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コラム

現場での事件簿 / 経営コンサルタント

2010年12月3日

コラムカテゴリ:ビジネス


建設会社にバブル時代以前に購入した土地があった。
売り上げも落ち込み、借入金も増加傾向にあり、毎年のような赤字の決算である。

また資金繰りが厳しい。
緊急保証制度で数千万の借り入れをして1年弱。
金融機関も工事担保以外の融資以外は難しいという返答。

3年も前から売却を検討している土地を手放そうと・・・
2億円以上で20年以上前に先代の社長が購入をしたものだが・・・
同じメインバンクの関係で隣接の医療法人が1億5千万での購入を希望している。

それでは売却損が出てしまい、純資産がマイナスギリギリ、
債務超過の査定結果がでてしまう可能性もあったので売却を保留にしていた。
メインバンクのA支店長も同様な意見であった。

借りられないなら、売るしかない、ということでメインバンクさんに話の仲介を依頼。
売るとなったなら、医療法人の理事長から1億2千万円の回答。

「そんな金額では・・・」売れないと思っていたら、
「他に買ってくれる人もいないのだから、この機会に売却をした方が良いですよ。」
そんな答えが返ってきたのである。

それでは売却をできない、売りたくないと言ったなら、
「手形貸し付けの書き換え更新をしませんよ!」
そんな返事がA支店長から返ってきたのである。

おかしいのである。
農業関係の規制で医療法人の隣で建物が建てられるのは建設会社の保有の土地のみである。

こんな内容の相談を社長の奥さんから受けることに・・・
社長は生粋のお坊ちゃんで一人っ子、おまけに苦労も経営も知らずに実家に就職。
営業力も社交性もなく、社員の悪口をブツブツ言って、会社でずーっと座っているタイプである。
銀行のA支店長と互角に話せるような器ではない。

相手の情報も調べた。
・医療法人の経営は順調である。
・老人関係の施設の計画を考えている。
・隣接の土地しか建物が建たないことも知っている。
・ケチである。
・先生という存在である、つまり上から目線である。

なんのことはない。
売りに来たので買いたたきを考えたのである。
そこに本店幹部も力を貸して、足元をみてきたのである。

汚いようにも思うが、ビジネスである。
どちらが大切なお客様で、どちらが確実なお客様で、どちらが安心なお客様か・・・

建設会社の社長もプライドだけは高いので、そんな金額では売らないと、
聞いている奥さんと私に吠えるだけ・・・
銀行の支店長に脅されて、本心はビビリまくりである。

この社長はどうなってもいいかとも思ったが、奥さんの親戚の方に頼まれたのでなんとかせねばならず、
いろんな知恵を絞り戦略を練り実行に移すことに・・・

ちょうどいいことに・・・
手形の不渡りになりそうだった会社を助けたことがあり、そこの建材会社も同じメインバンク。
土地もマンションも持っており、不動産投資の目は確かである。

見てもらうと、1億4千万くらいなら購入OKという返事である。
道路のバイパス工事も調べており、5~10年後には2億以上になると読んだ様子。

ここからが違うのである。
2千万高い売却金額だから売るというのではない。
建材会社の社長にひと肌を脱いでもらうのである。

メインバンクの営業店のB支店長を会社に呼んでもらい、
この土地を1億8千万円で購入をしたいので来月に融資をしていただきたいと・・・
当然、B支店長は喜んで本店に報告をするのである。
A支店長と本店幹部の計画を知らないのであるから・・・・

建材会社の経営はボツボツであるが・・・
従業員の給料くらいは賃貸収入で払えるような会社である。
決断も早いが気も短い、なぜだか信用をしていただき今も私と食事をする中である。
メインバンクの前任の支店長が怒らせてしまい、支店長は半年で転勤、取締役の謝罪の経緯もある。
今でも頭取の新年あいさつ訪問がある会社である。

慌てたのはA支店長と取締役。
どうも取締役が1億2千万で購入が可能だと理事長に返事をしていた様子。
理事長に怒られる、とんでもなく怒られる、でもそこにしか建物が建つ土地がない。

そうしたら・・・
1週間で、2年間売れなくて1億2千万円まで落ちていた売却価格が、
1ヶ月後に1億8千万円で医療法人が購入をする結末に・・・

建材会社の社長にも取締役が謝罪というか・・・
嘘の言い訳をする羽目に・・・

建設会社の資金繰りは救われた。
債務超過にならずに終わった。
利息の支払いも軽くなったので、少し経営内容は改善された。

奥さんには心からお礼を言ってもらった。
社長からは一言もお礼の言葉すらもなかった。
2億でも売れたのでは? そんなことを言っている人なので・・・
こんな社長だと思ってあきらめることにした。

建材会社の社長には「貸しだぞ!」
何かあったらまた会社を助けに来てくれよ・・・
そう笑って念押しをされて・・・

銀行が悪いのではない。
少しの悪いは感じられるが・・・
誰が悪いって社長が悪いのである。

ビジネスである。
どちらが大切なお客様か???

銀行の支店長の発言や態度が突然に変わったら・・・
そこには何かしらの本店からの指示が存在するということである。

机上の空論ではない、それでは解決できない。
現場で起こるいろんな問題であり、知恵や人脈で解決をしなければならない事例である。

数字の話ではない。
だから、経営コンサルタントの仕事ではないという意見もあるであろう。

しかし、これが現場での経営コンサルタントの仕事である。

この記事を書いたプロ

網師本大地

現場第一主義を貫く中小企業再生のプロ

網師本大地(DSKプランニング)

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