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児玉 猛

防災士の資格を持つ「防災・減災」の行動計画の専門家

児玉 猛(こだまたけし) / 防災・減災のコンサルタント

初動プロセスマネジメント

コラム

風水害の避難計画としてのマイ・タイムライン

2020年3月25日 公開 / 2020年4月15日更新

テーマ:防災行動計画

コラムカテゴリ:くらし

はじめに


 防災・減災の課題の背景として、都市への人口集中、核家族化、単身高齢者、地域との繋がりが希薄など、また、地域連携のある地区でも高齢化、過疎化など多くの課題があります。そのため、防災・減災に対する考え方や備えについても違って当然と思います。
 この頃、マイ・タイムラインを耳にするようになりました。テレビでも小池都知事が、「東京マイ・タイムラインがありますから・・・」の発言も記憶しております。
 ここでは、本格的な荒川下流のタイムライン、市区町村のタイムライン、地区のタイムラインではなく、河川氾濫のリスクのある地区の自助として、風水害での避難行動が取れる避難計画であるマイ・タイムラインをご紹介します。住民向けに公開している中から、国土交通省「みんなでマイ・タイムライン プロジェクト」と東京都「東京マイ・タイムライン」の特徴を理解され、自助としてのマイ・タイムラインの作成に興味を持っていただき、ご家族内で検討され、さらに、準備していただくことを期待します。

1.自治体のタイムラインへの取り組み

 最近10年ほどの間で、気象庁が名称を定めた大型の大雨・台風の災害内容は、以下の通りです。

気象庁命名の大型風水害
 これらは、甚大な被害が発生した風水害であり、多くの方々が犠牲となり、皆さんの記憶にも新しいと思います。対策として、8年ほど前から、避難行動が遅れないために、自治体の防災行動計画として普及し始めているのがタイムラインです。各自治体における策定状況ですが、国土交通省の平成28年8月の「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」では、平成32年度までに、河川氾濫の恐れのある730市区町村で、避難勧告等の発令に着目したタイムラインを策定することになっており、平成28年度7月時点では、570市区町村が策定している状況です。是非、本年度末までには、残りの自治体も策定してほしいと思います。

2.タイムラインの効果とマイ・タイムラインの推進

 平成27年関東・東北豪雨災害時におけるタイムライン活用での効果の有無に関するアンケート結果をご参照ください。関連する被災地域の自治体45団体の中で、タイムライン作成済みが18団体、未策定が25団体の状況です。これらの団体で、避難勧告等の発令割合を比較すると、策定済団体の場合は72%、未策定の団体は33%という結果であり、策定済の団体の方が、冷静に、住民への避難勧告などの発令ができたのではないかと推測します。また、市町村の声についても、「行動ができた」との積極的な発言になっています。

国交省タイムライン策定効果
 さらに、自治体は、風水害の防災・減災に対する住民の自助を推進しています。行政が頑張っているから住民も頑張ってほしいとい意向があるかもしれません。タイムラインは、行政と住民が同じ目線での避難行動が重要です。大雨・台風の場合は、災害発生(河川氾濫)までの時間的な猶予もあり、その間での準備、避難行動は可能です。どのタイミングで、誰が、何をするかを事前に決めていることにより、行動が迅速となり、自ら命を守ることに繋がります。そのために、自助としての防災行動計画として、マイ・タイムラインの名称で、身近に感じさせているのではないでしょうか。

3.マイ・タイムラインの紹介と作成例

3.1 「みんなでマイ・タイムライン プロジェクト」

 国土交通省 下館河川事務所の事例です。小中学校向けのマイ・タイムラインの検討ツール「逃げキッド」があり、学習しながら検討を深め、作成していく内容です。動画説明もあり、理解し易いものになっています。

逃げキッドの概要
 特徴は、(1)「チェックシート」があり、浸水継続時間、家屋倒壊の可能性などを国土交通省調査データを活用し、また、ペットを含む家族の状況などの確認となります。(2)「危機状況を知る」の項目では、目安として行動すべきタイミング(XX時間前)が記載されていることです。また、浸水継続時間に注目することにより、いつ水が引くのか判断できれば、在宅避難可否の判断の重要な情報となります。

浸水継続時間例

 マイ・タイムラインの完成のイメージは、以下の通りです。記入する場所は、「家 マイ・タイムライン」の列(ピンク色)です。参考回答をもとに、記載して見ました。(注)3分割で表示します。

国交省マイタイムライン1_3

国交省マイタイムライン1_2

国交省マイタイムライン最後

1列目の時間軸、2列目の市区町村の動き、3列目の地区の動きが事前に記載されており、4列目に、本人・家族の行動を記載します。また、備え(例)も5列目に記載されており参考になります。一枚での表現となるので分かり易いです。

3.2 東京マイ・タイムライン


東京都防災ホームページ
 作成ガイドがあり、リスクの捉え方として、東京都全体の地形として、西から東へ山間部、丘陵、平地、低地となっていること、水系として、多摩川、利根川、荒川と各水系の河川を明示しています。発生し易い風水害として、河川氾濫、土砂災害、高潮、内水氾濫などを分かり易く説明しており、また、具体的な河川として街中を流れる神田川、目黒川、石神井川、空堀川など、河川敷のある荒川、江戸川、多摩川などを挙げ、住民が身近にリスクがあることを感じさせます。
 特徴は、マイ・タイムラインの区分が3パターンあることです。
(1)台風(河川氾濫、土砂災害、高潮)
(2)大雨(河川氾濫、土砂災害)
(3)短時間での豪雨(河川氾濫、土砂災害)
 また、ガイドブックについては、一般用、高等学校用、中学校用、小学校4~6年生用、小学校1~3年生用となっており、対象者によって理解し易い内容となっています。学校などでの防災教育の向上を図っていると思われます。
 ここでは、一般用のガイドブックを利用して、台風の場合の例を作成しました。前提は、夫婦二人と猫2匹が賃貸マンションの4Fに住んでおり、町内会は入会している。入力内容は、大型台風が接近する場合の夫の行動計画です。全体として、警戒レベル(1~5)、避難情報、自然災害の対象、家族の行動計画など一画面で表示・印刷されるため関連が理解し易いです。こちらも、行政からの避難情報など事前の記載、また、地域との連携の記述箇所もあります。ただ、項目数、文字数の制限があります。

東京マイ・タイムライン台風事例
 東京防災ホームページの入力の参考事例として、下記のURLでご確認ください。
スマホ入力の場合
PC入力の場合

4.自助としてのマイ・タイムラインの重要性

 ご紹介したマイ・タイムラインは、いづれも河川氾濫などに伴う避難計画となっていますが、風水害については、台風に対する強風対応、都市部で頻発する内水氾濫の対応も必要と考えます。
 さらに、国土交通省の資料では、タイムラインの災害適用は、下記の図の通り、風水害などの進行型災害だけではなく、地震などの突発型災害に対しても適用可能と想定しています。

災害対応におけるタイムラインの位置付け
 最後に、マイ・タイムラインの名称の「マイ」にこだわりたいのですが、想定される自然災害のリスクに対し、公開情報などを参考にして、本人・家族、立地条件などからリスクを洗い出し、独自の「マイ」・タイムラインとして、行動計画ができる範囲から少しずつ作り上げることが重要と考えます。出来るところから、始めましょう。それから、田舎の両親と離れて都会生活をしている方が、両親のために、マイ・タイムラインを作成してあげることも自助になります。    以上

この記事を書いたプロ

児玉 猛

防災士の資格を持つ「防災・減災」の行動計画の専門家

児玉 猛(初動プロセスマネジメント)

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