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  1. 最近広まっている「従業員シェアリング」の内容は?そのメリットとリスクは?

コラム

最近広まっている「従業員シェアリング」の内容は?そのメリットとリスクは?

2020年6月29日 公開 / 2020年7月11日更新

テーマ:労務問題

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 働き方改革

 ごく最近経済状況の悪化が止まったという報道も一部されていますが,ここ数ヵ月大きく仕事が減っている業種もある中で,雇用を確保しつつ業務を行うことの重要性も言われています。中国発の形態として「従業員シェアリング」という試みが紹介され,日本でも既に一部そのためのマッチングサービスも開始されているようです。

従業員シェアリングとは?そのメリットとは?



 従業員シェアリングとは,簡単に言えば,今雇用している会社に在籍したまま別の会社の業務についてもらう・そこの従業員として働いてもらう形を指します。これまでの雇用の形態でいえば,出向という制度を用いており,人事異動としてこうした方法を使うということになります。

 仕事がない・仕事を行うにも感染リスクその他の原因で職場を使えない(飲食店など)場合であっても,多くの場合では待機をしてもらっても休業手当(法律上,給料の60%とされており,パート勤務であっても支払う必要があります)の支払義務が残ります。



 雇用調整助成金の特例が存在していても,ハードルや先払いのキャッシュに関する負担の問題がありますから,別の会社の業務に従事してもらいそこで給与が確保できるのであれば,こうした問題をクリアできるという面はあります。最近問題になっている解雇や雇止めに関してはハードルは大きな面がありますから,こうした面を回避できるのも大きなメリットということはできるでしょう。以上から,雇用を確保しつつ・給与も何とか確保するという点は従業員シェアリング(という名前の出向)を行う意味での意義はあります。



 ただし,出向という形態については労働者供給事業や労働者派遣の形態に実際は近いものとなりかねず(これらの事業はいずれも許可を得ないと行うことはできません),法令違反の危険性や無条件で出向命令を行うことができるのか等法的な問題点が存在します。



出向における注意点



 出向について,先ほど挙げた問題点となりかねない点のうち,会社が先ほどの目的を含めて出向を自由に行うことができるのかという点があります。結論から言えば,ここにはトラブルの種と限界があります。理由は,出向は別の会社での業務についてもらう・給料を含む勤務条件もこれに伴い変化する(職場の環境面を含む)ため,このことに伴う従業員への配慮が重要になるためです。就業規則あるいは場合によっては雇用契約で「出向」に関する規定を入れる場合がありますが,これによって一般的に出向を行う根拠とはなるものの,実際には個別の場面でその「出向」を有効に行うことができるのかが一番重要になってきます。



 職場環境や意にそわないキャリアに至る(旧来リストラの名前によって行われていたもの)ことがありますので,個別の出向命令の有効性が争いになっている裁判はこれまでも相当数存在するところです。とりあえずの職場と給与の確保という点は重要な点ではありますが,全く関係のない業種への出向・職場環境や待遇がその従業員と合わない場合には,違法な出向によるものとして損害賠償請求や出向命令が無効であるとなる可能性があります。有効性が問題となるケースでは,出向に関する就業規則における待遇や期間・従業員の意思確認その他不利益な生じないような規定(およびその運用)を考慮しているものが存在します。単に,流行りのものだから就業規則に出向がありうる程度の規定を入れておけば全ての場合に大丈夫という簡単な話ではない点には注意が必要でしょう。



 特に出向先での注意点は,仕事内容のミスマッチ(変化が大きい)・元の職場における休業手当よりも出向先の給与が低くなる・職場の環境がいわゆる3密につながるなど問題がある場合には,トラブルの可能性があります。事前にそうしたリスクを考慮せず出向をさせている場合には,先ほど述べたリスクがそのまま当てはまりませんから注意が必要となります。出向の道を探ることで解雇を避けたということ自体は解雇回避努力として,解雇の有効性には影響を与えます。

ただし,不利益を大きく課す職場への転籍との選択を迫る場合には,こうした努力を果たしたとは言いにくい場面も出てきますので,ケースごとの判断は重要となってくるでしょう。

 このほか,出向をさせる場合であっても,元々雇用している会社も出向先と同じように,従業員に対する安全配慮義務(簡単に言えば,長時間勤務やいじめなどを原因とするメンタルヘルスの問題を起こさないように一定の義務を負うこと)を負っている点も意識は必要となります。



 こうした問題以外に出向が実際には労働者供給や派遣となりかねない問題があります。これは,例えば取引先に常駐させてそこの仕事をしてもらう・業務指示はそこで受けてもらうという形です。従業員シェアリングという形態であっても,反復してこうした形をとる場合には,労働者供給などに該当しかねません。こうした形態は,業務委託契約でもなされているものではありますが,法令で罰則付きで禁止されています。マッチングサイト(ここ自体が媒介を行うことは法令違反の可能性があり,せいぜいが広告を行う程度のものと思われます)を使って行う場合にも上記の点は無視はできないでしょう。





 今後従業員シェアリングがどのようになっていくのかは分かりませんが,これまで述べた点のほか,実際には従業員を減らすための方策(いわゆるリストラ)として機能する場合には,トラブル原因となりかねない点には意識をしておく必要があります。メリットだけでなく,リスクや注意点も意識の必要があるでしょう。


備中国分寺・岡山県総社市

 先日行きました岡山県総社市にあります備中国分寺の五重塔とハスの池(本文とは関係ありません)。ハスは残念ながら少し早かったようです。県を跨いでの移動が6月19日から解禁されましたが、広島駅はまだ閑散としていました。

この記事を書いたプロ

片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(勁草法律事務所)

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