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小川哲也

借地権・底地の問題や投資物件の評価に強い不動産鑑定士

小川哲也(おがわてつや) / 不動産鑑定士

おがわアセットカウンセル株式会社

コラム

AIによって日本の街が変わるかも?~WeWorkがもたらす日本の不動産変革

2018年9月7日 公開 / 2021年1月4日更新

テーマ:不動産全般

コラムカテゴリ:住宅・建物

夏休みから随分過ぎてご無沙汰しております。
この夏は豪雨や台風、地震等、本当に災害が多い夏でした。日本の街づくりには災害対策が急務であると強く感じます。



さて、全くお話が変わって、今回のお題は、「AIによって日本の街が変わるかも?」というものです。
先日、ARESマスター(不動産証券化協会)継続教育の「技術革新による不動産ビジネスの将来」というセミナーを受けてきました。
みなさんも、AIとか不動産テックとか、スマートシティとか、言葉は知っていても何かモヤモヤしていて分からない感じがしていると思います。
私も不動産の専門家ながら、不動産テックと言われても具体的に何がどうなるのかよく分かっていません。

先日、IoTを活用したアパート経営サービスを提供すると言われる上場企業の株式会社TARERUが、融資審査の書類を改ざんしたニュースが駆け巡りました。この会社は創業12年余りで東証1部上場となった凄い企業で、先端技術を取り入れて不動産業界の革命児と言われています。
そんな先端企業でもこうしたズルをやっているのかとちょっと残念ではありますが、ただ、だからといってAIやIoTが不動産業界に与える影響が小さくなったわけではありません。

話を元に戻すと、先日セミナーを受けたわけですが、恥ずかしながら受けてもまだよく分かりません。何か凄いことになりそうだなくらいのことは感じましたが。

そんなレベルの私ではございますが、モヤモヤした中でほんの少しイメージできた部分もありましたので、拙いながら報告させて頂きます。


不動産ビジネスのプラットフォーム化??



自分たちの生活を振り返ってみれば、スマホが出たのが約10年前。そして今やスマホがあれば何でも買えて、お店で決済もできて、ホテルが予約でき、電車やバスや飛行機も乗れて、タクシーも呼べる。最近では家電を遠隔で動かしたり、家の鍵もこれで管理できる等10年前には予想できなかった世の中になっています。
スマホが出た当初は、フェイスブックやツイッターがやりやすい程度のことしか感じませんでした。しかし、現在はみなさんが使っているアマゾンやGoogleも日々進化してきており、Googleのサービスなんかは難しくてよく分からないのが結構あります。
また、日本でも最近、若い女優さんとのインスタ等で話題を振りまいている方が社長のZOZOTOWNもいつの間にかあんなに大きな企業になっていたという印象があります。

よく分かっていないのですが、重要なのはプラットホーム化らしいです。
プラットホームは駅で電車を待つ場所ですが、ネットの世界で言えば、ビジネスの基礎となるものらしいです。簡単に言えば人が集まる場所でしょうか?
具体的にはGoogleやアマゾン、楽天やZOZO等、既に私たちの生活に多く入り込んでいますね。
これが不動産ビジネスの分野にも今後は浸透するらしいのです。
先日、シェアオフィスやコワーキングスペースの話を書きました。その中で「WeWork」という米国企業が今年から日本に参入したことに少し触れました。

どうもこの会社がすごい会社のようなのです。


WeWorkが不動産ビジネスを変える??





基本的には、コワーキングスペースを展開する会社で、2010年に設立、現在は全世界に253拠点のコワーキングスペースを有し、日本では今年からソフトバンクグループと50%づつ出資して日本法人を立ち上げ、既に6拠点を運営しています。

WeWorkはオフィスをITプラットフォーム化しているそうです。
コミュニティプラットフォームとして、同社の会員同士のコミュニティーサービスを構築するものや、業務サービスプラットフォームとして、WeWorkサービスストアで100以上の企業が250以上のソフトやサービスを提供し、企業の成長ステージに合わせた活用が出来るもの等があるそうです。
また、テクノロジー・データの活用として、テクノロジーとデータを活用して利用者の生産性を高めるサービスもあるとのこと。

