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山下江(やましたこう) / 弁護士

弁護士法人山下江法律事務所

コラム

弁護士コラムvol.251「早めに対策を。家族へ不動産を信託するメリット。」加藤 泰

2021年4月30日

テーマ:弁護士コラム/不動産

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 家族信託 流れ不動産管理不動産相続 手続き

早めに対策を。家族へ不動産を信託するメリット。

山下江法律事務所 弁護士 加藤泰
 土地をお持ちの方の中にはそこにアパートを建設して賃貸住宅を経営しておられる方も少なくありません。そのような方が高齢になった場合に起こりうる問題とその対策についてご紹介したいと思います。

 アパート経営をしていると周辺に新しい物件が出来るなどして、相対的に建物の設備が陳腐化して入居率が落ちることがあります。そのようなとき、賃料を減額して入居率を上げることを考えたり、物件の魅力を高めるため建替えやリフォームを検討して打開策を練ることになると思います。当然ながら借入金の返済や収益のシミュレーションなど様々なことを考慮することも必要であり、適切な判断を行うことは容易ではありません。もし、このような決断を迫られたとき、高齢により認知症などになっていたらどうなるでしょうか。
 軽度の認知症であれば何とかなるかもしれませんが症状が進行した状態では何もできなくなります。建替えやリフォームは工務店との契約ですが、判断能力を欠いてしまうとこのような契約を有効に結ぶことが出来なくなるのです。また、金融機関も判断能力の有無に疑いがある場合は預金の引き出しに応じてくれません。もしあなたに協力的な息子がいたとしてもそれだけでは状況は変わりません。
 病気などにより判断能力が欠けた場合には、家庭裁判所で本人の代わりに財産管理を行う成年後見人を選んでもらうことができます。息子が成年後見人に就任すれば、預金から病院代や施設代を支払ったり、生活費を引き出したりといった点は不便はなくなります。しかし、成年後見人は破損個所の修理などはできますが、本人の資金を多額につぎ込むような建替えやリフォームの決断を行うことは立場上難しく、臨機応変なアパート経営を行うことには向きません。
 このような事態に陥らないため、一つの解決方法として民事信託の活用が考えられます。あなたから長男にアパートや預金を「信託的に」譲渡し、今後は長男の判断でアパート経営をしてもらうのです。「信託的に」という点がポイントであり、長男に単に生前贈与した場合と異なり、譲渡時の契約により、アパート管理にあなたの意向を反映させ続けることができます。
 財産を託す者を「委託者」、託される者を「受託者」、民事信託契約から利益を受ける者を「受益者」といいますが、あなたが「委託者」兼「受益者」で不動産を託してそこからの収益をもらう立場、長男が「受託者」であなたの代わりに不動産を管理していく立場となります。管理の方針については民事信託契約の中でオーダメイドで定めることができ、売却の権限を与えることも可能です。民事信託契約で長男に不動産と預貯金を託していればリフォームを行うことも問題なく行えるようになります。
 あなたが亡くなった場合にアパートが誰のものになるのかといったことも決めることが出来るので遺言の代わりにも使うことができ、財産承継についての有効なツールとしての機能も果たすことができます。

 民事信託は自由度が高く様々な需要に応えることができるため、近年利用が伸びています。年齢を重ねるなどしてアパート経営に不安を覚えた際には、民事信託に明るい専門家に相談してみてはいかがでしょうか。


 執筆者:弁護士法人山下江法律事務所 弁護士 加藤 泰 (広島弁護士会所属)

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■弁護士コラムバックナンバー【不動産】
・vol.243 「大家さんは借主に原状回復を求めることができるか」 伊藤敦史 2021.1.6
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・vol.53 「建物を人に貸すときに注意すること」 柴橋修 2013.7.5
・vol.3 「不動産の二重譲渡と登記」 稲垣洋之 2011.7.15
・vol.2 「不動産賃貸借トラブル」 柴橋修 2011.7.1

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