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コラム
もてなしの極意
2022年10月24日
井伊直弼が残した言葉の中に「出迎え三歩、見送り七歩」というものがあります。井伊直弼は茶人としても有名で、これは茶の湯に関する言葉ですが、お客様への心遣いを考える上で非常に印象的な言葉です。お客さまをお出迎えするときは、三歩前に出て中に招き入れ、お送りするときは、来てくださったことへの感謝の言葉をかけつつ七歩外に出てお見送りするという意味です。
経営破綻するお店には特徴があり、
①汚くなる
②品切れが多くなる
③サービスが横柄
だそうです。
このうち、3つ目の「サービスが横柄」が現れやすい場面があります。それが帰り際です。
最後の印象が特に大事なのです。この最後の印象のことを余韻効果と言います。
余韻効果は「またその人に会いたい」と思わせ、お付き合いが継続するきっかけになります。第一印象は初頭効果といい、後まで支配するのでもちろん大切ですが、最後の印象がもっと大切だということです。
ビジネスでは終わりの挨拶に本音や本心が表れるので、最後の最後まで緊張感を継続することが肝要です。
心からお客様への感謝の気持ちと、またの機会を念じて終わりの挨拶をすることです。
「○○さん、今日もありがとうございました」
「○○さん、また来月もよろしくお願いします」
別れ際に、お客様の名前を呼びかけるのも余韻効果があります。
J・C・レビンソンの「ゲリラ流 最強の仕事術」には、こんな一説があります。
「顧客を失う場合のほぼ70%が、販売後に何の働きかけもしなかったためだ」
これも「出迎え三歩、見送り七歩」に通ずることです。偶然にも同じ7割の比率になっています。経験則からも出会いの後の大切さを物語っています。これは企業経営だけでなく、一人の人間としても大事なことです。
最後に、もう一つ井伊直弼の書物から「独座独服」という言葉を紹介します。
客が去った後、再び茶の湯の席に戻り、一人で座ります。そして一人で服します。その独座して独服をする時間の間、ずっと今去って行った人のことを思い続けるのです。
日本語の「もてなす」ということの本来の意味は、人との出会いの後に始まります。
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