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改正民法物語2(将来債権の譲渡)

2021年1月13日

テーマ:法律コラム

コラムカテゴリ:法律関連

前回は、法律や理論的な説明が多く、少し難しく感じたかもしれません。そこで、今回はもう少し具体例をあげて解説しようと思います。今回のテーマは、将来発生することが予定されている債権の譲渡です。

今現在発生してもいない債権を第三者に譲渡することが可能なのか、不審に思われるかもしれません。しかし、旧民法時代にも最高裁の判例で認められおり、今回の改正でも「その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。」として、これを明文で認めました(民法466条の6・1項)。

そこで、「債権の譲受人は、発生した債権を当然に取得する。」(民法466条の6・2項)ことになります。このとき、発生した債権の取得経緯は規定されていません。つまり、債権の譲受人が発生した債権を直接(原始)取得するのか、或いは、譲渡人が一旦取得したものを承継取得するのか、という問題です。

そのため、この問題についてはこれまでと同様に解釈に委ねられることになるのでしょう。この点が結論に影響を与える問題がどのような状況で生じるか不明ですが、今回の改正民法が法律によって結論を出さなかったことは間違いありません。

このような将来債権の譲渡の問題、実は会社の倒産に関する問題と密接な関係があります。というと、皆さんは驚かれるかもしれません。例えば、ABL(アセット・ベースド・レンディング)という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

企業が資金繰りのために、自社の販売商品や売掛債権を包括的に担保に入れることで、金融機関から融資を受けるものです。このとき担保に入れる売掛金の中に現に発生している債権だけなく、将来発生する債権も入れて包括的に担保に入れることから、今回の将来債権譲渡と関係するわけです。

このABL、担保となる不動産を持たない企業にとっては有利な資金調達の方法ともいえ、マスメディア等では便利な融資制度として紹介されることもあります。しかし、私たち弁護士にとっては、場合によりやっかいな制度となります。

というのは、企業が資金繰りに窮し、破産手続きによって会社を清算せざるを得ない状況に追い込まれたとき、破産申立費用をどうやって調達するかという問題に直面するからです。

会社の持っている資産(動産・債権)について、将来取得するものも含めて包括的に担保にいれるわけですから、その後会社の資産として残っているものは存在しないことになります。

では、どうやって破産申立費用を調達するのでしょうか。お金がないから破産するのですが、破産する場合にもお金が必要となります。最終的には、個人資産を拠出してもらうほかないのですが、会社の倒産に際しては、一般的に数百万円の費用がかかります。

広島地裁(本庁)の場合、法人破産の予納金は最低100万円~とされ、連帯保証人である個人破産においても30万円程度は予納金を求められます。合計すると130万円くらいとなりますし、これ以外に弁護士の着手金・報酬(予納金と同額の場合が多い)が必要となります。そうすると、最低でも130万円×2=260万円くらい必要となります。

会社代表者といえども、倒産間際になると個人資産として2,3百万円を有している人はそれほど多くないというのが実感です。というのは、会社の運転資金として使用するために既に個人資産をほとんど捻出し、すっからかんになっている経営者が多いからです。

どうしても、破産申立費用が用意できない場合は、事情を話して親戚縁者から用立ててもらったり、自らの小規模企業共済(退職金債権)を解約したりして用意してもらうことになります。残念ですが仕方ありません。

そこで、会社経営者でABLを利用して融資を受けようという人は、それが最後の融資手段であることを十分認識して欲しいと思います。そして、そのような会社経営者の方は、最後の費用(破産申立費用)だけは別途用意しておくことが求められると思います。

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この記事を書いたプロ

中根弘幸

企業法務・事業再生のプロ

中根弘幸(中根・車元法律事務所)

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