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片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

SNSやネット上で「名誉棄損」・その対処法は?

民法

2018年10月9日 / 2018年12月9日更新

 Instagram・LINE・Twitter・Facebook等のSNSやブログ・転職会議など会社情報を書いたものなどインターネット上に投稿するサイトは色々とあります。SNSでは情報は流れていく一方で拡散が大きく,匿名の書き込みが広がっていくという面があります。他方,飲食店などであれば,口コミの書かれているサイトなど自社や自分のことが書かれていることは様々あります。
 何か悪いことが書かれていて,それは名誉棄損なのでしょうか?どんな場合に「名誉毀損」といえるのか・またその場合に取りうる方法などを解説します。

「名誉棄損」とは?


 何か否定的な事柄が書いてあると,まず気になるのが「名誉棄損」ではないかという話です。名誉棄損になると,原則として損害賠償請求を書き込んだ相手にできますし,投稿の削除を求めることができる場合もあります。また,民事の話だけでなく,逮捕され刑罰を科されるといった制裁もありえます。
 そのため,名誉棄損に当たるかどうかは大きな意味があるのですが,どこまで名誉棄損といえるのでしょうか?例えば,次のような場合はどうなのでしょうか?
① 歯科医院に対する,あそこは先生はいいけれども,歯科衛生士が気持ち悪いと書かれた口コミサイトの記事
② 飲食店に対する,あそこは産地の偽装を行う・従業員に残業を強要する。味がまずいと書かれたTwitter上の記事
③ 〇〇さんは気持ち悪いから嫌い,というブログ上の書き込み
いずれもネガテイブな話なので,削除できないのか等と考えてしまうところです。これは全て名誉棄損となるのでしょうか?結論から言うと,そうはなりません。①は,「歯科衛生士が気持ち悪い」・②は「あそこは偽装を行う・従業員に残業を強要する・味がまずい」・③は「気持ち悪い」という話がネガテイブな話となります。①は個人的な嫌悪感を示すとも読めますし,ネガテイブな事実を述べているようにも見えます。②は明らかに事実を述べています(少なくとも,産地偽装や残業強要)。③は個人的な嫌悪感を述べています。
 このうち,名誉棄損となるのは,対象となる方の社会一般の信用を下げるような事実を書くことです。ただ,①のような微妙な場合もありえますが,一般には他の事柄の書き込みや一般的な読み手が知っている事柄と相まって事実を書いていると読み取れる場合には,名誉棄損となる事実を書いていると評価されます。①は著名な歯科医院でもない限りはこれだけの書き込みで事実を書いたとはそう簡単には言えませんが,例えば,「その歯科衛生士は歯の処置の際に〇〇をするから」ということが書いてあれば,全体的に見て「気持ちが悪い〇〇をする」といえるため名誉棄損と簡単に言うことができます。③についてはこのようには言えないことになります。
 ここで重要なことは,判断は被害にあっているのではないかという方が感じていることではなく,一般的に見てどうかという点です。ここは被害にあったのではないかと感じている方には判断がしづらくなってくる点です。投稿の記載以外に社会一般で知られていること,例えば,殺人犯の可能性があると知られている方について「〇〇は極悪人,死刑になるね」と書き込めば,殺人犯で死刑になるという事実を書いたと評価される可能性が出てきます。
 注意点は知っている方向けに思わせぶりに書かれている書き込みです。これは知っている方以外には何のことやらわからないものの,知っている方には特定の事柄(事実)が書いてあるというものです。名誉棄損は不特定多数の方にネガテイブな事実を書くことが該当するものですが,ここでいう不特定多数とはそこまで広い意味とは考えられておらず,それなりの方が知っているということであれば満たすことになります。
 ちなみに,ある事実に基づいて意見などを書く場合には,前提事実が嘘で,感想自体が人格攻撃になっている等の事情がない限りは名誉棄損として責任を追及できないとされています。

名誉棄損への対応は?


 刑事事件とするという対応(刑事告訴をする)といったものもありますが,ここでは民事的な対応(損害賠償請求や削除を求めるなど)の話をしておきます。なお,刑事的な名誉棄損と民事的な名誉棄損には少し違う点がありますが,ここでは省略しておきます。

① 削除を求める
ネガテイブな情報は削除を求めたいと考えるのが自然でしょう。こうした場合の対応として,InstagramやTwitterなどSNSや投稿掲示板(例えば,5ちゃんねる・2ちゃんねるなど)は,それぞれの運営基準(削除基準)に基づく削除を運営者に求めることができます。この方法は,削除を求める理由や箇所を示し,そのことについて運営者側で削除が適当かどうかを判断するというものです。
 そのため,削除されるのか・いつ削除されるのか・理由は何なのか等は削除を求めた側にはわかりません。
 これはパッと見たところ,すぐにはわかりにくく時期に応じて変わっていく点がありますが,利用している画面内に削除請求を出すことができる欄があります。そこから,削除を求める箇所(特定が必要です)・削除を求める理由(名誉棄損と考える理由,証拠があればつける必要あり)などを示していく必要があります。
 こうした方法で削除されるケースは相当程度ありえますが確実というわけではありません。難しい場合に交渉をしてみるという方法もありますが,難しい場合には裁判所の手続きを使って削除を求めていくことになります。この場合も,削除を求める箇所の特定や理由(名誉棄損となる根拠や証拠)は必要となります。

② 損害賠償請求をする・その他
 この場合は①と異なり,実際に書き込みをした方に名誉棄損だからということで金銭の支払いを求めることになります。①は運営者側に求めるのに対し相手方が異なる点は注意が必要です。
 この場合にも,名誉棄損といえる記事の特定と根拠(証拠)は必要です。それに加えて,匿名の書き込みの場合にはだれが書き込んだかを調べる必要があります。その場合には発信者情報の開示請求という手続きを行う必要があります。場合によっては,この時点で裁判手続きが必要なこともあり得ます。
 ちなみに,損害賠償請求以外に謝罪の書き込みなどをしてもらうという方法もあります。よく週刊誌に名誉棄損をされたということで著名人が訴える請求の一つに記事の差し止め・損害賠償請求とともに謝罪記事の掲載があり,まさしくこれに該当します。
 こうした名誉棄損に対する請求(書き込みをした方に対して)は法律あるいは裁判例上一定の場合は免責されることがあります。公共的な事柄について,公益を図る目的で一般に真実だと思って当然という理由がある場合です。簡単に言えば,個人的な恨みからの書き込みやよほど公益的な話以外はそう簡単には該当しません。
 書き込みをするときの注意点としては,名誉棄損となるような書き込みを避けることです。インターネット上の書き込みで気になるのは,ネガテイブだけれども,削除を求めるにしても名誉棄損になるかどうかという点が大きくなってくると思われます。また,例えば食中毒や勤務実態など中身が真実であった場合に,食中毒防止や勤務実態の是正という公共目的が言えそうな場合にどう対応するのかという問題もあります。
 こうした点を考えながら,危機管理を普段からしていく必要があるように思われます。


下津井港近くの蔵と白い彼岸花

先月、瀬戸大橋を見に行きました。近くに問屋の蔵などが保存されているところがあり、そこに白い彼岸花が咲いていました。下津井港がまだにぎわいを見せていたときの面影を残しつつも、少し寂しげな感じでした。

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2018-12-05
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