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片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

従業員退職の際の引継ぎや情報管理はどうすればよい?情報漏洩のリスクを減らすために

2019年3月13日 公開 / 2019年3月14日更新

テーマ:労務問題

退職の経緯にもよるかと思われますが,退職の際に顧客情報などを持ちだされたのではないか・退職したのにいつまでの会社のHPに自分が従業員として載っているのはおかしい等,どの情報をどこまで管理していくのかは注意が必要なところです。今回はこうした話について触れておきます。

退職の際の従業員側の引継ぎ義務は?


従業員が退職することになると,引き継ぐだけの方がいるかどうかも問題になりますが,仕事の引継ぎがないと何をどうすればいいのかが全く分からなくなりますので,業務に混乱が生じます。

 そうした事柄を防ぐには,業務の引継ぎを行う必要がありますが,退職の経緯によっては退職する側がこうした引継ぎに消極的である場合も考えられます。引継ぎについては情報漏れを防ぐ意味もあってアクセスできる範囲なども定めた決まりを設けておく方がいいように思われます。引継ぎをする義務自体は裁判例上も当然に認められるものとされてはいますが,引継ぎの手順とともにしっかりと決まりを設けておくことで混乱を防ぐことができます。

 退職をする場合には必ずしも円満と言い切れない場合もありますから,決まりだけではなく技術的な対応をしておくことは必要でしょう。中小企業だから難しいというところはありますが,情報漏れが簡単に起きることはリスクである上に,後で情報を不当に流出させたといっても,その証拠を集めることは必ずしも簡単ではありませんから,こうしたことにどこまで投資するかは要検討事項と思われます。

 特に引継ぎが諸般の事情から長引く場合には,それだけ社内情報へのアクセスできる期間が長くなりますので,情報漏れのリスクが増えてきます。そのため,こうした注意をする必要は増えてきます。

業務上預けていた物品の返却などは必ず受ける


実際上,こうした事をしていない会社はないかと思われますが,使っていた会社のパソコンやUSBその他端末機器・名刺や顧客などの名簿・IDカードを回収するとともに,業務上使っていた情報を引き継ぐことは必須です。

 そのうえで,全て返還をしたことや情報などの持ち出しをしていないことの確認書に署名をしてもらうこと(基本的には問題がなければ署名には支障がないものと思われます)・秘密保持の誓約書への署名をしてもらう必要があります。義務がないからという反論をしてくる方がいるかもしれませんが,今後の紛争防止のために記載をしておくことはメリットがあるはずなので,こうした点をきちんと伝えていく必要があります。少なくとも貸与物の持ち出しは横領行為に該当する可能性があり,情報に関してもその内容や管理状況によっては不正競争行為に該当する場合があるのですから(要するに犯罪行為などになる可能性があるということ),こうした点はきちんと伝えておきましょう。

そもそも情報を簡単に持ち出せないようにしておくことが重要


 退職後に,顧客名簿その他を持ち出したのではないかということでトラブルになることがあります。こうした場合には,簡単に情報を持ち出せるためにその可能性はあるものの,実際に持ち出したかどうかのチェックができない場合が多くなります。また,こうした際には業務に関する重要な情報であっても「営業秘密」ということで法律上の対応手段を講じることができなくなります。理由は,アクセスが制限された秘密管理がされていないと,「営業秘密」として保護されないからです。ですから,「疑惑」を防ぐために早いうちに手を打っておく必要が大きいものと思われます。

 決まりだけでなく技術的な対応も必要になってきますが,情報の重要性と費用の点から,判断が重要になってきます。

会社の側で「元従業員」の情報はどうすればいいのでしょうか?


まず,生年月日や住所その他個人を特定識別できる情報は個人情報になります。こうした情報は採用時に伝えているはずの「利用目的」を超えての利用したり,外部に漏らすことはできません。小さな会社の中には特に個人情報についての指針を決めていないところがあり,利用目的を伝えていないもしれませんが,現在一人でも個人情報を取り扱っているのであれば,「個人情報保護法」の規制を受けますので注意が必要です。

 いずれにしても,外からの問い合わせについては原則として提供はできませんし,通常労務管理目的で取得した情報を再入社その他の目的でも使えるようにするにはその旨の利用目的の決まりを設ける必要があります。定めている利用目的(従業員の場合は通常は労務管理目的)がなくなれば保存が法律上義務付けられている個人情報を除けば,削除をする必要があります。逆に言えば,保存義務がある情報はきちんと残しておかないといけません。

 次に会社HPについて従業員として掲載する・「先輩の声」等で載せている場合には,個人情報に当たらない場合(たとえば,写真だけ掲載している場合)もありえるため,必ずしも削除をする法律上の義務がない場合もありますが,取引その他で混乱が生じないよう,削除をしておいた方が無難でしょう。 

 このように情報管理については面倒な点がありますが,従業員の健康管理情報への規制が厳しくなるなど情報についての規制の問題は重要となっています。必要なところ,経営判断として対応しておくところ等きちんとスタンスを決めて対処する必要があるでしょう。


京橋川の河津桜
京橋川に生えています河津桜の写真です。少し前のものですので,今はもう見頃が終わっています。もうそろそろ桜の季節ですが、まだ寒い日が続きますね。体調管理には気を付けて過ごしたいものです。

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片島由賀

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片島由賀(勁草法律事務所)

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