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  1. 売掛金の時効管理は大切・放っておくと請求ができなくなるリスク発生に。
片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

売掛金の時効管理は大切・放っておくと請求ができなくなるリスク発生に。

2019年5月14日 公開 / 2019年9月1日更新

テーマ:民法

 昨年民法が改正され,多くの権利(売掛金や貸金)の時効期間が統一されました。今後は多くは契約から5年となります(ただし,後で触れますように注意が必要な場合が相当数あります)が,この改正が施行される時期との関係でうっかりしていると請求が認められないことになりかねないので注意が必要です。今回は民法改正を前に、押さえておくべきポイントについて取り上げていきます。

改正はいつから?改正前の取引についての売掛金などはどうなる?


 一部の例外がありますが,改正された内容は来年(2020年)の4月から施行されます。ここでの例外には今回触れる時効管理の話は含まれません。何よりも重要なのは,来年の4月以前にこれから取引されるだろうモノを含めた売掛金や貸金・家賃などの時効期間がどうなるかという話です。



 その前に簡単にここでいう時効について触れておきます。ざっくりいうと,時効とはスタート時点から一定期間内に裁判での請求や相手に負債の存在を認めてもらうことなどをしないと,回収が法律上困難になってしまう事柄を指します。この制度を使うには支払いを逃れたい方が使うことを主張する(法律用語で「援用する」といいます)必要があります。そのため,貸金業者の中には「使う」と主張する前に回収を図る方がいます。支払うということは使わないという意思を示しますから,後でやっぱり使うということはできません。



 そのため,

① 時効のスタート時点がいつからか

② スタートから何年で時効になってしまうか

③ 時効になるのを防ぐ方法には何があるか

はお金を回収する側にとっては非常に重要な話です。いうまでもなく,回収ができなくなると自社が倒産してしまいかねません。



 前置きが長くなりましたが,今回最初に触れたのは②に関する点です。結論から言えば,改正前の取引については,改正前の法律の内容によるとされています。これまで②の期間が非常に短いものも存在し、放っておくとすぐに時効になっていた点に問題がありました。診療報酬は3年・工事設計の費用も3年・弁護士報酬は2年・小売りや卸売りの代金は2年・飲食や宿泊代金は1年となっています。来年の3月までの取引では,こうした期間制限がそのまま当てはまります。改正されるから何とかなると考えていると思わぬ落とし穴にはまってしまいかねません。

時効のスタート時点はどうなる?


 今回の改正で原則が契約をしてから5年という話をしましたが,実はそう簡単な話ではありません。例えば,売掛金の支払いを商品引き渡しから3か月・引き渡しは契約から6か月にしていた場合に,契約からスタートされると実際に回収をできる時点(このケースでは契約から9カ月)からみて大きな損になります。こうしたケースでは実際に回収ができることを知ってからがスタート(ふつうは引き渡して3か月が経過した時点)になります。支払い時期が定まっている場合には,家賃の支払いなどがあり,こうした場合も同様に簡単に言えば,支払い時期を知ってから(通常は支払い時期は書類や口頭でのあらかじめ約束しているでしょうから,支払い時期が来てから)がスタート時点になります。

 

 これに対して,特に支払い時期などを定めていない場合には契約が成立した時点からになります。これは,スタートである回収をできる時点が契約成立時点と法律上されていて,契約をした段階でそのことは知っていると評価されるためです。


時効になるのを防ぐには?



 よくある話として,請求書を送る・内容証明郵便を送るというのが請求でまず考えられる方法です。こうした方法も時効になるのを防ぐ意味合いは一応ありますが,限界がすぐに来る点には注意が必要です。



 それというのも裁判を起こすなどの請求以外は「つなぎ」の意味合いでの請求という扱いで,先ほどの書類を送っても6か月以内に裁判を起こすなどしないと,時効を防ぐ効果はありません。しかも,2度目以降送った請求書などは時効防止の効果は全くないとされていますので,時効管理の意味はありません。意味を持たせるとするならば,相手方に支払いますという念書を書いてもらえば,時効になるのを防ぐには大きな意味を持ちます。ここで時効になるのを防ぐのは,時効までの期間をリセットさせるということで管理には大きな意味を持ちます。



 管理においては,先ほど触れました①から③の点に加えて,回収の可能性がどこまであるのかを考えていく必要があります。②は今後はあまり問題にはならず,①の点を取引や回収時に時系列で管理をすれば足りるでしょう。③については念書を書いてもらっても,その後相手のお金の状況が苦しくなるのでは意味がありませんので,信用状況(決算書などの提示を求める)・担保を入れてもらう等を踏まえてどうするのがいいかを考えていく必要があります。



縮景園のヤマボウシ

縮景園のヤマボウシです。ツツジが終わりましたが、まだアジサイは蕾が小さい状態です。今は少し楽しめる花が少ないですが、実がなっていたり、このヤマボウシのような変わった花が楽しめる時期です。

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片島由賀

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片島由賀(勁草法律事務所)

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