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  1. 要配慮者(障害者・高齢者など)は、積極的な避難行動要支援者名簿への登録、個別(避難)計画作成、防災訓練参加の行動を
児玉 猛

防災士の資格を持つ「防災・減災」の行動計画の専門家

児玉 猛(こだまたけし) / 防災・減災のコンサルタント

初動プロセスマネジメント

コラム

要配慮者(障害者・高齢者など)は、積極的な避難行動要支援者名簿への登録、個別(避難)計画作成、防災訓練参加の行動を

2020年7月27日 公開 / 2020年7月30日更新

テーマ:防災学習・訓練

コラムカテゴリ:くらし

はじめに

 令和2年7月豪雨により、熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」で80歳代から90歳代の方々が亡くなられました。過去には、平成28年夏の台風10号の豪雨災害により、岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽ん楽ん」で入所者全員9名の方々が亡くなられました。高齢者施設に入所しているので、職員の方々が避難行動支援をしてくれるだろうという安心感を改める必要があると思います。ましてや、入所者以外の方であれば、もっと深刻となります。そこで、本コラムは、行政が公表している要配慮者の避難行動支援などのガイドラインについて、現状・課題などを挙げ、要配慮者は、自ら、家族、親戚、知人他の支援を得て、災害リスクを回避するための平常時の備え、個別(避難)計画作成、避難訓練などに積極的に取り組むことが必要であることをご理解いただきたいと思います。

1.国のガイドラインの公表状況

 国は、「災害時要配慮者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月)を市町村に周知してきましたが、平成23年の東日本大震災において、被害者全体の死者数の内、65歳以上の高齢者の死者数が約6割、障害者の死亡率は、被災住民全体の死亡率の約2倍に上りました。(「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」平成25年8月内閣府防災担当(以下、「取組指針」))
 要配慮者本人が、避難行動に支援者が必要であることを認めてもらうためには、国も市町村も注力しているのが、「避難行動要支援者名簿」への登録です。これは、要配慮者の方が、積極的に「手を挙げる」ことで、行政との関係構築の第一歩となります。
 特に、「取組指針」では、「さらなる避難行動支援に取り組みべき事項」(以下、「取り組むべき事項」)の内容は、以下の通りです。

さらなる避難行動支援事項

 要配慮者の個々の状況における個別(避難)計画、共助としての避難行動支援を挙げており、「避難行動支援者名簿」、「安否確認」、「情報提供」の基本事項だけではなく、具体的にどのような立退き避難を実行させるか重視していると思います。
 そのために、個別(避難)計画ですが、個別計画の様式(例3)を提示しています。

個別計画要例3

 要配慮者の症状を正確に伝えること、普段は、どの部屋で過ごしているのか、避難支援者の情報は2名記載などですが、現実的には、何人が必要(車いす利用の有無)であるかなど、避難情報については、分散避難が言われ始めているので、親戚、知人宅、宿泊施設なども考える必要があります。
 国は、「取り組むべき事項」の周知徹底を推進していますが、現状は、市長村によって、進んでいるところと遅れているところがあります。

2.課題

 自治体側の事例として、「避難行動要支援者の避難行動支援に関する事例集」(平成29年3月内閣府 防災担当)を参考資料として紹介します。

2.1 自治体側の課題の事例

 課題の分類は、「安否」、「避難」、「情報」、「その他」に区分されています。

災害時要配慮者への支援自治体事例課題

 災害が発生すると職員は多忙となり、支援者側も被災される方がいるとうことであり、いざとなれば、埼玉県N市の事例にあるように、「要支援者が各自必要に応じて避難を行った」という事例もあります。

2.2 要配慮者の意識

 要配慮者側の防災に関する意識を確認してみます。NHKハートネットの「障害者と防災」に関するアンケート結果(災害時に支援を必要とする在宅の障害者・高齢者を対象に、日本障害フォーラム(JDF)とNHKが共同、調査期間2015年12月28日から2016年2月10日、回答者数1,809人)を参考にします。

