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コラム

所有者不明不動産問題を踏まえた民法・不動産登記法の改正案について

2021年2月21日

テーマ:遺産相続

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 不動産管理

所有者不明の不動産が増加し、周辺住民に危険を及ぼすような事態が生じていてもなかなか私権に踏み込めず、周辺住民や自治体が苦労しているというニュースをよく見かけていましたが、このほど法制審議会がその状況を踏まえた改正要綱案をまとめました。
現在開会中の通常国会で審議される予定なので、その内容をかいつまんでご紹介します。

第1章民法の改正内容
従来、隣地の利用を規定した相隣関係や、共有者相互の権利義務を規定していたのですが、そもそも隣地の所有者がどこの誰だか分からないとか、共有者のうちの誰かが相続発生によって結局誰の所有になったのかわからない、というような事態は想定されていませんでした。ほとんどが農地で、隣の地主が誰かわからないという事態など想定できないような時代に制定された民法ですから、無理もありません。
しかし、現在発生している所有者不明不動産問題に対処するには、この様な場合でも周辺住民の救済措置を用意しておく必要があります。
そこで、
1.民法209条、233条の相隣関係では、隣地から伸びてきた枝の切り取りについて、「竹木の所有者を知ることができないとき・所在がしれないとき」は、土地の所有者に切除権を認めるほか、必要があれば隣地への立ち入りも可能とします。
2.共有物の変更処分に関して民法251条は、共有者全員の同意を要するとしていましたが、「共有者を知ることができず・又はその所在を知ることができないとき」は、裁判で変更処分ができるようにします。
3.共有物の管理に関する民法252条では、共有者不明・所在不明の事態に備えて、裁判での管理行為ができるようにします。
4.所在等不明の共有者がいる場合には、他の共有者は裁判でその持分を取得することができるようになります。
 
次に、所有者不明の不動産に的を絞った規定が置かれます。
5.所有者不明不動産について、裁判所は利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人もしくは所有者不明建物管理人を置くことができるようになります。
6.土地建物の管理に不全がある場合、裁判所は利害関係人の請求により、管理不全土地管理命令もしくは管理不全建物管理命令を発することができるようになります。
 
最後に、所有者不明不動産の多くが遺産相続によって発生していることから
7.相続開始から10年を経過すると、特別受益や寄与分という相続分算定上の規定が適用できなくなります。
8.遺産分割禁止期間を10年以上は設定できなくします。

第2章不動産登記法の改正内容
所有者不明不動産問題の多くが相続登記未済に起因しているところから、今回の改正はむしろ不動産登記法の改正が主軸となっています。
従来、表示の登記には登記申請義務がありましたが、権利の登記は私的自治の観点から当事者主義が採られ、権利を取得した者が必要と思わなければ登記をする必要はありませんでした。売買に伴う所有権移転登記、担保権設定のための設定登記などは必要に迫られて当然のようになされますが、相続登記は当面処分の予定がなければ放置される事例もまれではありませんでした。
しかし、このような慣習をそのままにしておくと、世代交代・親族関係の希薄化が生じ、いざ相続登記をしようと思っても遺産分割協議の当事者が誰でどこにいるのかすらわからない、会ったこともないので遺産分割協議が進まないという事態が生じます。
そこで、
1.不動産登記名義人に相続の開始があったら3年以内に相続登記の申請が義務付けられることになります。
2.これには罰則があり、申請義務がある者が申請しない場合には、10万円の過料に処せられます。
3.ただ、3年以内に遺産分割協議が終了するとは限らないので、代替措置として、
「相続人申告登記」という登記が新設されます。これは、相続の開始と自分が相続人の一人であることを申告する暫定措置で、この申告後3年以内に遺産分割の結果を踏まえた登記をすることになります。
4.相続人に対する遺贈の登記を簡略化するため、受遺者が単独申請できるようになります。
5.共同相続登記がなされた後に遺産分割協議がなされて持分移転登記が必要になる場合に備えて、登記権利者単独による更正登記ができるようになります。
6.登記官は。登記名義人の相続が開始した事実を認識した際には、登記簿上にその表示ができることになります。
これは、「相続開始の情報が認識されているのに相続登記ないし相続人申告登記がなされていない不動産を洗い出すための施策と考えられます。
この6、の規定は後でも出てきますが、登記名義人の相続開始や住所氏名変更について、
登記官が住民基本台帳等の情報ネットワークから情報取得することを選定とした規定で、個人情報保護等の観点で今後の議論があるものと予想されます。

 次に、現在でもよく見かける事例ですが、権利取得の際には所有権移転登記をしたけれど、その後引っ越したりあるいは結婚して氏名が変わっても、変更登記をしていないことも、所有者の所在が不明になる要因です。
 そこで、
1.登記名義人の住所氏名が変わった場合は、2年以内の変更登記を申請する必要があります。
2.これにも罰則がついており、違反すると5万円の過料が科されます。
3.登記官は、住所氏名の変更事実を認識した際には、職権で住所氏名の変更登記ができるようになります。ただし個人については申し出がある場合に限られます。
〇 不動産登記名義人の相続開始や住所移転、改姓名を登記官が正確に認識するためには、登記官が住基ネットワークから情報を取得する必要があります。
 このため、所有権登記名義人は登記官に対して、検索用の情報として生年月日を提供しなければなりません。
 この規定に関しては、個人情報保護との兼ね合いで、十分な議論を要します。

 次に、登記義務者の所在が知れなくなった場合の規定として、
1.担保権以外の物権の抹消登記において登記義務者の所在が知れない場合には、
公示催告手続の要件を緩和する。
2.買戻し特約登記について契約から10年以上経過している場合は登記権利者による単独抹消を可能にする。
3.解散した法人の担保権について、弁済期から30年以上経過していれば登記権利者による単独抹消を可能にする。

 最後の見直しとして
1.法人が登記名義人になる場合は、会社法人等番号を登記事項とする。
2.外国に住所を有する登記名義人については、国内連絡先を登記事項とする。
3.登記事項証明情報の住所情報に関してDV被害者等からの申し出による代替記載
を可能にする。

最後の規定で個人情報保護にも一定の配慮がなされていることが窺えますが、所有者不明不動産という問題を解決する手段として、登記名義人の個人情報を法務局がどこまで把握すべきは、十分に慎重審議されるべきと考えます。
                               以上

この記事を書いたプロ

大原秀

成年後見制度に関わる業務を得意とする司法書士

大原秀(大原司法書士事務所)

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