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片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

解雇が有効か問題になった場合とお金の解決についての現状と論点

2019年4月10日 公開 / 2019年4月20日更新

テーマ:労務問題

 従業員の方が退職する理由は合意によるもの・退職の申し出によるもの等いくつかありますが,問題となるのは退職を求めた際に解雇をされた(会社側から一方的に辞めさせること)のか退職を促すものであったかという点があります。

 また,解雇となった場合に,それが有効か無効かという点も問題となります。日本では,解雇はそう簡単に有効にはならない傾向に法律や裁判例の積み重ねでなっていますので,どう対応するかは重要なところになってきます。もちろん,経営者としては,こうした事をする事態は避けたいところですが,いざというときには考えておく必要があります。


現状よくある解決方法


 結論から言えば,金銭解決というのがありえます。これは,解雇なのかどうか・解雇だとして有効かどうかを裁判所で判断をするのと実際に職場復帰をできるのか(厳密にはしこりなく復帰できるのか)が別の話であるために行われる解決方法といえるでしょう。

 こうした事が問題となるのは,解雇が無効である場合には,従業員が勤務をする意思を示している限り勤務なくとも給料を支払うという法律の決まりが存在すること,しかしそれをどこまでの期間認めるのかという点が問題になっていることが関係します。金銭解決をするには当然のことながら請求側だけでなく支払い側が支払う必要を感じないとそうした方向には向かいにくいためです。ちなみに,解決にはこうしたお金(バックペイと呼ばれるものです)の他に解決金(簡単に言えば退職をお金で解決するために支払うお金)の支払いを求められることがあり,先ほどと同じくどこまでとするのかは大きな問題となります。

 お金で解決をするとしても問題は金額であり,ここで述べた要素(一般に制限期間や相場はないとされますが,いつまでも継続するとは考えられては言えません。数カ月程度が一つの目安と思われます。)が一つの大きな金額を考える要素になろうかと思われます。もちろん,ハラスメントなどがあれば話は変わってきます。ちなみに,解雇が無効という場合に会社側がその従業員に勤務をすることを命じることはできますので(実際にするかどうかは別),既にほかの会社に就職をしていて勤務する意思がない場合には勤務の意思がないものとして,バックペイ部分の支払いは不要になるのではないかという話があります。

 解雇は一方的な会社側からの通知ですが,書類以外に口頭で言った・言わないという話もあり,特に口頭の場合にははっきりしないことはありえます。こうした場合に反論ができない程度であった等の状況があるかは問題になりますが,言った際の流れや雰囲気内容等が考慮されます。少なくとも,話し合い主体であるとされる労働審判であれ,裁判の手続きであれ,話の筋と根拠となる資料は必要となります。ちなみに,労働審判というのは3回以内で解決を目指す裁判所での手続きですが,可能な限り一回目の日までに準備をする必要がありますので,かえって短期間に煩雑になる可能性もあります。

 少なくとも,お互いの対立が大きい場合には面倒な手続きに対応をする必要が出てきます。いずれにしても,そうした中で実際にはお金の解決の代わりに退職扱いができるように話をつけるケースが多くなっているように思われます。ちなみに,どうしても復職(退職を拒否する)方の場合には裁判手続き(解雇の無効を理由に従業員であることの確認と給料相当額のお金の支払いを求めるもの,緊急に行う手続きも存在します)を求めてくる可能性が高いです。

解雇をお金で解決する制度とは?



 先ほどの話だと既に解雇を争いながらお金で解決を図る実例があるではないかという気もするところですが,制度ではありません。あくまでも既存の制度の中でそうした話し合いでの解決が図られている(示談交渉での解決を目指す場合には制度に関係なく可能です)に過ぎません。

 現在国では制度として,解雇が無効といえるような場合でもお金での解決(これは,会社側が従業員側に解決金を払うというもの)を図ろうという制度を設けるかどうかで議論がなされています。

 その中では,先ほど触れたバックペイと呼ばれる勤務はしていないが未払い扱いされる給料部分と解決金(退職扱いしてもらうために支払うお金)をどのように考えていくか・双方とも支払わないと退職扱いができない制度とするか(退職扱いできないとするとバックペイ部分も実質解決金となります)等が議論されています。解決金の支払いは性質上解雇されたという従業員側から請求をするという形になりますが,この請求が示談交渉でも認められるものとするのかという点は重要です。現在の議論では労働審判を含む裁判所の手続きを使う場合にのみ請求を行えるという整理がされていますから,この整理にそって法律改正がされると,解雇をめぐる紛争が示談交渉よりも裁判所を使った手続きでの解決が図られる場合が増える可能性もあります。

 また,金額をどうするのかという話もあり(厳密にはどう計算するのかという話です),ここは支払金額に影響しかねませんので重要な話です。ここにはその従業員の年齢や会社の規模,問題となった事項についての従業員の落ち度の程度を考慮する案が考えられています。また,労働組合その他従業員代表と会社側で予め計算方法を取り決めておくことができるのか,といった点も議論されています。

 まだ結論は出ていませんが,今後予めの備えや問題が生じた場合の対応を考えておく必要も出てきかねませんので,注目をしておきたい流れかと思われます。


岡山・餘慶寺の桜

 先日行きました,岡山県は瀬戸内市にあります,餘慶寺の桜です(本文とは関係ありません)。ソメイヨシノとは違うようですが、種類は分かりません。ソメイヨシノも雨と,葉が伸びてきてだいぶ散ってきました。もうそろそろツツジが咲いてきているようです。

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