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片島由賀

逆風を追い風に変える弁護のプロ

片島由賀(かたしまゆか)

勁草法律事務所

コラム

豪雨・震災で借金の支払いが大変なときの解決手段の選択肢、「自然災害債務整理ガイドライン」とは?

民法

2018年8月7日 / 2018年8月18日更新

 広島,岡山,愛媛などに大きな被害をもたらしました7月の豪雨災害からはや1ヶ月が経ちました。道路や,鉄道などや水道等ライフラインの復旧を進んできているものの,被害に遭われた個人の方の生活再建となると,まだまだではないかと思います。

 今回はタイトルからして重たいものですが,せっかく買った家に水や土砂が流入して使えなくなった,他方で住宅ローンがあり支払いが大変に・事業用の借入が災害の影響で支払いが大変に,ということは十分あるところです。こうした場合に公的支援がどこまで出てくるかは,その時々の施策を見ていくことになります。
 その他に,借金の支払いがこのようなやむを得ない状況によって難しくなった場合,対応策はあるのか,今回はそうした対応策の一つの選択肢として「自然災害債務整理ガイドライン」というものに触れます。
 

そもそも「自然災害債務整理ガイドライン」とは?


 制度上裁判所が一部話には絡みますが,あくまでも民間のガイドラインです。そして,破産などとは異なり,あくまでも話し合いでの解決を目指す手続きです。借金の負担を軽くする点に特徴がありますが,破産とは異なり,原則財産を可能な限り処分する・そのうえで負債の支払い義務をなくすというものではありません。

 一番の特徴は,いわゆる「ブラックリスト」に登録されない(厳密には信用情報機関に「事故情報」が載らない)形で支払い負担を軽くできるという点です。ただし,話し合いですから,全ての債権者と話をつける必要が出てきます。

 このガイドラインは,もともとは東日本大震災による生活や事業の基盤がなくなったのに借金の支払いが残るという,負担を軽くするためにできた制度から発展し,震災に限らない自然災害によって同様な状況になった方の負担を軽くするため設けられたものです。

 あくまでもガイドラインですから,法律的な拘束力はありません。しかし,このガイドラインを使える場合(後で触れますが,実際には使えないケースはたくさんありえます)に金融機関などは尊重していこうという扱いがなされています。
 ちなみに,このガイドラインができる前の災害である東日本大震災自体にはこのガイドラインは使えません。また,金融機関とは銀行や信用金庫信用組合・労働金庫や農協・国民政策金融公庫・リース業者や貸金業者などを指します。

どんな場合に使えるのでしょうか?


 最初にこうした点を触れるのは気が引けますが,申請をしても使う要件を満たさないとされるケースも相当数ある傾向にあります。このガイドラインの対象となるのは
・平成27月年12月のガイドライン制定以後に発生した自然災害(ただし,災害救助法の適用を受けたもののみ)の影響を受けたことで
・そうした自然災害が発生するまでに,住宅ローンや事業用のローンを負っていた方が,生活や事業の基盤を災害で影響を受けたために
・支払いが困難になった,近い将来に支払いが困難でになると確実に見込まれる方

です。そのうえで他にも対象を絞る要件があります。
・財産などを債権者に嘘偽りなく開示する方
・災害で影響を受ける以前に,延滞などがない方(ただし一部例外有)
・財産の売却などによって得られるお金よりも多くの金額を債務整理によって確実に支払えるなど債権者にとってもメリットのある場合

 特に事業者については
・債務整理を行うことで確実に事業の債権ができるとともに,事業の価値があること
が要求されています。
 また,個人の方には
・そうした借金がギャンブルや浪費・投機によってできた等自己破産の際のペナルテイとなる理由がないこと,が要求されます。

 このほか,反社会的勢力でないこと等がありますが,個人の方でも税金を含めて延滞がある場合は,先ほどの要件を満たさない可能性が高くなりますので,使えなくなりかねません。また,家の再建をその場所で考えられない(災害による影響からその場所を処分したい)場合にはこの手続きによって分割返済をすることのメリットがあるのかどうかをよく考えた方がいい場合もでてきます。
こうした理由もあり,実際には使えない・使いにくくなるケースは相当数でてきます。

 また,資産の価値がどの程度あるのかが重要な話になってきます。災害の発生によって,たとえば,土砂災害が起きた地域の資産価値は大きく下がります。しかし,当然にゼロになるわけではありません。今後の事業や生活についての負担をどこまでするのかを考えていく必要があります。

 ちなみに,この制度の適用を受けようとする場合に必須ではありませんが,可能な限り罹災証明書・被災証明書はとっておいた方がいいでしょう。支払いが困難になるかどうかは,公的な見舞金や支援金は収入として考慮されません。義援金の分配を受けたものがどう考慮されるかは特別な法律でどう考えられるかによります。


実際に使うには?


 先ほど触れた資料以外に債権者の状況や収入・資産の状況をすべて明らかにする必要があります。これは全ての債権者に対してそうする必要があります。

 また,利用する場合には,使いたいとの申し出を,借入元金の総額が最も大きい債権者に対して行います。そのうえで,細かな手続きの話は省略しますが,具体的なコーデイネートを支援専門家が行い話を進めていきます。支援専門家として登録をした弁護士・税理士・公認会計士・不動産鑑定士の指導の下返済計画などを考えていきます。
 この支援専門家はご自身が手配できません。つまり,困ったときにそれまで相談をしていた方には確実にならないので注意が必要です。なお,支援専門家の費用負担はないです。

 話が付くまでの間の支払いは停止しますが,逆に一部の方に対して支払いをすることもできません。追加融資を受けることはできますが,制限がかかります。

 明らかにされた資料を基に,資産や収入(事業者であれば収支見通しなど)を見て,個人であれば原則5年以内に支払いをする内容・事業者(個人事業者を含む)は5年以内に黒字化できるなどの内容を満たす内容で話をつける必要があります。
 減免込ではあるものの,資産をすべて処分したよりも多い金額・収支状況を見ての返済総額が決まるという点に注意が必要です。言い換えれば,事業や家計収支の見通しが立ちそうにない場合には使いにくい点が出てきます。

 ちなみに,話し合いがうまくいかないときは破産などの手続きを考えていくことになります。うまくいく場合には裁判所での話し合い手続きで合意を最終的にとっていく形になります。


 やや分かりにくい点があるかもしれませんが,災害の影響で家や事業を今後どうしていこうかお悩みの方は専門家に相談をして考えていくのがいいかもしれません。




 フヨウの花が咲いていました。今日立秋ですので,暦の上では秋ですが、まだ暑い日が当面続きそうです。

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片島由賀

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