
コラム
破産・再生余話19(事業譲渡型再生2)
2019年8月18日 公開 / 2021年2月22日更新
前回からの宿題は、スポンサー(SP)の決定方法でした。この問題、事業再生の局面では必ず出てくる問題です。どういうことでしょうか。
SPは、破綻に瀕した企業に資金提供をしてくれる会社です。しかし、当然ながら無条件ではなく、本事案では再生会社の事業を譲り受けることで一定の資金を提供し、金融機関への弁済を可能とするものでした。
このとき、メインバンク(MB)からの紹介で私が民事再生の申立をしたことでおわかりのように、MBは既に引き当てを終り、最後の処理局面で再生申立を選択するという計画を立て、その通りに動いていたのです。
しかし、当該再生会社には、MB以外の金融機関や取引先も存在し、それらの金融機関・取引先は細かい説明を受けていないのです。SPがどのようにして決定され、その選定過程に合理性があるのかなどは、さっぱりわからない訳です。
これらの情報は、民事再生の申立の過程で、事前に行われる債権者説明会などで渡される資料等によって判断するほかありません。そうであれば、そこでの説明をもっと詳細に行う必要がありました。
ただ、私は、MBが了解(主導)している以上、民事再生の手続き上は債権額の過半数の賛成を得られることは間違いなく、債権者数についても取引先の大半の了解を得ていたことで、否決の可能性がなかったこともあり、少し説明がおざなりになったように思い、反省しています。
後日債権者集会に向けて準備をしている段階で、取引先からSPによる事業譲渡価格決定について疑義が提出され、もっと高額の資金を出すスポンサーがいるという主張がなされました。
すると、裁判所的には入札を行って決定するのが原則ということになるのですが、それをやられると、時間がかかって資金繰りがショートする可能性がありました。また、債権者への意向聴取を行ったところ、期限までに具体的金額を明示したSPは現れませんでした。
民事再生法上の保全処分を受けているので、再生会社は過去の取引債務への弁済は禁止されておりますが、事業継続のための取引については当然継続的に資金が必要となります。
確か、資金繰り的に一ヶ月間くらいしか持たなかったように記憶しており、早期の事業譲渡が必要として、裁判所の許可を得て事業譲渡に踏み切りました。
裁判所も監督員もそのあたりの事情を理解していただき、本件は民事再生申立後一ヶ月程度で事業譲渡することができたと記憶しております。
如何にメインバンク主導であっても、キチンとした手続きを踏むことの重要性を再認識させられた事案です。
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