マイベストプロ広島
  1. 来年から変わる時効の制度・変更点の概要と最近の裁判例について

コラム

来年から変わる時効の制度・変更点の概要と最近の裁判例について

2019年10月13日 公開 / 2020年3月29日更新

テーマ:民法

コラムカテゴリ:ビジネス

 民法の改正は来年(2020年)からですが,時効の制度も一部変更になります。ここでいう時効とは,簡単に言えば,貸したお金や売掛金などは一定の期間内に裁判上の請求などしないと請求できなくなる可能性があるという意味での時効です。お金を法律上請求できなくなる(相手が自発的に払ってくれる分には問題ありませんが,無理に自発的に返せというと恐喝行為となり捕まるリスクが出てきます)ので,極めて重要な話です。

時効制度で何が変わるのでしょうか?その概要は。



 まずは,時効に必要な期間の大半が統一されます。ここでの時効に必要な期間とは,ある時点から法律で定められた期間が経過すると,時効によって利益を得る人が時効を主張するといえば,原則時効になり,お金の請求が法律上できなくなります。そのため,この期間が経過したかどうか・期間の長さがどのようになるのかは極めて重要になってきます。



 これまで,例えば,会社の持つお金の請求権は長くても5年が基本・弁護士の費用は2年・飲食店の請求は1年等バラバラでした。この大半を統一します。もちろん例外がありますし,どこからスタートするかが極めて重要となってきます。



 このことと共に重要なものが時効に必要な期間をリセットする事柄です。リセットとは,法律で定められた事柄があると,時効に必要な期間は一から数え直しという意味で非常に重要なものです。主要なものとして,請求書の送付(ただし,6か月以内に裁判を起こさないとリセットされませんし,リセットの可能性があるのは最初の1回のみです)・差押えや仮差押え(裁判所に申し立てて,財産の処分ができないようにする等のこと)・承認(貸し付けの相手などに支払義務を認めてもらうことなど)がこれまでありました。



 改正によって,こうしたリセットが少しだけ変わります。簡単に言うと請求などをした場合は例えば売掛金なら回収を行うという権利を行使する意思を示したこととなります。こうした権利の行使の意思を示せば,例えば,裁判になって取下げなどがあっても,取下げの時から6か月が過ぎるまでは時効に必要な期間が一時止まります。これに対して,判決で勝訴判決を得た際には権利が確定しますので,その後10年は時効に必要な期間が過ぎたことにはなりません。この関係で,裁判の前に申し立てる緊急の手続きである仮差押えは,これだけだと権利は行使するものの確定しませんので,時効に必要な期間がリセットされません。あくまでも一時的に期間が過ぎていくのを止めるだけになります。



 このほか,改正により,例えば,お金の請求に関して示談交渉が行われている間に時効に必要な期間が経過しないようにするための制度も設けられています。それが協議を行うことを書類で合意をすることによって時効になる期間が経過しないようにするという制度です。話し合いをしている最中に時効に必要な期間が経過しそうであれば,相手が「承認」と呼ばれる支払義務を認めるなどの措置を取らない限りは裁判での請求をせざるをえなくなります。そうでないと,時効に必要な期間が経過し話し合いの最中に時効の主張を受けてしまうためです。



 改正による細かな事項は他にもありますので,これは別途触れる予定です。



最近の最高裁判所の判断





 ごく最近,最高裁判所が時効のリセットに必要な事柄について判断を示していますので,今回は少しその紹介もしておきます。内容は,時効の期間をリセットする事柄の一つである差押えについての話です。



 公正証書でお金の支払義務を約束させる場合には,同時に支払いをしない場合には差押えを受けるという項目も入れるのが普通です。これは,養育費の支払いや貸金の支払い・売掛金の支払いなどについて,裁判を起こして権利関係を確定することなく差押えの申立をできるようにするためです。差押えの申立て自体は裁判所にする必要がありますが,こうした公正証書がないとそもそも裁判で判決をもらい,それに基づいて差押えの申立てをまた裁判所にする必要があり手間と時間がかかります。

 こうした事をなくす意味で公正証書のメリットがありますが,差し押さえる対象はお金を借りた方に対してなら,その方の預金や給料などが考えられます。給料は未払い給料であり勤め先にお金を借りた方が持っている権利・預金はその方が銀行に持っている権利になります。こうした場合の差押えの際には,差押命令は,勤務先や銀行にも送付されます。それとは別にその方にも通知があり,法律上はその方に通知をしないと時効期間をリセットする効力は生じないとされています。差押えの意味はそのお金を自由に引き出すあるいは給料をもらうことができない(言い換えると,勤務先は給料として勝手に支払うことはできなくなる・銀行も払い戻しには応じられない)という点です。そのため,差押えの効力が生じてかつ時効期間がいきなりリセットされると,金を借りるなどしたその方に不測の損害を与えるため,その方への通知が必要とされています。



 この話を不測の損害を与えないという点に力点を置くと,いくら通知を受けても例えば家族が受け取って勝手に捨ててしまったという場合には,借りるなどしたその方は差押さえがされたことを知らないままということで,不測の損害が生じると考えることもできます。実際のケースではお金を借りた方への請求の話でしたが,知ることができなかったという点を重視して,こうした事がなければ時効に必要な期間は経過する・だから支払義務はなくなるという反論もありえます。

 実際に問題になったケースでは,こうした言い分から差し押さえの効力は時効により既に消えた権利の主張だから差押えの効力は排除されるべきであるとして問題となった裁判です。



 結論として言えば,不測の損害を与えないための措置は通知で足りる・知ることができたかどうかそれ以上問題にしないとして,通知がなされることで時効に必要な期間はリセットされる⇒時効によって権利は消滅しないから差押えは有効であると判断をしています。つまり,差押えの効力排除は認められませんでした。



 少し特殊なケースではありますが,給料や代金について差押えが来た際には勝手に従業員や取引先に支払うことはできません。勝手に支払った場合には,結局差押金額を別に支払う必要が出てくるため,損失が生じます。その後実際の回収のための連絡が差し押さえをした側から来た場合には直接やり取りをして支払いをするなどきちんとした対応をする必要があるので,実は日常の業務と関連がある問題といえるでしょう。


持光寺の酔芙蓉
 先日、尾道にあります古刹・持光寺に参拝させて頂きました。「あじさい寺」と石碑に書いてありましたが、酔芙蓉がとてもきれいに咲いていました。入口が民家の裏をずっと通っていった先にある、地元に溶け込んだ静かなたたずまいのお寺でした。「にぎり仏」が作れるとのことで、機会がありましたら是非また訪れたいお寺です。

このコラムに関連する内容の記事がご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
売掛金の時効管理は大切・放っておくと請求ができなくなるリスク 発生に
改正民法の施行日が決まりました⑵(消滅時効の期間の変更)

この記事を書いたプロ

片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(勁草法律事務所)

Share
関連するコラム

片島由賀プロへの
お問い合わせ

マイベストプロを見た
と言うとスムーズです

お電話での
お問い合わせ
082-569-7525

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

片島由賀

勁草法律事務所

担当片島由賀(かたしまゆか)

地図・アクセス

片島由賀のソーシャルメディア

instagram
Instagram
facebook
Facebook