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神田紀久男

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神田紀久男(かんだきくお) / 終活カウンセラー

株式会社 イフケア北九州

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コラム

余命宣告を受けた方の終活

2022年2月18日

テーマ:終活 

コラムカテゴリ:冠婚葬祭

コラムキーワード: エンディングノート遺品整理


先日、終活相談に来られた50代女性のお話をします。
事前の予約時に、「終末期ガンです。終活全般について相談したい」とのメッセージを受けとりました。
死期が近い方と、「死」にまつわる話をすることを想像すると、慎重に話をしないといけないと、覚悟を決めて面談を応じるつもりでした。
相談者は、杖を突かれながら、相談室に入室されましたが、第一声から、とても明るい声で、「こんにちは! 今日はよろしくお願いいたします。」と挨拶をされました。こちらも、慌てて挨拶をしましたが、少し「ホッと」し、普段通りに相談に応じれば良いと感じました。
余命宣告を受けてから、少しづつ身辺整理を進め、先月で働いている会社も休職し、後始末とやり残したことに、時間を使うつもりなのだという話を聞きました。
ご家族は、夫とは離婚して、お子さんが二人いる。死後の準備も長男とは、時々話をするが、「お母さんの思い通りにして、その通りにやるから」と言ってくれるそうです。親子関係も良いとのことですが、親の死を受けとめるためには、心の整理の必要でしょうから、中々細かな相談はしにくいのだと言うことでした。
「具体的には、どんなことが心配ですか?」と私が尋ねました。
「一番の心配は、私の父が亡くなった時の葬儀が、バタバタとして、大変だった。そんなことを、子どもにはさせたくないのです。 でも、今は休職しているけど、勤めている会社の上司や同僚・部下には、私の病状は知っている。その人の中には葬儀の時にはお世話をしていくと言ってくれる人も多いです。でも、私の子どもは、そんな人たちを知らない。だから、私の父の葬儀の時に、私が感じたような想いをさせることになりはしないか心配です。 葬儀をやるとなると、そうなるのは仕方がないことですかね。」という話をされました。
私からは、最近は、コロナ禍で、密を作らないということが社会的に求められ、お葬式の参列者の少ないお葬式が多くなってきていますよ。理由があるから、ご遠慮いただくことも可能なのではないですか。また、相談者ご本人が、自らのどう臨んでいるのかを話をする機会があるわけだから、会社の方とも、もう少し本音トークをされてみては如何ですかと勧めました。
「それって、どうゆうことですか?」と質問がありましたので、こんな説明を行いました。
「今日、貴女が相談予約を入れた段階で、終末期のガンと聞いていました。「もしかすると、物凄い難しい相談になるのではないか。」と思っていました。私から感じることは、「死」が近い方と、死ぬ話をすることになるわけですから、嫌なことを言う奴だと感じるのではないかと思ったからです。でも、貴女と会って、凄くホッとしました。とても話がしやすい方です。そして、何より自分自身で、死に向かって生きていこうとされている様子を聞かせてもらいました。だから、私は普段通りに相談業務が出来ると思い、話をしています。」
「貴女の会社の方も、私と同様に、貴女と「死」について話をすることに遠慮があるのかもしれません。 現役で死を迎えた方に対して、会社の方々も義理立てや誠意・感謝・弔意を表す意味で、葬儀の参列・お手伝いをすることは、普通のことだろうと思います。でも、貴女がそう望んでいないのであれば、そのように本音を伝えてあげれば、それはしっかりと受け止めてくれるのではないでしょうか。今の貴女の様子であれば、しっかりと話が出来るわけですから、話をしてみてはいかがですか。」とアドバイスを送りました。相談者の明るく「そうですね。やってみます。」と言ってくれました。
その他、相続などで、気を付けることなどの質問を受け、アドバイスを送りました。
持ち家の処分をして、資産の現金化をするなど、既に色々と身辺整理を進めているようで、素晴らしい方だなと感じました。
質問も大体終わりかなと思い、「何か他に訊きたいことはありますか?」と尋ねると、少し時間をおいて、「実は、母親には、まだ私の病気のことは、話をしていないのです。やっぱり伝えておいた方が良いですかね。 話がしにくいですよね。 母が泣くことはわかっているから・・・。」と話をされました。
私の心も揺れ動きました。感情も高ぶってきました。涙も出てきました。でも、こう伝えました。
「確かに、難しいことですが、伝えておいた方が良いと思います。一人で話をするのは難しいかもしれません。妹さんがいらっしゃるとのことですから、妹さんとお母さまと一緒に話をされたらどうですか。」と言いました。「やっぱりそうですよね。妹にお手伝ってもらうのは良いアイデアですね。妹に話をします。」「今日は、来てよかった。何か心に中にあった、つっかえ棒が取れたように気分です。有難うございました。」と言ってもらいました。

とても素敵な女性でした。話相手に対しても、気兼ねなくお話をさせてくれる雰囲気をお持ちですし、何より、死というあまり考えたくないことをしっかりと受け止め、それに向かって生きていこうという考えを持っていることが凄い方だと思いました。でも、そんな素敵な方でも、話がしにくい相手はいる。それは、家族だということなのかもしれません。終活において、家族関係は、非常にセンシティブな話であることを、再認識させてもらいました。

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神田紀久男

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