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  1. 増え続ける「パワハラ」の相談。厚生労働省の指針に書いてある「パワハラ」の具体例とは?

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増え続ける「パワハラ」の相談。厚生労働省の指針に書いてある「パワハラ」の具体例とは?

2019年11月24日 公開 / 2020年2月15日更新

テーマ:労務問題

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 働き方改革

 先日某雑誌の記事を見ますと,広島で一番多い労働関係の相談はいじめ等のパワハラに関する相談とのことでした。全国的に見てもこうした相談は過去最大であるとの記事もあり,このような点への備えは経営者や会社側にとって重要なこととなっています。

 おりしも,パワハラへの対策を目指していく法律改正がなされ,パワハラの具体例について厚生労働省の指針(あくまでも一つの代表例(パワハラにあたる場合・当たらない場合)を示すもの)の案が現在審議会で出されて協議されています。

あくまでもここでの指針は行政側の取り扱いの基準ですので特に民事関係の裁判などになった場合,この基準になるわけではない点に注意が必要です。

パワハラ放置のリスクと代表例とは?


 これまでパワハラに関わるトラブルは,職場内のいじめやリストラ・退職勧奨の際に仕事をさせないこと・過剰な叱責やノルマが特に多かったと思われます。自殺や心身を壊しての労災及び会社への損害賠償請求・退職時のトラブルという場面が代表例といえます。



 こうした点のリスク要因は,職場の士気が下がること・金銭賠償のリスクが出てくることなど多岐にわたり,いじめの問題は刑事事件になる可能性があるのは最近の学校の教員間のいじめの問題(公立学校は民間の雇用関係とは異なる面がありますが)を見ても言えることではないかと思われます。



 これまでこうしたパワハラにははっきりとした定義がなく,6つの代表例があるとされているだけでした。言い換えると,ふわっとした状況であったためどこからどこまでがあてはまるかはっきりしないという話です。そのタイプには

① 暴力をふるう②暴言や恫喝を行う③仲間外しや無視,人間関係からの阻害④できるとは考え難いほどの過大な仕事を押し付ける⑤仕事をさせない・能力に比べるとさせる必要もなさそうな過小な仕事をさせる⑥私生活への過剰な立ち入り,が当てはまります。



 今回の指針案もここに沿っての分類がされていますが,パワハラの定義が初めて法令上はっきりとされています。

指針の案では何がパワハラで何がパワハラではないのでしょうか?



法改正によって,パワハラとは

① 職場において行われる

② 優越的な関係を利用して行われる言動,であって

③ 業務上の必要性や相当性を超えたもので

④ 相手方である従業員の勤務環境を侵害するもの

とされています。

 指針案ではこれに基づき,先ほどの6つのタイプに沿ってパワハラの代表例とパワハラに該当する代表例を挙げています。この文言を見てわかるように①で職場において行われた場合に限定されていますので,職場以外で行われる職場の飲み会のときはどうなるかという問題が出てくる可能性はあります。例えば,飲み会の場での無理な飲酒の強要や暴力などはどうなるのかという問題は出てきますが,先ほどの賠償リスクという点ではこれまでの裁判例上職場での出席が義務付けられているケースでは会社の安全配慮義務が及ぶ可能性がありますので,賠償リスクが出てくる可能性は十分あり得るでしょう。これに対して,個人が任意に参加している場合まではこれまでと同じくそう簡単には及ばないものと思われます。

 あくまでも今回のパワハラに関する法改正はパワハラの防止を行政が関わって抑えるという側面の話であって,民事の賠償の問題は別という理解がいいと思います。そのため,決して職場外でパワハラとならないという理解をしない方がいいと思います。どこまで出席義務などを課すのかは会社行事などの関連もありますが,考慮しておく必要はあるでしょう。

 これに対して,②と③は一般論ではわかりやすくても実際には抽象的なものといえます。②については,上司と部下という場合はわかりやすいですが,先輩後輩という人間関係やいじめでよくみられる人間関係の中でリーダーシップを持つ(一例としていわゆる「お局」と呼ばれる方等)方から疎外を受ける場合等は当然該当します。③についてはさらに外延がはっきりしてきません。

 指針案ではミスをする従業員への強い注意は該当しない・誤ってものをぶつける場合は該当しないとしています。これに対し,わざと殴る蹴る・他の従業員の面前で大声で叱責を続ける場合は該当するとしています。ただし,ここには程度問題があり,ミスを繰り返すのであればどこまで強く注意できるかはっきりしませんし,ミスの場面が大勢の前でその場での注意が特に必要でかつこれまでのミスの繰り返しから強く注意する必要がある場合があるなどケースバイケースの側面が出てきます。また,誤って物をぶつけたのか故意なのかがはっきりしないケースも考えられます。このような場合には事実関係の確認をすることも事後の話としては重要ですが,事前にもどこまでが該当するのか・注意はどのようにして行うのかの方針を自社で立てておく必要があります。

 少なくとも,社内の人間関係から特定の方を責める状況はいじめによるパワハラの可能性が高いので,社長などが止める・話を聞く体制は作っておく必要があります。また,いわゆる現業系の仕事でついつい手や足が出る点も,そうする必要性はあまりないことからリスクがあることの注意は必要でしょう。業務上の必要性や相当な程度であれば問題はないといっても,注意の仕方(大声で怒鳴りつける・一度注意が終わったにもかかわらず繰り返し注意をする)や環境によっては問題が出てきますから,怒り方なども工夫が必要になってきます。SNSやメール上での発言についてつい攻撃的になってしまうことがあるように見受けられますが,注意が必要です。

 また,中小企業で問題になりそうなのが,社長等がこのくらいの仕事などは当然できるはずということで長い残業を前提に無理な仕事をさせるとなると,残業代の問題やパワハラの問題はもちろんのこと,こうした点は人の定着を阻害しますから,人が居着かない状況になってしまいかねません。

 このほか,指針案では過小な仕事をさせるという点で,会社の経営上の必要があれば,小さな仕事をしてもらうことはパワハラには該当しないと記載してあります。この記載の是非も問題になるでしょうが,ここで想定されているのはおそらく生産調整などを会社で行う必要がある場合等それまでに比べて大したことがないと思われる仕事を行ってもらったとしてもやむを得ないというときと考えられます。言い換えると,辞めてもらいたい方に会社の経営上の都合だからということで,草むしりや掃除などの仕事をしてもらうことは違法な退職勧奨とパワハラとして賠償などの問題につながりかねない点があるのには変わらないでしょう。

 あくまでも経営上の必要をきちんと説明できないと指針案で異なると思われることが書いてあっても助けにならない可能性があります。





 いずれにしても,指針案で記載されている代表例自体にも曖昧な点があるように思われますので,実際に問題ないものかどうかは自社で検討をして対応策も練って研修を行っておく必要があるでしょう。


三瀧寺の多宝塔
先日行きました三瀧寺の多宝塔(撮影日:11月17日)。偶々年に1度の多宝塔開放の日でして、阿弥陀如来坐像をはじめ内部の装飾画などを拝観させて頂けました。紅葉はまずまずといった感じで、おそらく今週あたりの方が見ごろではないかと思います。

このコラムに関する内容をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
パワハラ防止の法制化と定められた介護現場での「ハラスメント防止ガイドライン」の内容とは

この記事を書いたプロ

片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(勁草法律事務所)

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