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コラム

弁護士コラムvol.183 『「同一労働・同一賃金」に関する最高裁判決』 田中 伸

2018年9月7日 公開 / 2019年1月15日更新

テーマ:弁護士コラム/いろいろ

「同一労働・同一賃金」に関する最高裁判決


山下江法律事務所 弁護士 田中伸
 同一労働・同一賃金とは,同一の労働に従事している労働者には,同一の賃金を支給するという考え方です。
 平成30年6月1日に言い渡された2つの最高裁判決は,この点について現行の労働契約法に基づいて判断していますが,同月に成立した「働き方改革関連法」に含まれる同一労働・同一賃金に関する部分(大企業は2020年4月から,中小企業は2021年4月から施行予定)とも関連し,実務にも影響がありますので,本コラムでご紹介します。 

1 2つの最高裁判決の内容
  最高裁は,平成30年6月1日,非正規社員が勤務先の会社(いずれも運送業者)を相手に訴えた下記の2つの事件で,判決を言い渡しました。

 ⑴ ハマキョウレックス事件判決
   最高裁は,トラック運転手として配送業務に従事している契約社員(有期雇用)と正社員(無期雇用)の職務内容が同じであることを踏まえて,正社員に支給されている無事故手当,作業手当,給食手当,住宅手当,皆勤手当,通勤手当のうち,住宅手当を除く各手当を契約社員(有期雇用)に支給しなかったのは不合理(違法)であると判断しました。
   他方,住宅手当については,正社員と契約社員では異動の範囲が異なり,広域異動の可能性がある正社員の住宅に要する費用が多額となり得ることから,正社員だけに支給し,契約社員に支給しなかったことは,不合理(違法)であるとは評価できないと判断しました。

 ⑵ 長澤運輸事件
   この事件で長澤運輸を提訴した嘱託乗務員(有期雇用)は,もともと正社員(無期雇用)として勤務していた同社を定年退職した後に再雇用された者で,基本給ベースで1割前後,賞与を含む年収ベースで2割程度,収入が下がっていました。
   最高裁は,嘱託乗務員と正社員の職務内容や職務内容・配置の変更の範囲が同じではあるが,嘱託乗務員が定年退職後の再雇用者であり,今後年金の受給が予定されていること,収入の減少も上記の程度に止まっていることなどを考慮して,精勤手当及び超勤手当を除き,嘱託乗務員の請求を認めませんでした。

2 最高裁判決のポイントなど

 ⑴ 最高裁は,正規・非正規労働者の賃金全体の比較ではなく,各種賃金・手当の趣旨・性質を個別に考慮した上で,正規・非正規社員の職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の相違などを踏まえて,前提条件が同じ場合には均等処遇,前提条件が違う場合にはその違いに応じた均衡処遇をすべきと判断しました。
   また,定年退職後の再雇用者であることは,賃金格差の不合理性の判断において,考慮要素の1つとなると判断されました。

 ⑵ 正規・非正規社員の賃金格差に関しては,ご紹介した最高裁判決の内容や厚生労働省が公表している「同一労働同一賃金ガイドライン案」などを踏まえて,速やかに対応する必要があります。

 「同一労働・同一賃金」に関して,疑問等ありましたら,当事務所にご相談ください。


 執筆者:山下江法律事務所 副代表弁護士 田中 伸   (広島弁護士会所属)

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