当事者属性と防災用語の認識NHK
 障害者が、自ら回答されていることが重要です。結果ですが、本人自身に係わる防災用語の認識が低いのではないでしょうか。これは、行政の周知が行き届いていないのか、ご本人の自覚の問題なのかは不明ですが、前述の行政側の「取組指針」、「取り組むべき事項」と要配慮者側との認識には、大きな乖離があると思います。
 さらに、次の資料をご参照してください。

避難行動要支援者名簿と個別計画
 行政が注力している「避難行動要支援者名簿」の登録状況21%、「取り組むべき事項」で挙げている「個別(避難)計画を作成している」5%です。数値が低い理由としては、名簿の場合は、障害であることを開示したくない、知られたくないなどです。個別(避難)計画の場合は、「取り組む事項」として公表されたのが平成25年であり、2年程度経過した時点でのアンケート調査(平成27年年末から平成28年年初)のため周知不足が理由と思われますが、残念な結果です。

3.「自助」の努力

 アンケートのコメントには、「本心は、・・・ひと思いに命が絶たれればいいと思っています」、「その時は、死ぬだろうなと思っています」、「避難所生活は無理」との声もあります。
 そこで、防災・減災は、「自助・共助・公助」のバランスと言われますが、行政との乖離が大きく、見知らぬ人には支援を頼めない状況であれば、まずは、「自分の命は自分で守る」を念頭に、要配慮者は、自ら、家族・親戚・知人などに働きかけ、「自助」の努力をしてみてはいかがでしょうか。

3.1 避難行動要支援者名簿への掲載

 名簿掲載が第一歩となりますが、ここで、本人自身が、「避難行動要支援者」の対象者となるか不安になる方は、まずは、自治体に確認してください。自治体も希望者を受け入れる方向で推進しており、「その他」として、対象者を認めている場合もあります。

避難行動要支援者その他
 自治体側の事情もあるかもしれませんが、連絡して、登録を試みてください。

3.2 平時からの備えと防災訓練

 「取組指針」では、要配慮者を対象とした研修として、
(1)避難行動要支援者名簿への積極的な登録
(2)障害者団体や福祉関係者等との関係作り
(3)家具固定等の室内安全化や備蓄の備え
(4)地域の防災訓練等への参加
(5)発災時に支援を期待できる連絡先(人・場所)を3ヵ所程度決める等
 地域の防災訓練は、事前に連絡した上で、参加し、自分の目で実情を確認することが重要です。小生は、市の指定避難所での防災訓練に参加したことがありますが、障害者対応にどのような面で配慮しているか確認しました。たとえば、バリアフリーの個所、手話担当者参加、点字訳、情報公開のために、体育館の壇上にスクリーンを張り、適時、編集者がポイント事項を作成し、オーバーヘットプロジェクターで映し出す、簡易トイレ等が参考になりました。特に、要配慮者本人が足を運ぶことにより、職員の方やボランティアの方に会い、最新情報やアドバイスを得ることができると思います。当然、支援関係を構築する機会となります。
 また、防災訓練等への参加は難しく、自身でもう少し知識を得たいのであれば、東京都防災ホームページの「災害時要配慮者への支援」が参考になると思います。
一例ですが、

東京都災害時要配慮者支援HP
東京都災害時要配慮者への支援

 受援者側(要配慮者)と支援者側を考え、支援者側として共助を必要とする備えもありますが、まずは、「自助」(本人・家族)ができるところを洗い出し、そして、親戚・知人等への協力支援を得られそうなところがあれば考慮して、スタートしてみては、如何でしょうか。行動を起こすことが重要です。

 最後に、本コラムは、要配慮者だけではなく、老老介護も同様です。少子化、核家族化などを社会背景とし、また、親が子供に迷惑を掛けたくないという思いから、今後も老老介護が増えて行くと思います。厚生労働省は、2019年の国民生活基礎調査の結果を7月17日に発表しました。そこには、要介護者と同居する介護者の年齢別分類では、65歳以上同士が、過去最高の59.7%に上ったこと、75歳同士は、33.1%という実態です。まずは、支援者側を期待する前に、要配慮者は、自ら、今できることとして「自助」の努力を目指すことが必要と思います。  
以上

この記事を書いたプロ

児玉 猛

防災士の資格を持つ「防災・減災」の行動計画の専門家

児玉 猛(初動プロセスマネジメント)

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