、不動産の貸主は、債務者でもあり、債権者でもあるのです。

例えば、建物の貸主は、その借主に対して家賃を請求することができるので、その意味では債権者となります。しかし、貸主は、借主に対して債務も負っているのです。それは、借主に対して建物を用益させるという債務です。

不動産の貸し借りは、法律的には、このような債務者と債権者の用益関係として債権的に構成されます。賃貸借契約は、民法上債権の典型契約として、その意味で債権として構成されているのです。そのため、あくまで人に対する請求権として理解されることになります。

これに対して、土地の地上権は、性格上物権として構成され、直接物(土地)に対して支配をすることができる権利とされているのです。このあたりは、債権と物権の相違について、通常の債権譲渡の項目で以前説明した箇所を参照していただければと思います。

これがまさに、債権と物権の相違として説明されるところで、大学の法学部2,3年生くらいで学習する分野なのですが、少し分かりにくいところです。というか、少なくとも私は理解しにくかったことを覚えています。

不動産の貸し借りを、直接不動産に対する権利として法律構成するのではなく、間に入った人を通じてその人に対する債権・債務として構成しているわけです。

そこで、不動産の貸主という地位は、賃貸借契約上の家賃を請求するという債権者でありながら、当該建物を借主に自由に用益(使用)させるという債務者でもあり、その二つを含んだ複合的な地位となるのです。

そうであれば、この不動産賃貸借契約上の貸主たる地位を譲渡するときは、契約の相手方である借主の承諾が必要になるはずです(民法539条の2)。それが民法の建前です。

しかし、民法は、不動産賃貸借契約については例外を認め、賃貸人が不動産を第三者に譲渡し、対抗要件(移転登記)を具備したときは、賃貸人たる地位は、当然に第三者である譲受人に移転する(民法605条の2第1項)、と規定しました。

つまり、不動産に関しては、登記によって画一的に判断することにしたわけです。その意味で、不動産賃借権という権利は、本来債権として構成されながら、登記という公示と結びつくことで、物権的に扱われるもの-債権の物権化-として説明されます。

ところで、不動産の貸主の地位が移転した場合、借主が当初の賃貸人に交付していた敷金返還債務についてはどう考えるべきでしょうか。この点、判例は、敷金は賃貸借契約上の貸主の地位とともに移転すると考えて、地位の承継者が返還債務を負担すると考えています。そこで、不動産の譲受人が返還義務を負うことになります。

もっとも、敷金返還請求権というのは、延滞賃料や原状回復費用等を保全するために交付されるもので、明渡の時点で初めて発生する債権なのです。そこで、延滞賃料等があれば、それらを差し引いた金額について発生することになります。

結局、不動産を譲り受けた者は、対抗要件を具備すれば不動産の所有権とともに、賃貸借契約上の地位を承継するものの、その時点の敷金返還請求債務も同時に承継することになります。

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この記事を書いたプロ

中根弘幸

企業法務・事業再生のプロ

中根弘幸(中根・車元法律事務所)

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