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山下江(やましたこう)

山下江法律事務所

コラム

弁護士・江さんの何でも法律相談「出資金の返還」

2011年5月13日 / 2014年7月4日更新

2011/5/9(月)15:30頃~FMちゅーピー(76.6MHz)
「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」での、
OA内容をお届けします。
今回のテーマは、
「出資金の返還」について
FMちゅーピー「なやみよまるく~江さんの何でも法律相談」

■出資金の返還
相談者 58歳/男性

Q: 私は今の株式会社に勤めて約15年になります。
 その間、取締役になった際に、社長の要請で100万円を出資しました。今回、会社を辞めることになったのですが、100万円の出資金を会社から返してもらうことができますか?

A: これは100万円を貸してくれと言われたのか、資本としての出資なのか、どちらなのかで異なります。

Q: 出資しました、と書いてあります。

A: 貸付金でないのであれば、残念ながら、お金を返してもらうことはできません。
 出資金は、会社の資本金などに組み込まれるものであり、もともと返還が予定されているものではありません。
 ですから、会社を辞めるからといってこの出資金を返してほしいという権利は、この方にはないのです。
この点で、返還義務のある貸付金とは異なります。

Q: では、この方は出資した100万円の回収はあきらめるしかないのでしょうか?何か良い方法はありますか?

A: 出資したということは、この相談者は、会社の株主になったということです。
このことは、会社を辞められても変わらない事実です。
ですからこの方は、会社があげた利益を配当という形で、株主として受け取ることができます。
株主にいくら配当するかは、その会社の株主総会で決定されます。

Q: 先生、この方は出資して株主になってからも、配当金を受け取ったことがないようですよ。
 だから今後も配当があるかどうか、不安に感じられているようです。

A: 配当を決定するのは株主総会で、この方は株主ですから、その株主総会に出席できます。そこで、配当の要求をすることもできます。
 ただ、株主総会は、多数決ですから、株式数の過半数の支持を得られないと、その決議に意見を反映させることは難しいかと思います。

Q: 配当以外での出資金の回収方法はないものでしょうか?

A: この方の所有している株式を、他の第三者に売却する、という方法があります。

Q: 売ってしまうのですか?

A: はい。それだけの価値があるわけですからね。
 だから、株式を買っていただける第三者を探さなければなりません。

 ただ、問題が1つありまして、上場していない中小企業では、株式に譲渡の制限が加えられている場合がほとんどです。
 これは会社の定款(会社の決まりを定めたもの)で、株式の譲渡(株式を他人に譲り渡す)には、取締役会の承認が必要と定められているものです。
 こうした株式譲渡の自由が制限されている株式を、譲渡制限株式と言います。
 中小企業の多くは、このように、株式に譲渡制限を設けているため、株式を買っていただける第3者を探した後に、取締役会にその承認を求める必要があります。

Q: この相談者の方の会社も株式の譲渡制限があるようです。
 株式を買っていただける第三者が見つかったとしても、取締役会の承認が取れない場合はどうすればよいのでしょう?

A: 会社に対し他の買受人を指定することを請求できます。会社は、株式の譲渡を承認しないときは、自らその株式を買い取るか、買受人を指定しなければなりません。このような場合には、会社が買い取ることが多いようです。

Q: なるほど。ところで、そのときの株式の売買価格はどうなるのでしょうか?
 この方が出資したときは、1株5万円でした。この方は15年お勤めですが、会社の業績が向上し、現在では1株20万円程度にはなっているのでは、とのことでした。

A: なかなか会社が発展したのですね。このように株の価値が上がることはけっこうあります。この場合には、売買代金をいくらにするかを売主と買主の間で合意できれば、それで決まります。

Q: 売買代金を合意できない場合は、どうして決めれば良いのでしょうか。

A: 合意できないときはけっこう大変です。こうした場合に備えて、会社法は株式の売買価格の決定の手続きを定めております。結局は裁判所に対し、売買価格の決定を求める裁判を起こし、そこで決定してもらうことになります。

 裁判所での価格決定の方法としては、少し細かい話になります。
 会社の時価が全体でどれくらいあるか、そのうち株式が何株あるから1株の価値はいくらかを算出する、これを純資産法と言います。純資産を株式数で割って価値を算出する方法です。
 それから収益還元法という手法があります。これは会社の将来の収益予想から現在の1株の価値を算出する方法です。
 それから配当還元法があります。これは現在の配当から1株の価値を算出します。

 このようにいろいろな方法があり、裁判所はその事案に応じ、持っている株が全体のどれくらいの割合なのか、どういう性格のものなのか、そして全体の事情を判断し、1株の価額を決定することになります。

Q: いろいろな方法があるのですね。少し安心しました。



■次回のテーマ
「再建か倒産か」について
2011/5/16(月)15:30頃~ FMちゅーピー(76.6MHz)


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