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小川哲也

借地権・底地の問題や投資物件の評価に強い不動産鑑定士

小川哲也(おがわてつや) / 不動産鑑定士

おがわアセットカウンセル株式会社

コラム

怖い不動産コンサルタントの一例

2017年11月21日

テーマ:不動産コンサルティング

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 投資信託

今日は不動産コンサルティングの件で、たまたまお問合せを頂いたことにインパクトを受けてしまったため、不動産コンサルティングについて少し考えてみたいと思います。




不動産コンサルタントの種類


不動産コンサルティングを行うコンサルタントは、その出身によってベースが違います。なぜなら、いきなり何の経験もなく不動産のコンサルティングを行うことは難しいため、不動産に関連する何らかの経験を積んでコンサルタントになることが通例だからです。概ね、以下のようなコンサルタントに分類できるかと思います。
・不動産仲介やデベロッパー出身のコンサルタント。
・不動産鑑定士がコンサルを行う会社。
・会計事務所系の不動産コンサルタント会社。
・建築士の不動産コンサル。
・ハウスメーカーやビルダーによる不動産コンサル。
大きく分けるとこんな感じでしょうか。資格的には、宅地建物取引士、不動産鑑定士、建築士、税理士、公認不動産コンサルティングマスター、不動産カウンセラー、マンション管理士等の資格者が会社内にいることが殆どだと思います。

それぞれはそのベースが違いますので、強味弱みが存在しています。
例えば、会計事務所系は税金に強いですし、不動産会社系は取引や開発に強いですし、不動産鑑定士は価格査定に強いです。

ただ、悪く言いますとそれぞれ表の顔と裏の顔があり、単純にコンサルティングフィーだけで収入を得ているところは少ないと言えると思います。

仲介手数料を取りたい、建物を建築させたい、鑑定評価を取りたい、税務申告を請け負いたい。。。
それぞれの思惑があるのが不動産コンサルティングの実態になっています。
しかし、その思惑があっても、依頼者にとって有益なことも多くあるので、依頼者ファースト的なポリシーがあれば何も問題が無いと考えます。
問題なのは、あまりにも業者ファースト的な考えでコンサルティングを進めているコンサルタントもいるということです。




リスクの高いコンサルティングの一例


前置きが長くなりましたが、先日の問い合わせは、凄い提案を某不動産コンサルタント会社から受けて悩まれている方からのものでした。その概要を聞くと、どう見てもハイリスクなものでありました。
その不動産コンサルタント会社は、相続のセミナーを頻繁に行っており、セミナー参加者へ営業をかけ、案件の受託をするという流れでお仕事をされているようです。
私も案件獲得のためにセミナーを開催するので、特にその面でコメントすべき立場ではないですが、セミナーの数が半端ではなく、逆に「凄いな」を感じてしまうくらいでした。
事務所も弊所よりも立派なビルに入っており、信用度からすれば負けているかな?とさえ思えます。

ご相談者様の内容と不動産コンサルタント会社が提案した概要は以下の通りです。
・物件の所在:某市のJR駅から10分くらいの住宅地
・地積約50坪
・過去に隣地の一部を買い足した経緯があり、その際に敷地内に一部他人地が介在してしまった。
・現況は更地で、隣地(介在する敷地の所有者)は古い戸建に老人が住んでいる。
・相談者は、将来の相続に備えてどうすべきか悩んでいる。

まず、ここで一番大切なのは、他人地が介在してしまっているために、土地を一体的に使うことが出来ない状態であることを解消することになります。
これは、隣地の方から買い上げるしかありません。
幸い、隣地にとっても、その土地が無くても特に建築許可等に影響はありませんので、きちんとした手順を踏んで交渉すれば、売って頂けるように感じました。
不動産コンサルタント会社もそれは当然のごとく提案したようです。

仮に売って頂ければ、敷地を一体で使用できるので、戸建なり小さいアパートくらいは建てられる状態になります。

そこで某不動産コンサルタントさんは、以下のような提案を致しました。
まず、介在している他人地部分を買い取る。測量もきちんとやって境界を確定する。
買い取っても50坪しかなく、アパートやマンションを建てるには小さいので、隣地も丸ごと買い取る交渉する。
いわゆる地上げした後は、賃貸の一戸建てを2棟建てて運営する。(そのエリアはアパートの供給が多いため)

