マイベストプロ福岡
神田紀久男

終活や死後事務委任契約に関わるコーディネートのプロ

神田紀久男(かんだきくお) / 終活カウンセラー

株式会社 イフケア北九州

お電話での
お問い合わせ
093-472-4545

コラム

相談者からの嬉しいお手紙

2022年10月19日

テーマ:おひとり様の終活

コラムカテゴリ:くらし

コラムキーワード: エンディングノート遺品整理


一昨年に私が「おひとりさまの終活」の本を出版し、読者の方から時々ご相談の連絡をいただくことがあります。中には、北海道からの相談もありました。電話や手紙・メール等、ご高齢者の方でも、本を読み、ネットを検索し、当社のホームページを探して問い合わせをしてくれることもあります。私の両親は80歳ぐらいになりますが、パソコンもスマホのチンプンカンプンで、話になりませんが、同じような年齢の方が、スマホなどを使いこなしていることは本当に凄いことだと思います。
さて、そんな相談者の方で岡山市にお住まいの84歳の女性から相談をいただき、回答をお手紙で送ったところ、この方からお礼のお手紙をいただきました。今回は、その相談内容をご紹介します。

相談者の方は、12歳からヤングケアラーとなり一人で過ごしてきたそうです。、現在の年齢になっても、健康面では不安もなく、元気に暮らしているようです。ただ、最近は、少し耳が遠くなり、健康面の不安を感じることもあるようですが、現状では、要介護認定を受けることができるような状況でもなく、「もしもの時はどうしよう」と法律家の方にも相談をしている最中で、任意後見制度の利用を勧められたけれど、いまいちスッキリしないし、よくわからないことがある。また、自分が死んだ時には誰か頼れる人がいるのかという相談でした。以下、長くなりますが、私の回答を記します。
*************************************
 死後事務委任と成年後見の関係について、お悩みのようですので、少し説明をします。
成年後見制度は、原則【生きている間】の支援を行うものです。特に【事理弁識能力が無くなった方】=「認知症を発症している人や知的・精神障害のある人」の人権尊重と保護を目的としているものだと考えておくと良いと思います。そして、成年被後見人が死亡すると、後見人の業務は終わります(但し、ある条件によっては、死後事務が行うことが出来たり、実務上は、死後も業務をおこなっていかねばならないこともあります。)。
従いまして、成年後見制度を利用することと死後事務委任は、別物だと考えておいた方が良いわけです。別物というのは、成年後見人と死後事務を受任する人が別人で良いと考えるという意味です。
ここから考えていくと、高齢ではあるけれど、独りで何でも事を済まることが出来ている状態が、亡くなるまで続くのであれば、成年後見制度を利用する必要はないことになります。ただ、将来の備えをするという意味で、「事理弁識能力が失うかもしれないこと」を想定して、成年後見人になる人を自分で決めておくという任意後見制度を利用することは、一つの解決手段であることは間違いありません。
この場合のデメリットは、費用(任意後見報酬)の負担が大きいということですし、亡くなるまで、事理弁識能力が失うかどうかもわからないので、その必要性は不明なことも挙げられます。資産をたくさん持っている方は別として、利用する方が増えてないこともこの点にあると思います。

