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海外進出する企業の二重課税を防ぐ「国際税務」の専門家。トラブルを未然に防いで企業の発展をサポート

広島・山口から海外に進出する企業の二重課税を防ぐ専門家

井上友一

井上友一 いのうえともいち
井上友一 いのうえともいち

#chapter1

海外に進出する企業の「二重課税」を防ぐ。EPA(経済連携協定)の活用についてもアドバイス

国際化が進み、海外との取引は珍しい時代ではなくなってきました。そのような時代に対応し、企業の「国際税務」を専門に手掛けているのが、「税理士法人きずな 国際部門」で代表社員・税理士を務める井上友一さんです。

 そもそも「国際税務」とは一体どのような仕事でしょうか?「私は『国際税務』と『海外税務』という言葉を定義して使い分けています。『海外税務』というのは現地の税務。たとえば企業がタイに進出していたらタイの税制についてです(こちらは日本の税制です)。『国際税務』は、日本とタイにまたがった取引についての課税関係、税金の問題を扱うもので、日本の税制での国際税務が私の専門になります(反対側、タイの税制での国際税務というのもあります)。課税というのはある意味、お互いの国が一つの対象に対し税金を取り合う国家権力のぶつかり合いです。企業からするとどちらかに払い、両方に払うことだけは避けたいですよね。その二重課税を防ぐためにどうすればいいのかをアドバイスするのが私の仕事です」

 現在、広島でも「国際税務」を専門に掲げる税理士はほとんどいないそう。インバウンド(海外から日本へ)もアウトバウント(日本から海外へ)も両方対応でき、海外主要国の専門家とも幅広いネットワークを持つ井上さんは、企業にとって心強い存在です。
また近年では各国と結んだEPA(経済連携協定)の活用についてもサポートできるよう、「EPAビジネス実務検定」や「通関ビジネス実務検定」の資格も取得。その仕事の幅をますます広げています。

 「ここ数年を見ても、2018年の環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)、2019年の日本・EU経済連携協定、2020年の日米貿易協定、2021年の日英包括的経済連携協定(EPA)、2022年の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など次々と協定が発効されています。それぞれの関税が条約によって異なるため、どの協定を活用すれば関税が安くなる可能性があるのか、またそのために必要な規則を満たしているのかなど、細かく確認する必要があります。EPAは使わなければその恩恵は受けられません。まずは輸入に関して、その活用の入口をアドバイスできればと考えています」

#chapter2

システムエンジニアから税理士へ。「想像力」と「創造力」を発揮できるのがこの仕事の魅力

生き生きと専門の国際税務や新たなEPAの仕事について話してくれた井上さんですが、元々税理士を目指していたわけではありませんでした。
 井上さんは山口県出身。山口県立山口高校を経て、数学の研究者を志し京都大学理学部に進学します。ところが大学ではコンピューターサイエンスに興味を持ち、卒業後はシステムエンジニアとして就職。しかしながら激務がたたり体調を壊したことをきっかけに地元に戻り、地方でもできる仕事を模索し、税理士を目指すことにしました。
「実際に税理士として働いてみると、自分に向いていると実感しました。私は新しいことがとにかく好きで、基本的に勉強も好きです。毎年のようにある税制改正も大歓迎(笑)。その変化を追いかけていくことを楽しみにしています。またEPAの関税分野に関しても、今までやってきた国際税務と内容的にも親和性があり、これまでの経験も生かせるのでワクワクしています」と井上さん。

 税理士の仕事のやりがいをお聞きすると、「単なる事務作業ではないところですかね」とにっこり。「税理士には『想像力』が必要です。企業がある経済活動をした際に、課税関係はどうなるのか想像する必要があります。また事後ではなく事前にさまざまな事態を想定し、プランニングする『創造力』も必要です。この2つの力を生かしてお客さまの役に立てることがこの仕事の一番の面白さです」

井上友一 いのうえともいち

#chapter3

国際税務も激変のとき。「自分の知識や経験を生かし、企業の経済活動をしっかりサポートしたい」

第一次世界大戦の頃にルールができたという国際税務の世界も100年以上が経ち、大きな変化を迎えています。

「これまでG20で議論していた国際的な法人税改革である『デジタル課税』について、2021年10月にOECD(経済協力開発機構)加盟国を含む 136カ国・地域で合意に達しました。この合意は2つの柱から成り立っており、2023年からの導入を目指すとされています。一つ目の柱は課税権の移転です。これまでは国内に支店や工場などを持たない海外企業に対して課税することはできませんでしたが、今後はサービスや商品を消費する国へ課税権が移ります。インターネットを通じてサービスを提供するGAFA(グーグル・アマゾン・旧フェイスブック・アップルのIT企業4社のこと)などの多国籍企業に対しても、サービスの消費国が課税できるようになるため、我が国の税収は増えることになります。二つ目は最低法人税率を15%にしたこと。これにより法人税率が低いタックスヘイブン(避税地)に子会社を設けたとしても、その差額を本国の親会社に課税できるようになりました。どの国もコロナ禍で弱っている中、この税収増加は大きいのではないでしょうか」

 時代が変われば、課税制度も変わります。これからも専門の国際税務をベースにしながら、関税などについても企業の相談に乗りたいと話す井上さん。「自分の知識や経験を生かして、企業の経済活動をしっかりサポートしていきたいですね」と穏やかな笑顔で言葉を結びました。

(取材年月:2022年10月)

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井上友一

広島・山口から海外に進出する企業の二重課税を防ぐ専門家

井上友一プロ

税理士

税理士法人きずな 国際部門  

広島では対応する税理士が少ない国際税務の分野に特化し、企業の国際的な二重課税を防ぐためのアドバイスや企業への税金だけでなく出向社員への税金についても対応しています。FTA,EPAにもアドバイスします。

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