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ダイスゲーム

2022年11月7日

テーマ:社員研修

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 企業研修

 ザ・ゴールというベストセラーになった書籍があります。その中に業務最適化に関する次のようなゲームが紹介されています。
 ゲームは5人で行われ、それぞれが順番にサイコロを振り、目の数だけ隣のボウルにマッチ棒を移動します。


ダイスゲーム
 ダイスゲームによる生産活動のシミュレーション

サイコロの目は1~6の間で変動する。回数を重ねれば出目の平均は3.5に限りなく近づく。
移動できるマッチの数は、ボウルの中にあるマッチの数まで(多い目が出てもムダになる)。
10ラウンド終わったときに、出来上がりの数はいくつになるか? 3.5になるか?

 5人がサイコロを振り、完了品置き場まで移動できたマッチの棒の数が、工程から生み出される完成品(スループット)です。しかし出た目の数がマッチ棒の数より多くても、ボウル内のマッチ棒の数以上は移動できません。また全員が順番にサイコロを振り、1ラウンドが終わったときに、ボウルの中にはまだいくつかのマッチ棒が仕掛かりとして残っているかもしれませんが、そのまま残して次のラウンドに進みます。

 このゲームは工場の生産活動をシミュレーションしたものですから、実際の工場と同じように、工程には能力があっても(サイコロの目が大きくても)作業すべき仕掛かり(マッチ棒)がなければ作業はできませんし、工程に残った仕掛かりをリセットして生産を始めることもできないからなのです。
 最終的に10ラウンド繰り返したときに、投入数とアウトプットはどれだけになり、工程内にはどれだけ仕掛かり在庫(マッチ棒)が残っているでしょうか。

 このゲームは、ラインバランスをモデル化したものです。各人が振るサイコロの出目は、1から6まで均等に変化しますから、その能力の平均は全員等しく3.5となり、能力バランスは取れているのです。

(1+2+3+4+5+6)÷6=3.5

 では今度は全体で見たらどうなるでしょうか。平均能力が3.5といってもサイコロの目は毎回変化します。そう考えるとアウトプットも毎回変化すると考えられます。最良のシナリオは、全員が頑張って6の目を出し続けることです。そうすると1回当たり6本のマッチ棒がアウトプットされます。また最悪のシナリオは全員が1を出し続けることですが、どちらも現実にはほとんどあり得ないことは容易に理解できます。果たして10ラウンド繰り返すと、完成品置き場には何本のマッチ棒がアウトプットされたでしょうか。平均能力で考えれば、

3.5×10=35

となり、35本の完成品ができていなければなりません。

 研修では、これと同じ「ダイスゲーム」を7人1チームで実際にやっていただきました。

ダイスゲーム画像
 やってみるとよく分かりますが、ほとんどの場合20~25本程度しかアウトプットされません。これがラインバランスにおける「遅れだけの伝播」なのです。このモデルでは単純化され過ぎて、実際の工場とは違うと感じるかもしれません。しかし、このゲームから分かることは、それぞれの工程に生産の揺らぎがある限り、ラインバランスを追求すればするほど遅れと混乱は加速するということなのです。

 2回目では生産能力を高め、第4工程のみ元のままの工程とし、ラインバランスをさらに悪くさせ、仕掛りを増やすように仕向けました。この問題の第4工程が「ボトルネック工程」になります。

 3回目のシミュレーションでは納期を守り、スループットを最大化するために、そもそも存在する各工程の能力差を「ボトルネック工程」と「非ボトルネック工程」とに分けて考え、むしろ積極的に活用するのです。ボトルネック工程とは能力が一番弱い工程ですから、停止してしまうと生産ライン全体のスループットを失ってしまう工程であると同時に、遅れを発生させる工程です。非ボトルネック工程は、多少の停止はスループットに影響を与えず、全体の遅れを吸収する役割を持っている工程と考えるのです。そこで、ボトルネック工程の生産ペースに同期させて、材料を先頭工程に投入させる仕組みを導入しました。

 生産効率を高めるとは、ボトルネック工程に対してのアプローチであり、これを無視してほかの工程が最大能力を発揮することは、在庫のムダを生み出し、利益を失うことに繋がります。

 ゲームで行う研修は、いわば体験型学習といえるもので、体験を通じて仕事に必要な思考を身につけることができます。研修そのものを楽しみながら受講することによって、高い学習効果が望めるメリットもあります。
 座学での研修だけでは身につきづらいことも、合間にゲームを挟むことによって効果を高めることが期待できます。

この記事を書いたプロ

下裏祐司

事業と社員の成長を導く企業活性化コンサルティングのプロ

下裏祐司(株式会社飛泉)

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