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コラム

侮辱罪の罰則が強化されました。何が変わるのでしょうか?

2022年8月31日

テーマ:インターネットに関する法律問題

コラムカテゴリ:法律関連

はじめに


 女性プロレスラーの方がインターネット上の誹謗中傷によって自殺した話を契機の一つとして昨年発信者情報の開示請求の手続きの一部が改正されるとともに,今年の6月に侮辱罪の刑罰が強化されました(7月7日から施行)。Twitterその他を中心に誹謗中傷ではないかという投稿の存在や対応策が問題になっているところですが,侮辱罪の刑罰を厳しくすることで何が変わるのでしょうか?

誹謗中傷投稿への対応


 差出人不明の怪文書から面と向かって言われた発言・インターネット上の投稿まで誹謗中傷行為は様々な形で問題となっています。特に匿名投稿が可能なもの(5ちゃんねるなどの掲示板やTwitter・YouTube等)では発言が過激になったり拡散しやすくなっていることから投稿削除を含めて問題になることが多くあります。

 対応策としては被害を広めないようにするために投稿削除を求めるのは重要ですが,ミラーサイトの存在などによって拡散をしていく可能性をどこまで封じることができるのかという問題が残ります。相手への対応ということで損害賠償請求や刑罰を求めるという方法がありますが,実際上相手を特定する必要があり,そこには発信者情報の開示請求という面倒な手続きが存在します。



 発信者情報の開示請求は多くのケースで2回(改正までは確実に2回以上,改正後も一部1回で済む可能性が出てきました)の手続きを踏む必要があり,ログの保存期間の問題とともに,改正によっても発信者情報開示請求が認められるハードルが高いままであるという問題は残ります。これは表現の自由との兼ね合いから,名誉棄損などであることが明白であることが要求されており,具体的でない事実が示されている(意見ではない)・真実でないことや公の事柄でないことが明白であること等が要求されており,誹謗中傷と感じることであってもなかなかこのハードルをクリアできないという問題があります。

 損害賠償請求についていえば,名誉棄損・名誉感情の毀損に関する慰謝料請求で認められる金額が低くなる傾向にある点は無視できません。開示請求にかかる費用は弁護士費用などを含め多額に上る可能性がありますが,費用倒れになってしまうリスクが相当程度あるという点で問題が残っています。弁護士費用相当分もある程度他のタイプの損害賠償請求より認められる傾向にありますが,あくまでも請求を認める部分で割増しという程度ですので,限界があります。



 それでは刑事事件として立件できるかという点ですが,こちらのハードルも相当あります。多くのケースでは立件をしてくれません。誹謗中傷が犯罪になるものとして,名誉棄損罪や侮辱罪・業務妨害罪・信用棄損罪や強要罪が問題になりえますが,多くは名誉棄損罪か侮辱罪かどうかです。このうち,これまで刑罰が比較的重かった名誉棄損罪は立件してもらうためのハードルが相当高かったように思われます。名誉棄損罪は「事実を摘示」する必要があります(侮辱罪ではこれは不要)が,社会的な評価を下げるような事実を指し示しているのか・単に意見を述べているのかが分かりにくい・そもそも事実の摘示と言えるのかという点で問題があるためです。立件してもらうには,誰が見ても明らかに評判を下げる事実が指示されていないといけませんので,やや抽象的な誹謗中傷行為は基本的には該当しないという問題がありました。

 警察に相談に行っても,こうした点の話をされる・告訴状を持っていっても受理されないことが多く,仮に受理されても検察段階で不起訴になることが大半で処罰はかなり少ないように思われます。以前問題になっていた迷惑系ユーチューバーという方も名誉棄損罪では立件されていなかったかと記憶しています。ちなみに,誹謗中傷の内容が真実であるのかなど免責事由に該当するのかどうかの見通しも重要になります。



 これに対し,侮辱罪は公然と名誉感情を貶める行為をすれば該当するものの,法定刑が相当低かったこともあり,この犯罪で立件してくれそうなケース(名誉棄損罪ではないけれどもこちらでは行けるという話が出るケース)も相当少ない印象があります。業務妨害罪についても,抽象的に妨害効果の発生する言動があれば法律上適用されるのですが,実際上は具体的な妨害となっている事情がないと立件に至らないように個人的に思えます。いずれにしても,相手に対する制裁を求めても民事刑事ともにハードルがあるというのがこれまでのところではなかったのかと思われます。



侮辱罪の法定刑の引き上げとは?



 簡単に言えば処罰を受ける場合の上限が変わった(厳しくなった)というものです。これまでは,拘留30日未満・科料1万円未満であったものが,1年以下の懲役禁錮と30万円以下の罰金が付け加わりました。拘留は短期の身柄拘束で執行猶予がつかないという点で特徴はありますが,多くのケースで1万円未満の科料(金銭制裁)しかつかず制裁効果として弱いということもありました。

 また,公訴時効と呼ばれる,犯罪を行っても一定期間起訴されずに時間が経過すれば起訴⇒処罰ができなくなるという期間も刑罰が厳しくなることで伸びています。これまでの1年が3年に延びます。また,捜査される段階での身柄拘束である逮捕と勾留(捜査の必要・証拠隠滅や逃げることを防止するための制度)のうち勾留(10日間で最大10日の延長あり)は科料・拘留しか刑罰がない犯罪では相手が住所不定でない限りできないという面がありました。改正によって逮捕・勾留のハードルが下がっています。

 このことは,侮辱罪にあたる誹謗中傷でも起訴されていない段階でも最大で23日間身柄拘束される(事実上氏名含め報道リスクもあります)リスクが広くなったということはできます。自分の言っていることは真実で正しいことであると考えている方にとっては,だからどうしたのかというところかもしれませんが,私的な事項の投稿の場合にはそう簡単に免責にならないように思われます。もちろん,相手が特定されていないと立件は厳しいという対応をされてしまうという,個人的には多かったと思われる対応が変わらなければ,どこまで大きな変化になるのか分かりません。



 この改正については日弁連が反対意見を出していましたが,結局のところ誹謗中傷投稿のもたらすリスクやネット上の書き込みは普段面と向かって言わないことを書き込んでも問題ないと安易に考えない方がいいように思われます。


宮島の景色
 先日宮島に行った際に大聖院からみた海。この日は曇っていたので写真はいまいちですが、晴れているととても外を歩けない蒸し暑さでした。

この記事を書いたプロ

片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(勁草法律事務所)

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