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土田茂

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土田茂(つちだしげる) / ファイナンシャルプランナー

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コラム

やはりお勧めできない外貨建て保険

2019年3月25日 公開 / 2021年2月3日更新

テーマ:資産運用

コラムカテゴリ:お金・保険

こんにちは。
ファイナンシャルプランナーの土田です。


さて、今日は前回の「日本人がどんどん貧しくなっている!?」の記事の続きのような内容です。
※前回の記事をまだお読みでない方はぜひ読んでみて下さい。


前回は主要国で唯一日本人の収入が20年間で上がっていない(米ドルベースで換算)ことを挙げ、その為にも「お金にも働いてもらう」ことで収入を上げる必要があるという内容でした。


老後資金や教育資金のために資産形成をするという事ではなく、そもそも日本自体が貧しくなっているので自己防衛が必要という事です。※恐ろしい現実ですね(汗)

では、資産形成をどのような方法で行うべきでしょうか?

私をはじめ、お金の専門家であるFPはiDeCoやつみたてNISA、積立投信などの「積立投資」で形成する事が良いと考えていますが、まだまだ一般的ではないようです。投資はハードルが高いというのが一般的な考えでしょうか。(特に東北、取り分け秋田県はそういう方が多いですね)

そこで、一般的な将来資金の形成方法は「生命保険」の活用となっています。

しかし、このHPでも繰り返し述べているように、残念ながら今の超低金利環境で保険商品は資産形成の観点から見て全くお勧めできない商品になっています。

これは生命保険を販売する側からも保険では昔と比べて圧倒的に「利息に魅力がない」ことから、利息的に魅力ある商品を開発しないと売れないという事もあって各社がこぞって出している商品があります。

それは「外貨建て保険」です。

日本円は超低金利のため、米ドルや豪ドルなどの通貨で運用をすることにより、金利が日本円建ての保険よりも高くなります。そのため、保険の提案では日本円建て保険よりも利息がつくので、魅力的に見える商品といえるでしょう。


そのため、生命保険会社の直販社員や最近主流の保険ショップや銀行、代理店などでも契約が多い商品となっています。


では、この外貨建て保険で資産形成した場合に、前回の問題「日本が貧しくなっていくこと」への対策はできるのでしょうか?


まず、商品自体を試算してみると、

45歳男性が65歳までの20年間を外資系某社の保険で資産形成した場合
毎月の掛金 611米ドル 満期までの支払総額146,640米ドル 満期受取金 162,304米ドル
となります。満期時に1割程度増えることになり、また年金受取の原資にもできます。

これだけ見るといかがでしょう?結構良さそうに見えませんか?
とはいえ、この保険にはリスクがあります。

為替リスクというものです。
ご存知の通り為替は毎日変動します。


こういった保険の場合、支払時の為替と受取時の為替が円安で払い円高で受け取ると日本円にした場合に利息が少なくなってしまいます。当然逆であれば多くなります。

毎月払うので現実的ではありませんが、例えば払込時は平均120円で払い、受取時に円高で110円になった場合で計算すると
146,640ドル×120円=17,596,800円を支払い
162,304ドル×110円=17,853,440円を受取る
ことになり、差額は256,640円のプラスになります。


毎月73,000円ものお金を20年間運用して利益が25万円では寂しい限りですね(汗)

勿論逆に円高→円安であれば
146,640ドル×110円=15,910,400円
162,304ドル×120円=19,476,480円
となり3,566,080円もの利益になります。

しかし、為替はどうなるかわかりません。

仮に運次第で将来の資産形成が決まるとしたらどうでしょうか?
意外に大きいリスクと思いませんか?

そして、前回の記事を思い出して下さい。

日本は過去20年デフレで給料が上がりませんでした。
アメリカやその他主要国はインフレもあり給料が上がっています。


その間の為替ですが、
97年平均 1ドル=120.99円→2017年平均 1ドル112.16円
となり円高になっています。

デフレ=物が安くなりお金の価値が上がる
インフレ=物が高くなりお金の価値が下がることです。

今も日本はデフレです。
アメリカは2%を超えるインフレです。

という事はこのままいけば将来はどうなるでしょうか?

仮に過去と同じペースなら
2017年 1ドル=112円
2037年 1ドル=104円!?

という計算になります。
※もちろん為替は様々な要素があり変動するため予測はできません!
※日本もインフレになると当然条件が変わります。あくまで過去20年と同じであればの話しです。

また、お金は物を買う力(購買力といいます)で比較するという考え方もあります(購買力平価)

一番有名なのはマクドナルドのビックマックは世界で同じような品質で販売されているので、ビックマックがいくらかを比較する事で物価や為替を見る「ビックマック指数」というものもあります。
※物価も様々なものが絡むため、あくまでも参考程度の指数ではありますが…

これで言うと
2019年の米国でのビックマック価格は5.58ドル
日本のビックマック価格は390円
1ドル110円で計算するとアメリカではビックマックは613円となります。

もし、ビックマックが同じ値段として売られるためには1ドル=70円程度にならないといけません。

つまり、ビックマック指数で考えると今は極めて円安といえそうです。
※繰り返しになりますが、必ず円高になると言っている訳ではありません。あくまでもこういう考え方もあるという事です。


という事で、外貨建て保険での資産形成は為替リスクで考えるとあまりお勧めできないという事になります。また、そもそもの利回りも日本円建てより高いとはいえ、約1%/年程度の利回りしかありません。※よく、保険商品のパンフレットや設計書に記載されている「予定利率」を利回りと勘違いされている方がいますが(そう説明されている方もいるようです)予定利率は利回りではありませんのでご注意を!

つまり、外貨建て保険は期待リターンに比べてリスクが高いと言えそうです。


最期に、私は通貨分散の考え方は正しいと思っています。ただ、その方法として「生命保険商品」を使うメリットがあまりないと思っているのです。※同じ為替リスクを取るなら、米国の債券を買った方が利回りも高く流動性(途中での換金などの自由度)もあります。

とはいえ、手軽に通貨分散ができ、保障も得られる(保険はやはり保障が強みです)商品でもありますから、しっかりとした目的を持ち、リスクも考えた上でのご加入をお勧め致します。


ご不安な方はぜひご相談下さい。


今日もありがとうございました。

この記事を書いたプロ

土田茂

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土田茂(ライフ・デザイン・ラボ)

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