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  1. 要配慮者(高齢者・障害者・乳幼児など)がいる家族の自助と共助
児玉 猛

防災士の資格を持つ「防災・減災」の行動計画の専門家

児玉 猛(こだまたけし) / 防災・減災のコンサルタント

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コラム

要配慮者(高齢者・障害者・乳幼児など)がいる家族の自助と共助

2020年2月27日 公開 / 2020年3月30日更新

テーマ:自助・共助・公助

コラムカテゴリ:くらし

 昨今、風水害では、65歳以上の高齢者の犠牲が多いと報道されています。それに対し、内閣府(防災担当)、消防庁(消防署)、各自治体では、特に、避難体制の整備、避難行動要支援者対策など住民向けにアナウンスしていますが、充分に浸透していなと思われます。住民側も他人事であり、被災し、初めて平常時からの準備に気付く方が多いと思われます。しかしながら、総務省(内閣府/防災担当、消防庁)の取組状況の調査結果では、避難行動要支援者名簿の対象となる市町村(1,740)の作成状況は、98.9%(1,720)となっており現状の被災状況と乖離している感があります。本コラムでは、家族に対象となる要配慮者(災害対策基本法では、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者であり、ガイドラインでは、妊産婦、疾患を持った人、外国人も含まれています。)がいる場合の対応と課題について説明し、対策としは、自助の徹底とある程度の覚悟が必要ではないかということを御理解いただきたきたいと思います。

1.避難行動要支援者とは

 平成25年6月の災害対策基本法の改訂後、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する人を「要配慮者」といい、そのうち、災害が発生し、又は、災害が発生するおそれがある場合に、自ら避難することが困難であり、避難の確保を図るために特に支援を要する対象者を「避難行動要支援者」ということになりました。平成26年4月に施行され、各市町村では、「避難行動要支援者名簿」の作成が必要となりました。そこで、昨年、消防庁が作成状況の調査結果報告を報道資料としてまとめており、内容の一部を紹介します。
避難行動要支援者消防庁資料
 正直なところ、自治体側の進捗状況がここまで進んでいるとは、認識しておりませんでした。私が居住している千葉県は、100%となっていますので安心しました。しかしながら、これは、登録制度の仕組みが出来ているだけであり、対象者の登録者数は、公開されておらず、また、実際に支援する側の支援内容、体制などには言及していません。

2.避難行動要支援者に関する課題

 前述で、避難行動要支援者名簿の策定手続きは良好と判断できますが、ここで二つ課題を提示します。ひとつは、対象者となる避難行動要支援者の方々をどれだけカバーしているか、もう一つは、名簿登録への登録は完了しましたが、実際の災害時に、誰が、どのように支援してくれるか、また、その体制です。

2.1 避難行動要支援者の対象者の把握

 避難行動要支援者の絶対数は、かなり多く、名簿漏れが多いと考えます。統計局の2019年9月15日の推計データでは、75歳以上(後期高齢者)の人口は、1,848万人です。自治体を訪問する度に、名簿と対象者数が大きく乖離している話を伺うことが多いですが、自治体側は、人口構成を把握しているため信憑性が高いと判断します。これは、名簿に登録するためには、本人または家族が名乗りでなければなりませんが、個人情報なども気になり、抵抗感が強いと考えます。家族の認知症、身体障害者、知的障害者、難病者などを知られたくないという気持ちが強いと考えます。
 対象者の例として、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月災害時要援護者の悲嘆対策に関する検討会)では、以下の通りです。

①介護保険の要介護:要介護3(重度の介護を要する状態:立ち上がりや歩行がなどを自力でできない等)以上の居住で生活している。
②障害程度:身体障害(1・2級)および知的障害(療育手帳Aなど)である。
③その他:一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯である。

 しかしながら、上記の①~③の要件を満たさなくても自ら名簿掲載を求めることも可能であり、前述の消防庁の調査結果でも「自ら掲載を希望した者」も千葉県では、68.5%の市町村が受け入れています。まずは、第一歩として、家族の中に対象者がいれば、名簿登録を御奨めします。

2.2 避難行動要支援者の支援体制

 災害時要支援者の避難支援のガイドライン(内閣府/防災担当 平成18年3月)では、「避難支援は、自助・地域(近隣)の共助を基本とし・・・」、避難支援者の定め方も「自助、地域(近隣)の共助の順で地域防災力を高めること。」となっており、具体的に、誰が助けるかを明確にしていません。消防庁の資料では、名簿の提出先が、民生委員(92.2%)、消防本部・署(79.1%)、自主防災組織(76.0%)となっていますが、民生委員の方々が見ている対象者を全員支援することは不可能であり、共助ということで地域の自主防災組織に支援を依頼したとしても高齢化している自主防災組織が対応できるかは疑問です。そこで、自助でどこまでできるか、本人自身、家族で支援体制を検討することを御奨めします。先日、豪雨被害のテレビの取材で、受援者と支援者の関わり合いとして実践されていたのは、受援者は、玄関まで自力で移動し、支援者は、玄関にいる受援者を助けるという光景でした。受援者自身が、自身で行動できる範囲を明確にすることも一例と考えます。

3.自助(本人または家族間)の徹底

 地震は、本人のいる場所、季節、時間帯なども関係なく発生します。こちらの都合は、聞いてくれません。また、風水害は、被害の発生まで時間的猶予があるため、時間を有効に使うことが可能ですが、どちらにしても、平常時での準備が重要です。
 ここで、避難行動要支援者のいる家族を想定し、現状での防災・減災の準備状況などを確認しながら地震発生の場合の行動を確認して見ましょう。

