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改正民法物語3(債務引受)

2021年1月16日 公開 / 2021年2月22日更新

テーマ:法律の改正

コラムカテゴリ:法律関連

債務引受けについては、旧法には規定がありませんでした。規定はありませんでしたが、現行法とほぼ同じ要件の下で認められていました。その意味で、債務引受については、旧法時代の判例・通説を明文化したものと言えます。

今回の改正で「併存的債務引受」(民法470条)と定められたものは、旧法時代は「重畳的債務引受」とも呼ばれていました。これと「免責的債務引受」(民法472条)を併せて単に「債務引受」と言われます。

そこで、単に債務引受といわれても、併存的か免責的か分かりにくかったのも事実です。さらに、広い意味では「契約上の地位の移転」(後述)についても、債務引受の一類型として解説されていました。

「併存的」と「免責的」というのは、どう違うのでしょうか。前者は、債務の引受人が当初の債務者と一緒に(連帯して)債務者となります。つまり、併存的債務引受後は、債務者が二人になり、両者は連帯債務の関係に立つことになります。

これに対して、免責的という場合は、債務の引受人は債務者と全く同一内容の債務を負担する代わりに、当初の債務者は債務を免れることになります。その意味で、免責的と言われるわけです。

「併存的」の場合、引受人は、債務者が引受の効力発生時に有していた抗弁(弁済・相殺等)を債権者に対抗できるとされています(民法471条1項)。また、債務者の取消権・解除権行使の限度において、債権者からの債務履行の要求を拒絶することもできます(民法471条2項)。

「免責的」の場合も、引受人が有する抗弁の対抗については、同様の規定がありますが(民法472条の2)、少し面白い規定が設けられています。すなわち、引受人は債務者に対する求償権を取得しない(民法472条の3)、と規定されているのです。

免責的債務引受によって債務者は免責されて引受人のみが債務を負担するのに、その引受人が求償権を含めた何らの対価も取得しないのはおかしいとおもわれませんか。だけど、これは法律上当然に取得しないという意味なのです。

債務引受契約に併せて、債務者と引受人との間で別途対価の合意をすることは可能ですし、企業間であれば(仮に個人間であって)当然何らかの対価合意の下で引受行為を行うと思われます。

また、「免責的」の場合、担保権の移転・保証の承継は、引受人に対する意思表示により可能です。但し、担保設定者の承諾が必要ですし、保証承継の承諾は、書面・電磁的記録によることが効力発生要件とされています(民法472条の4)。このあたり、今回の改正法の保証債務に関する改正と同様の規制がかけられていることになります。

ところで、今回の改正民法は免責的債務引受の方式として、債権者と引受人の二者間の契約によって行うことを認めています(民法472条2項前段)。つまり、債務者自身を契約当事者としなくても良いことになったのですが、これは従来の理解を明文化したものです。

そして、二者間契約の場合は、債権者が債務者に対してそのような契約(債務引受行為)をしたことを通知した時に効力が生じると定められています(民法472条2項後段)。債務者が知らないうちに契約関係から離脱することを防止する趣旨です。

そこで、債権者は、引受人との二者間で債務引受をしたときは、当初の債務者に対して免責的債務引受を行った旨の通知を出しておけば良いわけです。そして、通知の効力発生時期については、「その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」(民法97条1項)とされていますので、債務者に前記通知が届けば、メデタシ、メデタシとなるわけです。

そうすると、債務者が転居するなどして通知が届かなければ、免責的債務引受の効力自体が生じない、つまり、契約が無効になってしまうのですが、これでは金融機関は困るのです。

そこで、当初の債権者・債務者間の債務発生原因となった契約(つまり、金銭消費貸借契約)において、「みなし送達規定」を設けておき、仮に通知が届かなくても到達したものとみなすとしておけば良いと思われます。

ただ、それでは債務者が知らないうちに契約関係から離脱することを防止する趣旨で設けられた民法472条2項後段の趣旨が損なわれる結果となります。そのため、今後は前記「みなし送達規定」の有効・無効が争われる可能性が出てくると思われます。

このように、法律の改正は、思わぬところに問題が派生し、新たな争点が出てくることがよくあるのです。ヤレヤレ!

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この記事を書いたプロ

中根弘幸

企業法務・事業再生のプロ

中根弘幸(中根・車元法律事務所)

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