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片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

保険やソフトウェアなどの利用規定・約款に関する規制が新設されます

2019年6月4日 公開 / 2019年6月18日更新

テーマ:民法

 昨年(2018年)民法が改正され,取引等に関するルールが変わるという話が報道されていました。既に専門家の方のセミナーを含め,様々な分野への影響について話を聞かれた方もおられることでしょう。多くは一部のルール変更ですが,敷金に関する話などとともに,それまで明確なルールはないけれども存在していたものについて,ルールが定められました。約款に関する規制もその一つでしょう。今回はこの約款に関する規制について取り上げます。

約款とは?



 タイトルにあるように,BtoCの話だけでなく,利用規定などはBtoBでも存在します。墓地の利用規定等何かしらのサービスの利用規定や各種公共料金の規定も該当します。こうした不特定多数の方との取引をテンプレートを作って契約内容を処理するものとして準備されるものです。

 より正確に言えば

① 不特定多数の方との契約(取引)を相手方とする

② 取引内容の一部を画一的にするもの(そうすることが合理的な取引となること)

③ こうした内容が特定の方に準備されたものであること



が必要とされています。分かりにくいので,例えばECサイトの取引規定を見てみますと,取引の内容の一部を利用者で一つのものにしていますし,利用者は不特定多数です。こうした規定は通常はECサイト運営者が準備しますから,①から③をすべて満たすことになります。

これに対して,就業規則等は該当しません。



どのような規制がなされるのでしょうか?


 まず,どのような場合に約款の内容が契約内容になるのかという規制があります。

このためには

 ・約款を使った取引をする合意をする

 ・示した約款の内容を契約内容とすることに合意をするか,約款を準備した側が約款の内容を契約内容にすることを契約前にあらかじめ示していた場合



です。2番目については,通常後者になることが多いでしょう。ただし,この場合には,取引相手が約款の内容を詳しく見せてほしいといった場合に応じないと契約内容にはなりません(言い換えると,契約が成立しません)。いちいち紙媒体などで見せるのは負担が重いでしょうから,PDFファイルなど記載された内容を渡していれば応じた扱いになります。





 次に問題となるのは,せっかく約款の内容で契約内容が決まったとしても,そこから契約内容から外されるものがあるかどうかです。結論から言えばあるのですが,これが例外でないとせっかく約款で契約をする意味がなくなります。これは特にBtoC取引での規制で不当条項を排除する点と似た規制が設けられていますが,重要なのはBtoBであっても規制が加えられる点です(ただし,内容にもよりますが,BtoCと同じとは言いにくいとも考えられます)。

 その具体的な内容としては,約款を準備された側にとって,信義に反するほどの権利の制約や義務の加重化がある場合です。抽象的ではありますが,BtoCについては既存の法律で不当条項として無効になるものが参考になるでしょう。





 最後に約款の書かれた内容を一方的に準備した側が変更できるのかという話があります。これは,準備をした側が勝手に契約内容を変えられるのか(原則は契約内容は双方の合意なく変更はできません)という点から問題になります。ここが全くできないとなると,約款を設けて集団処理をするメリットがなくなる反面,先ほどの原則から外れること・相手にとって思わぬ不利益を与える可能性もあるため,どこまでの規制を設けるかが問題となります。

 そのためには,次のどちらかの点を満たす必要があります。

・変更する内容が相手方の利益に一般的に適合する

・変更をすることが,契約をした目的に反しない。・変更後の内容が相当である・変更をする旨が約款におかれていること・変更の内容やそれまでの経過に照らして合理的な変更といえる場合



 分かりにくい話ですが,変更した後の内容が取引相手方の利益になるならば変更が有効かはあまり問題になりませんから,問題は後者の点です。後者の点は様々なことが書かれていますが,結局は変更をすることが書かれている・変更に至る過程や内容から見て,合理性などが存在し取引相手にとって大きな不意打ち・不利益を与えなければ変更は可能とするものです。面倒なのは具体的な事情から合理性などを判断する(この場合は裁判などの手続きの中になるでしょう)ことになりますから,約款内容を変更する場合には,こうした点の説明や説明内容の準備をしておく必要があるでしょう。



改正内容はいつから適用になるのでしょうか?


 改正自体は令和3年(2021年)からになりますが,それ以前に作られた約款にもこの内容の適用が原則となります。ただ面倒な点は,改正によって設けられた約款と評価できるものだけであるという点です。そうでないものは,これまでの裁判例で判断されたルールによることになりますが,そこで有効とされるものは今後も有効となります。

 また,約款の変更に関する規制も原則として,改正前の約款についても適用されますが,例外もあります。約款を準備した側・準備された側が書類などで適用に反対をする場合です。ただし,この反対は改正前までに行う必要があります。

 このように,改正について注意する点はいくつもあり,準備しておく必要があるでしょう。


縮景園のアジサイたち

 縮景園のアジサイも咲き始めました。今が見ごろなようです。いろいろな形の、さまざまなアジサイが楽しませてくれます。

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片島由賀

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片島由賀(勁草法律事務所)

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