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有松太(ありまつふとし) / 司法書士

司法書士有松太事務所

コラム

相続登記の義務化等の法律についての現時点での誤解

2021年4月29日

テーマ:相続

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き不動産相続 手続き土地登記 変更

 去る4月20日だったと思いますが、国会で相続登記の義務化等を内容とする民法・不動産登記法等の改正法案が成立しました。
 翌日には新聞等にもかなり大きく報道されたのでご存じの方も多いのではと思います。
私の所属する福岡県司法書士会でも総合相談センターという部署があり、この法律に関する相談が一気に増えたとの話を耳にしています。

 まだ成立したばかりで六法にも載っていない法律ですから、私自身まだ司法書士会から配布された資料くらいしか目を通していないのですが、報道を見ただけではかなり誤解をされるのではないかという情報が飛び交っている印象を受けましたので、詳しい話は横に置いて、とりあえず誤解の多い情報の何点かだけはこのコラムでお知らせしておきたいと思います。


誤解1 今すぐ相続登記をしないと罰金(過料)が科される

 「法律ができたんだから、これからは罰金が掛かるんだ!」と思われるのはもっともですしそのとおりなのですが、その「これから」の“これ”というのが、いつなのかというのが問題でして、この法律は成立はしましたが、現時点ではまだ施行されていません。
 つまり、この相続登記義務化という制度は完成はしましたが、まだスタートしていないんです。
 一応、施行は成立後3年以内とされていて、正確な施行日はまだ決まっていません。
もうスタートすることは決まっていることなので「慌てる必要はない」とは言いませんが、今日から罰金が掛かるわけではありません。
 ただし、通常、相続というのは被相続人が亡くなった時点を基準としますが、この相続登記義務化の制度はスタートしたら施行日より前に被相続人が亡くなった相続についても適用があるのでその点は注意が必要かも知れません。

誤解2 制度がスタートしたら知らないうちに罰金(過料)がかかる

 相続登記を行わずに過料が科されるのは、法文を使うと難しくなりますので少し簡単に書きますが、「自分が相続登記をする立場にあると“知った”ときから“正当な理由なく”3年以内に相続登記を申請しなかった」場合です。
 じゃあ、その「知った」とか「正当な理由がない」とかどういう風に判断するのかは、まだ正式には決まっていませんので施行までに変わるかも知れませんが、今のところ考えられているのはそういう長期に相続登記をしていない土地を法務局が発見したら、相続登記をするように相続人に催促をする運用をする予定だと言われています。
 催促されたことで「知った」ことになりますからね。
 「正当な理由」は、その催促によって相続人がどういうアクションを起こすのかという問題だということでしょう。

誤解3 相続登記が簡単に申請できるようになる

 結構大きな誤解として飛び交っている情報だと思います。
 これは、何らかの事情で相続登記ができない場合に、法務局に自分が名義人の戸籍上の相続人であることを申し出ることでそのような申し出があったことが登記されて過料は免除される制度のことを指しているのだと思います。
 しかし、これは相続登記ではありませんし所有権の名義が変わるわけでもありません。
 なので、この手続をもって自分の名義になるわけでもありませんので、その土地を売却等をしようと思えば、あらためて正式な相続登記を行う必要があると思います。
 しかも、この申出を行えば、名義とは違う形で自分の名前が登記されると思いますので、登記簿謄本を見た人は、「この人がこの不動産に関する連絡窓口なんだ」と考えると思います。
 それが、メリットなのかデメリットなのかはわかりませんが。

誤解(?)4 相続した土地の所有権を放棄できるようになった

 これは誤解ではありませんが、放棄するためにはかなり厳しい要件があり、簡単にできるものではないようです。
 今わかっている範囲の要件としては、
・相続により取得した土地で
・建物の乗っていない更地で
・担保権等の余計な権利が付いていなくて
・土壌汚染がなくて
・境界がハッキリして争いもなくて
・向こう10年間の管理費を国に納める
 これくらいあるらしいです。他にも細かい要件が色々あるらしいですが、ちょっとそれはまだ読めていないです。
 ただ、無事に相続ができた土地でこれくらいの要件を満たすのなら、10年間の管理費を納めるより普通に売却するんじゃないでしょうかね。

誤解(?)5 相続登記だけが義務化された

 これは誤解と言うより、報道であまり大きく取り上げていないようなのですが、相続登記だけではなくもう一つ義務化された登記があります。
 それが、所有権の名義人の氏名(名称)や住所の変更登記です。
 要は、引っ越して住民票を移したり、ご結婚や養子縁組などでお名前が変わったときに、不動産の登記の名義は自動的には変更されず、別途法務局に変更の登記申請する必要があったのですが、これも変更から2年以内に申請しないと過料が課されるという形で義務化されました。
 これについては、相続のように“起こったこと”ではなく、自分で“行ったこと”なので、「知ったとき」とか「正当な理由なく」とかの条件は付きません。
 ただし、DV被害者等、プライバシー保護の必要性のある方については、保護のためのなんらかの制度が設けられる予定だそうです。


 今回の法改正は他にも色々あるのですが、とりあえず、第一報が報道されて私の感覚で誤解が生じているのではないかと思われるのはこんな感じです。
 国民に新しい義務を課しているという点ではすごい大改正なのですが、少なくとも国民に理不尽な負担は課さないような制度にするための運用を作るために空けた施行までの3年間だと思いますので、不確定な情報で右往左往するよりは、確実な情報を見つけながら、どういう対応をするか3年間じっくり考えて準備する方が賢明ではと思っています。

 もちろん、この相続登記義務化とは関係なく、個々の相続の関係者の事情で一刻も早く解決しないといけない事案も、ものすごくたくさんあるとは思いますけどね。

 本当に久しぶりのコラムで長文になってしまいました。
 最後まで読んでいただいてありがとうございました。

この記事を書いたプロ

有松太

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有松太(司法書士有松太事務所)

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