マイベストプロ広島
  1. 災害があったとき,大雪などが予測される際に休みに出来るでしょうか?
片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

災害があったとき,大雪などが予測される際に休みに出来るでしょうか?

2019年2月1日 公開 / 2019年4月20日更新

テーマ:労務問題

災害時に出勤を命じる・休みにすることに問題は?  


 普通に考えれば,災害が起きて危険な際に出勤を命じるのは,よほどのことがない限り考えにくいと思われます。
 従業員に対して会社は  ・いつ ・どこで ・この仕事を ・こういう具合でやってほしい ということを指示することができるのが原則です。給料の支払義務がどうなるのかを除けば,勤務をしなくてもいいと命じること自体そこまで問題はありません。状況によっては,勤務をするという義務がなくなることも十分ありうるでしょう。むしろ,この関係でいえば,危険な環境下でも勤務を命じることができるのかという話の方がはるかに問題になります。  

 日本の法律上は,こういった場合に従業員が会社からの命令に従わなくてもいいことを直接示す事柄はありません。ただし,危険な環境であれば当然安全配慮義務(法律上定められています)という,従業員の身体や生命の安全を確保する義務(違反は一般的に会社に対する賠償請求で主に労災の場面で問題になることが多いものです)を会社は負っています。こうした義務を果たさないと働かなくてもやむを得ないとされる可能性自体は残っていますが,義務の内容は災害といっても一口にはっきりとはしないこともあります。とはいえ,リスクを防ぐならば,こうした場合に出勤を命じるのは,避けた方がいいときは出てきます。ちなみに,災害時に残業や休日勤務を命じることができる場合が法律で定められています。  

 通常いつ出勤を命じるのかは就業規則で定められていることもあり得ますが,違反に対する処分等の際に問題となりうるでしょう。

災害が予測される際に休業にする・早く帰宅してもらうこと等の問題は?

 
 基本的には,災害が発生した際の話として上で記載したことが当てはまります。むしろここで問題となるのは,帰宅をしたことにより仕事をしていない部分・休みとしたことで仕事をしていない部分の給料がどうなるのかという問題です。災害発生時にも同じ問題はありますが,ここでの問題の方が大きくなります。  

 このときでも会社側が給与を支払う場合は特に問題はありません。ここでの問題は給料を支払わなくてもいいのか・年次有給休暇を取得してもらうことは可能かどうかという話です。  

 まず,年次有給休暇を取得してもらえるのであれば給料分の金は支払われることになり,年次有給休暇の消化がなされるところですが,年次有給休暇はあくまでも従業員が具体的な時期(あるいは季節)を指定して休みをとるものです。言い換えると,会社が取得を強制できるものではありません。これは,今年(2019年)4月より基準となる日から1年の間に5日は年次有給休暇を取得してもらうという話が導入されても同様のものです。  

 言い換えると,従業員側が別の日に年次有給休暇を使いたいと言って拒否をしてきた場合には使えない方法となってきます。同様のことは災害発生時にも言えます。この場合にはもっと問題は大きく,災害の程度が大きく就労をそもそも従業員が断れる状況では,年次有給休暇の取得が考えられず,仮に従業員側が取得をOKしてもそこは年次有給休暇と言えるのかという問題が出てきます。わかりやすく言えば,年次有給休暇とは就労する義務がある際に健康的な生活を送れるように給料分のお金は出つつ休みにするという制度ですから,就労する義務がない場合そもそも使う場面ではない話になります。  

 ちなみに,このときはとりあえず年次有給休暇を取得することにOKをもらった上で,そののちに災害の程度も見つつどのようにするのかを決めた方がいいでしょう。特に,今後は年に5日の指定義務が会社にある部分は,こうした日を当てるのはリスクが大きい点は意識をしておいた方がいいと考えられます。  

 逆に会社側の給料支払義務はそもそもなくなったと言えるかどうかという問題があります。働いていないのになぜ給料を支払わなければいけないのかという感覚があるかもしれませんが,法律上働いていなくても給料の支払義務を負う場合はあります。  

 それは,休業手当を支払う必要がある場合・会社側が原因を作り出して勤務ができない場合の給料支払の話です。後者から先に触れると,たとえば,明日から来なくてもいいと言って勤務ができない場合で解雇が認められないケースです。この場合はいつまでなのかという点の問題はありますが,給料の全額支払い義務があります。

 これに対して,休業手当は平均給料の60%の支払いをする必要があるという場合で,不可抗力と言える事情がない限り,会社は支払義務を負います。災害との関係でいえば,東日本大震災の際に基準が行政から出された面もありますが,一般に会社側が措置を尽くしても防げない外部要因が不可抗力とされています。大きな災害で交通網の遮断その他の事情があって勤務ができない場合は該当するかと思われますが,天気予報を踏まえて未然防止をする場合には多くのケースにおいてここに該当しない可能性があります。もちろん,事情によっては該当する可能性もあります。  

 こうしたことから,災害が迫っているとの予測が出た場合の事前対応では60%分の支払いをする可能性は少なくともあると考えておいた方がいいでしょう。ちなみに,先ほどの全額支払いの可能性を雇用契約で外しておくということは,合意が有効と認められるかどうかという点で大きなハードルが出てくると思われますが可能です。しかし,休業手当は合意があっても外すことはできません。  

 このように,災害が予測され計画運休その他の事情から臨時に休みにする・早めに帰ってもらうという際には,顧客対応はもちろん,こうした給与面の支出その他の点も意識をしておいた方がいいでしょう。


縮景園の花
 今日から2月ですね。縮景園では去年暮れくらいから梅野花が開花しているようです。まだ満開までいっていないようですので、あと2週間くらいは楽しめるようです。

このコラムに関連する内容の記事をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
豪雨・震災で借金の支払いが大変なときの解決手段の選択肢、「自然災害債務整理ガイドライン」とは?

この記事を書いたプロ

片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(勁草法律事務所)

Share
関連するコラム