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弁護士コラムvol.145 「預金債権と相続」 松浦 亮介

2017年3月3日 公開 / 2019年3月18日更新

テーマ:弁護士コラム/相続・遺言

預金債権と相続

山下江法律事務所 弁護士 松浦亮介

 昨年12月に相続に関して大きな影響を与える最高裁判所の決定がありました(最高裁大法廷平成28年12月19日決定)。亡くなった人(被相続人)の預金の扱いについて,これまでの判例を変更したものです。以下の説例を基に簡単に説明します。
   【説例】
   被相続人:A
   相続人:Aの子X及びY(法定相続分は各2分の1)
   Aの遺産:普通預金3000万円
   特別受益:YはAの生前に5000万円の生前贈与を受けている

1 これまでの扱い――当然分割される,遺産分割の対象外――
 これまでは,預金債権は被相続人の死亡と同時に相続分の割合に応じて当然に分割される,とされてきました(「当然に分割される」というのは遺産分割協議等何らの手続を経なくても分割されるという意味です)。預金債権は「可分債権」とされてきたところ,可分債権は当然分割されるというのが民法のルールだからです。
 【説例】では,遺産の預金3000万円は,Aの死亡と同時に,XとYがそれぞれ法定相続分2分の1(1500万円)を取得します。遺産分割協議が必要ないため特別受益によるXY間の取得額調整の機会もありませんでした。

2 新判例――当然分割はされない,遺産分割の対象――
 この扱いが,今回の最高裁決定で変更され,今後は,預金債権は当然に分割されることはなく,遺産分割によって分割方法を決めなければならないことになりました。
 預金債権は現金とほぼ同じ性質(評価額が明確で換価も容易など)があるため,預金債権を遺産分割協議の対象に含められると遺産分割の際に共同相続人間の調整に役立つこと(実際上の便宜)や,被相続人の死亡前後を通じて入出金があれば債権の同一性を保持ながら残高が変動する等の預金債権の特徴から当然分割を認めることが預金契約の当事者の合理的意思に反すること(預金債権を生じさせた当事者の意思解釈)などが考慮されたものです。
 【説例】では次のようになります。XとYは遺産分割協議で預金3000万円をどのように分けるかを決めなければなりません。その際,Yは既に特別受益5000万円を得ていることから,預金3000万円は全てXが取得するのが基本になります(詳細は省略しますが,特別受益と預金を合算した8000万円を相続財産とみなすとその法定相続分2分の1は4000万円となりますが,Yはすでにこれを超過する5000万円を得ているため,遺産分割で追加の取り分はありません)。

3 預金以外の可分債権はこれまで通り
 今回の最高裁決定は,あくまで預金についてのものです(預金は「可分債権」ではない,という判断に近いように思います)。
 「可分債権」は当然分割されるという大元のルールが変わるわけではないので,預金以外の可分債権(例えば貸金債権や損害賠償請求権などの金銭債権)は,これまでの預金の扱い(上記1)と同じ扱いが続くことになります(死亡と同時に当然分割され,遺産分割の対象とはなりません)。

 以上,新しい最高裁決定を簡単に紹介しました。遺産に預金が全く含まれないというケースはまれですので,今回の判例変更の影響は大きいでしょう。
 相続に関しては配偶者優遇などの民法改正の動きもあるようですので,今後も制度変更には注意が必要です。相続について気になることがあれば,一度当事務所にご相談ください。


 執筆者:山下江法律事務所 弁護士 松浦 亮介  (広島弁護士会所属)

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