3.1 家族構成


(1)60歳代の夫婦と配偶者の母親(後期高齢者)が一人暮らしで、別居の生活をしている。
(2)夫婦には、子供がいないが猫が2匹、母親も猫1匹を飼っている。
(3)同一県内で居住してるが、距離は、約20キロメートル離れています。

3.2 家族内での受援者/支援者

 まずは、健康状態の確認が必要です。災害時に、誰が受援者で、誰が支援者でどのようなことをするのかとうことになります。本家族は、夫は持病がなく健康体ですが、妻は膝の具合が悪く長時間の歩行は困難です。また、母親は、後期高齢者であり、年齢による通常の病状はありますが、短時間の歩行は問題ありません。従いまして、母が受援者であり、夫が支援者であり、妻が支援の補助となります。

3.3 平常時での準備状況(自助)

 この夫婦は、防災意識が高く、日頃から、非常用の備品準備、飲料水と食品の備蓄をしています。大きな理由は、猫が2匹いるため在宅避難(避難場所や収容避難所に収容しきれない状況や避難行動の安全性を判断して住宅を選ぶ、避難所に避難しないことを言う。また、テント泊や車中泊も含まれる場合もある。)を念頭に置いています。

3.3.1 自助の準備状況

 夫婦の世帯においては、表3.3.1の通り、平常時での準備状況は、ほぼ問題ありませんが、母親の世帯では、水・食料の備蓄、携帯トイレ、非常用持出品(常備薬など)の準備が必要です。
自助の準備状況

3.3.2 共助・公助の準備状況

 家族の間で、全ての受援・支援が完結すれば良いのですが、やはり、予期せぬ事態も想定されるため、共助として他の支援者の協力も必要となります。共助・公助の準備状況は、表3.3.2の通りですが、共助に関しては、夫婦、母親ともに準備不足となっていますが、こちらの都合だけで、支援者をお願いすることは難しいと考えます。また、公助については、情報の収集が中心となっています。
共助・公助の準備状況

4.この家族を大震災が襲った場合の行動(例)

 ここで、例として、この家族が、大規模地震発生時(震度5以上)の際に、どのように行動するか考えてみました。これは、あくまでも、防災・減災の行動に正解はないといわれるため、想定内で検討した行動内容となっています。

4.1 地震発生時

 想定地震は、「千葉県地域防災計画の地震被害想定」を参考とし、千葉市直下型地震 震度6強(マグニチュード 7.3)、冬季 5時発生とします。まずは、地震発生時の受援者側、支援者側の関連情報のイメージです。
避難行動要支援者対応のイメージ

4.2 地震発生後の家族の行動 注)()内は、応急対応です。

(1)在宅避難の可否
①夫婦は、お互いの安全を確認する。(ケガがあれは、応急手当)
②居住内の出火、マンション出火、近所の火災状況を確認する。(初期消火、近隣火災の消火活動支援)
③妻が母に電話連絡し、状況確認する。(不通、または、出ない場合は、民生委員に安否確認の依頼)
④自宅住居内の損傷状況確認し、在宅避難の可否判断をする。
⑤在宅避難が可能であれば、住居内を避難対応に模様替えする。(生活のルールを決める)
⑥在宅避難が不可能であれば、妻は、非常用持出品(防災リュック)を準備し、猫2匹をキャリーバックに入れて、避難所小学校へ移動する。夫は、母親の自宅に向かう。冬場の早朝であり、ライト、服装、食料・水などを選択し、持参する。

(2)母親の安否確認と救出・救護
①夫は、交通機関の運行停止、幹線道路の規制を考慮し、徒歩で母親のマンションに向かう。
②約7時間かけて、昼頃に、マンションに到着する。 
③入室が可能であるかの状況を確認する。(立入禁止の場合は、待機)
④自治会の安否確認のルールで、黄色いタオルを窓の格子に結ぶことになっており、また、ドアの扉のメモ(避難所中学校への避難情報など)を確認する。(不明の場合は、民生委員または自治会に確認)
⑤母親を見つけて、今後の避難生活について話し合う。(妻とは適時連絡)
⑥状況を民生委員に伝える。(連絡先などをメモで渡す)
⑦母親宅の猫1匹を確保し、キャリーバックに入れる。

(3)母親がケガをしている場合
①夫は、救命講習を受けているため、応急措置(止血、骨折、心肺蘇生など)をとる。ただし、肢体が家具などで抑えられている場合は、クラッシュ・シンドローム(挫滅症候群:重量物による長時間の圧迫が原因で生じる骨格筋の虚血や損傷、圧迫の解除による再灌流が主な病態)の可能性もあり、すぐに家具を動かさないで、救出を依頼する。
②母親の救出・救護が完了するまで、現地に留まる。

(4)夫と妻の連絡方法
 適時、災害伝言ダイヤル、災害用伝言板などを利用するが、回線切断、通信の輻輳もあり注意する。

4.3 まとめ

 想定できる範囲で行動を検討しましたが、共助は、安否確認での民生委員(自治会)、公助は、クラッシュシンドローム対応(救急隊員)と避難所入所の場合であり、他は、自助となります。この想定は、条件が緩いとご指摘があるかもしれません。しかしながら、要配慮者のいる家族の方々は、現状の防災・減災準備状況、家族間での支援体制、また、体制については、いつ発生するか分からない状況で維持できるか否か、代替案(共助)があるのかなどを検討、準備することが必要です。是非、「その時のための行動」を家族で話し合ってください。
以上

この記事を書いたプロ

児玉 猛

防災士の資格を持つ「防災・減災」の行動計画の専門家

児玉 猛(初動プロセスマネジメント)

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