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身元保証について対応は十分?今年4月の民法改正に備えて

2020年3月30日 公開 / 2020年5月31日更新

テーマ:民法

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 労務管理リスク管理

 従業員の方が業務上損害を発生させた場合に備えて、従業員の方の親族などに身元保証書の差入れをしてもらっているケースはよくあると思います。この身元保証については、今年4月の民法改正に備えて対応しておく必要があります。今回は、既に身元保証書を差し入れてもらっている場合であっても、差し替えが必要なケースが出て来ますので、どんな場合に差し替えなどの対応が必要になるかを取り上げます。

身元保証とは?


 前述しました通り、従業員の方が業務中に取引先に備え付けられたものを壊してしまったり、会社のパソコン機器などを壊してしまう、といった場合が起こりうると思います。この場合、その従業員自身が損害を賠償できるだけの収入や資産があればいいですが、賠償額が高額なため従業員の方の収入や資産で支払が困難な場合に備えて、別の方(一般には親族であることが多いでしょう)に身元保証人になってもらい、身元保証書の差入れを求めることが一般的にされています。

 身元保証については、「身元保証に関する法律」という昭和の初めころに施行された法律に規定されています。カタカナ書きの古い法律ですが、それには引受、保証その他名称の如何を問わず、期間を定めずに従業員の行為によって使用者の受けた損害を賠償することを約束した契約=身元保証契約としています。実際には身元保証、というとその従業員や経歴や素性などを間違いないと保証しているという意味合いでとらえ、その理解で身元保証人も身元保証契約を結んでいることもあるようです。しかし実際には前述の法律にある通り、損害賠償請求権の存在を前提とした保証の場合と、損害賠償請求権の存在とは関係なしに従業員を雇うことで会社が被ったすべての損害を賠償することを内容にする損害を担保する契約のいずれかになります。

 いずれの場合でも責任を負う範囲が大きくなりすぎる場合がありうるので、前述の身元保証に関する法律や、民法の個人根保証の規定によって身元保証人を保護するような定めをしています。



身元保証をしたとき、いつまで責任を問える?


 身元保証をしたとき、期間の定めをしていないときは通常3年、期間の定めをしていても5年を超えることができず、超えたときでも5年に短縮されます。ですから、基本的に一度身元保証書を差し入れてもらっていても、最大5年しか有効ではありません。また、更新してもその時から5年までとなっています。実際には最初の雇い入れのときに身元保証書を入れてもらってから、再度書いてもらっていないというケースもあると思いますので、これを機会に一度見直してみると良いでしょう。

身元保証人に通知しなければならない場合は?


 会社は、従業員に業務上不適任または不誠実な事柄があり、身元保証人の責任が発生するおそれがあることを知ったとき・従業員の任務や任地が変更したため、身元保証人の責任を加重し、また監督を困難にさせるときは、遅滞なく身元保証人に通知しないといけないとされています。通知を受けた身元保証人は将来に向かって身元保証契約を解除できることになります。

 これはたとえば従業員のメンタルヘルスに問題が生じ、業務時間中に事故を起こす可能性が出てきたとき・あるいは従業員が平の社員から店長になり、その分責任が大きくなったときなどがあたります。ただ、実際のところこういった通知をしなければならない事情が生じたときに通知をしていないケースもあり、その場合は例えば損害額について裁判になると、通知を怠ったことについて、身元保証人の責任を考えるにあたり裁判所が損害賠償責任・賠償額を決める上で(会社側に不利に)考慮される可能性があるため、注意が必要です。

今回の民法改正に伴う注意点とは?


 前述のように、身元保証は、身元保証人の責任の範囲が際限なく広がるおそれがある包括根保証にあたるとして、個人根保証契約の責任などについての極度額規制の対象になるとされています。ですから、今年の4月1日以降に結ばれる身元保証契約では、責任の範囲を限定する上限額の定めがないときは無効になります。問題は定めるにしてもいくらにするかという点です。そもそも実際に発生してみないと分からない損害についてあらかじめ上限を決めなければならないというのが難しいところで、例えばそのときの年収総額相当とすると、身元保証人が予期できないうちに大きく収入額が変わっているおそれがあって無効になることもありえます。他方で、損害が実際に発生した場合に備えてゆとりを持つために2000万円などとしてしまうと、そもそも従業員の方から引き受けてもらえる身元保証人を確保するのが困難になる可能性が高いです。

 こういった責任上限を定めなければならなくなる点と、前述したような身元保証の期間の問題(最大でも5年)があることから、ある程度身元保証人に責任を取ってもらう方法を取るにしても、全額保証までは難しい場合が出て来ます。また、身元保証人と契約していても、実際のところ身元保証人の収入や資産状況までの把握は個人情報ということもあり難しいところもあります。ですから、例えば会社で各種の損害賠償責任保険などに加入してもしもの場合に備えておくのが今後は重要になってくるでしょう。また、経理などまとまった金額を扱う立場の従業員や支払について関与する管理職など,いざといったときの損害賠償額が増大する可能性のある従業員に限り、身元保証書を差しいれるように求めるというのも一つの方法でしょう。

 2020年4月より前に締結されている身元保証契約については期間の最中であれば極度額の定めをしなくても大丈夫ですが、5年の期間が満了して身元保証契約を更新するときには、極度額を定めなければならなくなりますので、差し替えを忘れないように気を付ける必要があります。

 また、切替をする場合に切替に協力せず、新たな身元保証契約書を差入れしないといった従業員には解雇理由に該当する・有期雇用の場合は更新拒絶事由にあたると就業規則で明記しておくことも大事になってきます。


広島城の桜
広島城に向かう途中のソメイヨシノもかなり咲いていましたが、今年は新型コロナウィルスの影響か、いつもよりだいぶこじんまりと花見を楽しむ人が見られました。写真の桜は広島護国神社から広島城への入り口付近に生えていましたきれいな八重桜。早く新型コロナウィルスが終息すると良いと思います。

この記事を書いたプロ

片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(勁草法律事務所)

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