 将来に確実に起こることは、「死亡」です。独り暮らしていて、家族がいない・親族も頼れない(頼りたくない)という方が、死後事務委任を第三者に行いたいという要望が、今ドンドンと増えてきています。
その方が死後事務委任を行う方法は二つあると考えておくと良いと思います。
一つ目は、亡くなった後の全てを第三者に任せるために、行ってもらう内容を決めて、その対価を契約時に先払いする方法です。この先払い方式のメリットは、将来について今感じる不安を解消することができ、スッキリすることだと思います。デメリットは、先払いで、結構なまとまった額を支払うことになりますから、資産が一気に減っていくことで、別の不安(生活が出来るかどうか)が芽生える可能性があるということです。また、契約をして、一括払いをしたからと言って、契約した本人の面倒を一から十まで見てくれるわけではありません。契約先も本人が亡くなったという連絡を貰わないと業務を行うことが出来ませんので、死後事務委任とは別に、「見守り契約」を求められることになり、継続的に発生する費用が別に必要となると考えておいた方が良いと思います。また、契約先が、将来倒産したり、事業を止めたりすることもあり得ます。その場合は、先払いした費用はほぼ回収不能ということも起こり得ますし、
新たに、死後事務委任を行ってくれる人を探していかねばなりません。一からやり直しとなってしまうので、時間的・精神的にも負担が大きくなります。それから、死後事務委任契約を契約先が、契約内容に従い業務を履行してくれるかどうかは相手先次第です。勝手に内容を変更することさえあり得ます。(例えば、散骨するという契約をしていても、火葬して、収骨しない。業務完了とした場合でも、チェックする人がいません。)
 二つは、死後事務委任の業務対価を、「遺産精算払い」とする方法です。この方法のメリットは、先払い方式とは違い、契約時に金銭的な負担は少なくて済む点であることです。また、遺産からの精算ということですから、相続する人もしくは、遺言執行を行ってくれる人が、死後事務委任契約の業務完了を見届けてくれるので、契約内容も履行も確実になることが挙げられます。逆にデメリットは、遺言書の作成が絶対的に必要だということで、その場合、推定法定相続人という利害関係者が登場してきます。特に兄弟姉妹等の推定法定相続人にも協力を仰ぐ必要性が出てきますので、面倒だというケースも多々あります。また、これらの人を相続から排除し、自分の財産をどこかに団体や第三者に遺贈するといった場合も遺言を作成して、遺言執行者を選任しておくことも出来ますので、相談者さんの置かれている状況によっては、メリットに代わるかもしれません。この場合でも、死後事務委任の契約先と遺言執行者は同一人物でないことをお薦めします。理由は、一つ目に記した契約内容を本人の死後に勝手に変えても、チェックする人がいないということと同じです。また、別々に考えておくと、一方が何らかの事情で契約履行が出来なくなっても、他方が何とか対処できる可能性も高くなるので、ここは大きなメリットだと考えます。
ここまで記したことでご理解いただけたと思いますが、私のおすすめは【遺産精算方式】です。
死後事務委任契約+遺言を作る方法で、死後の手当をしておくことがベターだと思います。(この場合は、財産を死後事務と遺言執行の費用分は必ず遺しておくことが条件となります。)
さて、ここからは、死に至るまでの不安を任意後見人に代わる手段がないかということです。
まず、解決方法としては、「高齢者の総合相談窓口」として自治体が運営している「地域包括支援センター」に相談することをお薦めします。
ここに相談すれば、凡そ地域福祉権利擁護事業とか社会福祉協議会などの成年後見制度利用支援などを行っている団体に繋いでくれると予想されます。
日常的な相談相手や生活支援なども行っていることも考えられます。成年後見を利用するほどではないけれど、ちょっとしたお手伝いが欲しいとか、介護が必要になった時とか・成年後見人が必要になった場合(本人が、事理弁識能力が低下した場合)にも支援してもらえるので、上手く利用した方が良いです。当然費用負担も弁護士さんに相談するよりも軽減できると思います。
*************************************

このような回答を行ったところ、昨日、ご返信をいただきました。
現状、何でも一人で考えてしまいがちなところに、相談にのってもらったことも感謝とともに、これから、自分の将来を決めていくという決心が綴られていました。
こんなお手紙をいただくと、この仕事をしていて本当に良かったなと思います。
遠い町にお住まいなので、直接的なお手伝いは出来ないけれど、必要があれば、何時でもアドバイスとエールを送り続けたいと思います。

この記事を書いたプロ

神田紀久男

終活や死後事務委任契約に関わるコーディネートのプロ

神田紀久男(株式会社 イフケア北九州)

Share

関連するコラム

神田紀久男プロのコンテンツ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ福岡
  3. 福岡の冠婚葬祭
  4. 福岡の葬儀・斎場
  5. 神田紀久男
  6. コラム一覧
  7. 相談者からの嬉しいお手紙

© My Best Pro