なんか、日本のコワーキングスペースとは行き着く先が違うなと感じます。
相変わらず専門的なことはチンプンカンプンですが、このコミュニティープラットフォームというのは、従来のオフィス業には無い発想ですし、あっても小規模ベンチャー企業等が利用するようなイメージですが、WeWorkでは大企業でも対応できるように進化中とのことなので、近い将来は、大企業の本社機能、コワーキングスペースも全てWeWorkが一括してサービスするような事例も出てくる可能性が高いです。

また、各企業の総務がそれぞれ不動産戦略について検討したところで、WeWorkのデータやノウハウには歯が立ちませんし、そもそもWeWorkに一括して依頼した方が相当なコストダウンになるようです。
そうしますと、日本のオフィス業は脅威に感じるでしょうし、WeWorkが住宅等にも進出する可能性も否定できません。

オフィスが単なるハコモノではなく、経営効率化やマーケティング等のソフトウエアも付いてサービスされる時代が到来したとも言えます。
仮に住宅についてもサービスが始まれば、住民間のコミュニティーが形成され、他の街で既に成果のあるソフトウエアやデータを利用して、様々な交流や防災ネットワーク等、新しい街づくりにも発展する可能性があると感じます。

既にGoogleがカナダのトロントでスマートシティに参入しているという話もありました。
現金を持たず、車も自動運転で、生活に必要な全ての施設が整備され、ロボットによるデリバリーシステムが構築され、再生可能エネルギーで熱源を供給するような街が実際に開発されようとしています。
近い将来、この波は日本にも波及するでしょうし、10年後、我々の不動産に対する概念が変化している可能性も十分にあると感じます。


賃料の中身も変わってくる



小さい話で恐縮ですが、そんな進化の波で、不動産評価も同時並行的に進化していかないと世の中から淘汰されるか、AIで代用される時代になってしまうかもしれません。

そもそも、「賃料」の概念が消える可能性もあります。
当然、不動産の純粋な価値は無くならないのですが、その上に乗っている付加価値の方が価値が高いなんていうこともあり、ユーザーが支払う金額のうち、どこまでが不動産の価値なのか否かを判断しなければ、純粋な不動産としての賃料が出てこない可能性があります。この賃料の概念については、別なセミナーの先生がショッピングセンターにおいてテナントが支払う賃料について指摘されていました。テナントが享受できる様々なサービスの対価として「賃料」として支払っており、その賃料は全てが不動産の価値ではなくなっているというわけです。


夢を持つことも必要


昨今、人口減少や空家、所有者不明不動産、限界集落等、日本の街が衰退する話題が多いのですが、コンパクトシティーやAIを絡めたスマートシティー等によって、いい方向に変化する可能性も残っていると思います。ただ、一つ気がかりなのは、日本人独特の不動産文化と申しましょうか、土地を所有することに拘るとなかなか時流に乗れないのかなとも感じます。



わが柏市でも三井不動産が柏の葉キャンパス駅周辺でスマートシティの取り組みを行っています。こちらは公・民・学の連携をキーワードに新しい街づくりを行っており、アカデミックな面も取り入れて興味深いです。また、2018年5月に策定された三井不動産の長期経営計画の中で、主要な取り組みの一つとして、不動産テック活用によるビジネスモデルの革新が挙げられています。日本一の不動産会社が宣言しているわけですから、必然的に日本の街も変化する予感がしますね。
そういえば、私は幼少期に未来の街みたいな絵をよく描いていた記憶があります。かなり稚拙ではありますが、そんな淡い夢をいつまでも持てる世の中がいいなと考えています。

私のようなアナログ人間でもより快適に仕事や生活ができる送れるスマートシティが出来ることを期待しつつ、情勢を見守っていきたいと思います

この記事を書いたプロ

小川哲也

借地権・底地の問題や投資物件の評価に強い不動産鑑定士

小川哲也(おがわアセットカウンセル株式会社)

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