これってどうなのでしょうか?
隣地はご老人がお住まいですから、マンションや老人施設等に移転をご希望されているかもしれませんので地上げは上手くいく可能性はあります。しかし、本当のところは、不動産コンサルタント会社は不動産業者でもあるので、仲介手数料を両手で受け取って、建築施工業者からもマージンも取るという美味しい案件にしようとしているのではないでしょうか。

確かに、付近の状況としてアパート等は供給過剰な状態です。しかし、そもそも戸建賃貸のマーケットはなかなか見えづらく、テナントが少ないため稼働率も不安定になりがちです。
賃料単価的にも、賃貸面積が大きくなるために、アパートやマンションに比べると低くなる傾向があります。
勉強不足なのかもしれませんが、私は賃貸向けに戸建住宅を建設するという発想がありません。まだシェアハウス等でしたら分かる気もするのですが・・・

ご相談者様は土地を所有しておられますが、資金はそれ程なく、この計画を実行するためにはローンを使うとのことです。ローンで隣地と戸建2棟分の建築費を支払っていかねばなりません。

私がご相談を受けた際には、収支のシミュレーション等の提示も無かったようです。
アパートが多いから戸建賃貸がいいんじゃない?みないなノリなのでしょうか。。。。

これが本当の不動産コンサルタントなのだとしたら、私は不動産コンサルタントにはなれませんね。確かに借金があれば相続財産から控除できますし、賃貸物件でしたらその土地の相続税評価は減額されます。もし稼働が安定していれば、賃料収入でローンの返済もできますし、若干は収益が残りますから、生活の足しにもなるかもしれません。

しかし、不動産はそんなに上手くいくことばかりではありません。

逆のシナリオですと、戸建賃貸の稼働が悪く、下手をすると年間平均稼働が50%程度になる可能性もあります。また、年々建物は古くなりますので、賃料も徐々に下がっていく可能性もあります。

下手をするとローンで赤字が出る可能性も高いです。最悪、ローンも払えなくなってしまい、デフォルトする可能性だってあります。

もともと持っていた50坪の土地も無くなってしまったなんてことになるかもしれません。

私はその不動産コンサルタント会社の営業を妨害する訳にはいかないので、「やめたほうがいいですよ」とは言いませんでした。ただ、上記のようなリスクは説明致しました。それでもやりたいということであれば、私には止める権利はございません。

確かに、リスクを説明してその計画を提案するのであれば、私は何も申し上げることはございません。しかし、そのご相談者様はリスクを把握はしていませんでした。

では、私ならどう提案するか。

私の提案としては、まず介在している他人地を買う努力をして頂き、その後、一体となった敷地は売ることをお勧めします。

ご相談者様は別に家を所有されていますし、その土地に思い入れはあるかもしれませんが、絶対必要な土地でもありません。
確かに、もう少し規模が大きければアパートかマンションを建てることも考えられますが、供給が過剰ですし、駅まで10分のエリアでも賃貸の客付けは厳しくなっているため、やはり賃貸物件の新築はリスクが高いと言わざるを得ません。

もちろん、リスクが低めであると分析できれば、賃貸物件を新築することをご提案するかもしれません。しかし、対象地はそうではない立地ですし、自用の戸建用地としての利用が最有効使用ということになります。

無理やり所有地に何かを建てるなら、そこを売って、その資金で不動産投資信託やクラウドファンディングの不動産小口化商品、J-REIT株を買う等した方がよろしいかと思います。

もちろん、相続の際は不動産としての優遇が無くなってしまいますが、税金とローンとどちらが高いですか?と聞きたくなりますし、リスクの面からその方が賢明に感じます。

私の提案はある意味つまらないですが、五分五分で失敗する確率のある不動産投資は、一般の方には薦めたくはありません。せめて7~8割方の安心を担保したいです。

たまたまお問合せを頂いた話ですが、少し衝撃を受けてしまったお話でした。

さて、我にかえって自分はどうなのか。

私は不動産鑑定士ですから、鑑定評価や意見書を取って頂きたい思惑をもっています。
ですが、それらを取っても意味がない場合も多く見受けられます。
そのような場合も説明させて頂き、もしその上でご相談されたい場合の方のみに相談料を頂いてご相談を承っております。

ある意味、リスクの高いご提案は出来ませんが、間違いの少ないご提案は出来ると考えております。
よろしければ下記をご覧ください。

http://ogawa-asset.com/

この記事を書いたプロ

小川哲也

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小川哲也(おがわアセットカウンセル株式会社)

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