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  1. 会社経営者が保証人となる場面での経営者保証ガイドラインとは?
片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

会社経営者が保証人となる場面での経営者保証ガイドラインとは?

2019年7月31日 公開 / 2019年8月25日更新

テーマ:民法

はじめに


 ここ数年「経営者保証に関するガイドライン」という言葉を聞いた方はいるのではないでしょうか?通常金融機関で会社の設備投資や運転資金などを借りる際に代表者などの個人保証を求められるケースがこれまで多く,その負担が事業承継などで負担になるという話が言われてきました。これを踏まえて

〇会社と個人の財産が明確に区別されている場合に,代表者など経営陣を保証人とすることを求めない。

〇既に経営者が保証人となっているけれども,会社が傷が浅いうちに廃業や再建手続きに至った際に,当面の生活費の他に豪華でない家を残せるようにする

〇保証人としての支払いを求められ応じた時点で支払いができない金額を金融機関側が免除する

といった概要で経営者保証に関するガイドラインというものが定められています。今回はこの経営者保証に関するガイドラインについて取り上げます。

経営者保証に関するガイドラインの位置づけは?


こうしたガイドラインは,あくまでも自主的に守るべきとされている事柄であって,守らないとペナルティがあるというものではありません。会社が借り入れをする際の経営者を保証人とするその保証契約の合理的内容を推進する・会社の再建や清算をする際の保証人としての負担を公平かつ迅速に整理するための指針とされています。

 中小企業がお金を借りる際に・個人である経営者(その配偶者,経営者が健康面で問題のある際にはその後継者)が保証人となる・支払いを誠実に行い金融機関からの資料開示にもきちんと対応していること・保証人などが反社会的勢力でない場合が基本的に利用できる方となります。



 問題となる場面として

① 新たな融資を受ける場合に,経営者の保証を要求されるかどうか

② 後継者が会社を引き継ぐ場合等で既存の保証契約の解除や変更を金融機関に求める場合

③ 会社の立て直しなどを行う際に,経営者の保証人としての負担を整理する場合



が考えられます。このうち,②は事業承継を行う場面で引退する経営者との保証契約の解除を行う・後継者と保証契約をするか,①と同じ話になりますが,後継者を保証人として要求するのかどうかが問題となってきます。この際には①と同等の基準を満たしているかが問題になります。

 ここで①で基準となる事柄としては,先ほど挙げた会社と個人の財産が明確に区別されている場合を満たしていることが最低限必要です。中小企業では法人成りである場合になかなかこうした点を満たしている場合は少ないですし,経営者への貸付や逆に借り入れその他の点からこうした前提を満たしていないケースが相当多くなるものと思われます。このほか,会社側から適切な情報が継続的・定期的に提供されている・経営者から物的担保(簡単に言えば自宅に抵当権を設定するなど)・会社だけの収益で返済が十分可能と考えられる等の事情が必要と考えられています。

 ガイドライン上は,こうした事情も踏まえなお経営者保証を金融機関が要求する場合は,そうするだけの説明を丁寧に行う・借入額=保証額とせずあくまでも必要な範囲に抑えるようにとされています。ただし,これは努力するべきものとされています。



 ②の場合に引退する経営者の保証契約を解除するうえで会社にどこまで関与する立場かといった点も考慮されることとされています。



会社の債権の際の経営者の保証の取り扱いは?



 保証人がなぜ要求されるかといえば,会社が返済に困る(資金繰りに困る・事業がうまくいかなくなる場面など)場合にお金の回収をきちんと図れるようにしようというためのものです。このために,銀行取引であれば分割返済を一括支払いにする(期限の利益喪失条項といい,銀行からの借り入れ契約についています)・銀行口座をロックする(引き出しや振り込みができなくする)+融資金額と相殺する(これによって預金額からお金を回収します。取引約款にこうした項目が入っています)といったこともする可能性があります。特に,破産などの裁判所を使った負債の整理をする場面ではなされます。



 こうした事もあり,経営者の負担を軽くすることは会社の再建等をする場面では非常に有用になってきます。言い換えると,会社の再建や清算を考えるうえでは,経営者の保証人としての負担をどう軽くしていくかは極めて重要な問題となってきます。ここで経営者が破産して負担をなくすという対応も状況によっては考えられますが,この場合には経営者の財産は大半がなくなることになります。



 これに対して,経営者保証に関するガイドラインによる場合(あくまでも話し合いか裁判所での話し合い手続き等)を通じてより多くの財産を手元に残すことを考えることができます。ちなみに,この方法が取れる場面自体も限られている点には注意が必要です。

 まず,こうしたガイドラインによる負担の軽減を考えるには,ガイドラインを使える場面であることに加えて

① 会社自体も再建あるいは清算を行う手続きを行っていること

② 会社及び経営者が破産をするよりも金融機関など債権者が回収を図れる金額が増える場面であること

③ 保証人である経営者が浪費や財産隠匿,一部の債権者だけ返済を行う等破産で負債の支払いを免れることができない事情(免責不許可事由といいます)がないこと



が要求されます。ちなみに③ではこうした事情が生じる可能性もないことが要求されています。
 先ほど破産をするよりもこのガイドラインを使うことができる場合には経営者により多くの財産を残すことができるという話に触れました。ケースバイケースにはなりますが,今述べた②の金額(言い換えると破産をするよりも回収がより図れる金額)の中で財産を残すことができるということを指します。破産の場合にはマックスでも99万円までしか財産を残せませんが,破産での清算ではたとえば100万円しか回収できないものが400万円回収できるということであれば,差額の300万円の範囲内で将来の生活費(これは年齢によって異なります)や豪華でない自宅を残すことができます。言い換えると,破産よりもお金の支払いが可能になるほどに(この支払いは会社からするものでも構いません),手元に残るお金が増えます(ただし,将来の生活費分は年齢に応じた上限があります。豪華でない家しか残せませんので上限はあります)。



 そのため,メリットはありますが反面全く支払い見通しのない場合には使えませんし,それまでの粉飾決算の程度や内容がひどすぎる・まさしく再建の話をする場面でうその内容の報告を金融機関に行うなどした場面では使えなくなる可能性が高くなります。もちろん,財産隠匿(例えば,経営に困った時点で親族に家を贈与するなど)があった場合にはそもそもガイドラインを使うことができなくなります。



 このように,ガイドラインを使って再建が図れるのかどうかは専門家にも相談をし,よく考えておく必要があるでしょう。ちなみに,こうしたガイドラインを使っての経営者の負担軽減を行う方法には様々なものがあります。一番いいのは使わずに済むことですが,事業環境の変化などで早めの対応を考える際に頭に置いておくことが重要と思われます。



みやじマリン


 梅雨明けしたと思ったら、急に猛暑続きで少し夏バテ気味です。写真は2015年頃に行きました宮島水族館(多分)の写真。少しでも涼を感じて頂ければ幸いです。

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片島由賀

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片島由賀(勁草法律事務所)

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