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倉片稜

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倉片稜(くらかたりょう) / 高度外国人材の活用コンサルタント

KUROFUNE株式会社

コラム

注目の在留資格「特定技能」徹底解剖セミナー(2020年5月28日開催)VOL.1

2020年5月29日 公開 / 2021年1月7日更新

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 人材育成 研修採用支援働き方改革

昨日「Digima〜出島〜 海外ビジネスサロン」さん主催の『注目の在留資格「特定技能」徹底解剖セミナー』にて登壇してきました。2019年の入管法改正によって、新設された「特定技能」ビザについて、私見を交えながらご紹介させていただきました。講義時間は60分で、質疑応答は30分だったのですが、質問が15個以上出てきて途中で打ち切ってしまうくらい反響がありました。みなさんご興味・ご関心いただきありがとうございます!!そこで今回はセミナーにて実際に使ったスライドを交えながら、紹介したいと思います。


【申込終了】注目の在留資格「特定技能」徹底解剖セミナー


今回のセミナーは主に4つのアジェンダでお話しさせていただきました。
①日本の人手不足の現状と外国人労働者
②特定技能制度について
③特定技能は「ホントウ」にいい制度なのか?
④新型肺炎によって特定技能はどうなるか?



①日本の人手不足の現状と外国人労働者



まずはこの衝撃的な数字をご覧いただければと思います。
1700万人という数字です。これが意味しているのは、これから2045年にかけて日本が消失していく労働力人口の数となります。


このデータは2017年にみずほ総研さんが推計したものですが、これから30年かけて日本は1700万人の労働力人口減少という局面に対処していかなければいけません。単純計算すると56万人が毎年減っていくのです。とんでもない労働者不足の時代が来ることが予想されます。




実際の雇用統計にもその人手不足がデータとして現れています。日本は1974年のオイルショック以来の有効求人倍率の高さとなり、人手不足が戦後で2番目に高い時代がやってきました。有効求人倍率というのは、1人の仕事を探している求職者あたり、何社の仕事があるのかといったのもを示しているものです。この赤い点線の1.0倍を超えると人手不足。つまり人が雇えない会社があるような状況。1.0倍を下回ると、仕事が見つからない人があふれるような状況です。2018年についに有効求人倍率は1.6倍を超えて、戦後で2番目に高い数字となりました。2019年も悪化していることが予想され、現在は新型肺炎の影響で一時的に需要が落ち込んでいますが、この人手不足のトレンドは変わらず、引き続き人手不足が深刻になっていくことが予想されます。


人手不足が深刻であると言われているのがこの4業種です。「宿泊・飲食」「介護」「建設」「製造」です。平均の1.6倍を大きく上回っています。その中でも特に人手不足が深刻なのが「建設」です。現場で働くとび職などが該当する「建設躯体工事」はなんと11倍!11社に1社しか人が採用できていないのです。セミナーで話していても、どの会社も人が雇えなくて困っていると話を伺います。他にも「宿泊・飲食」で実際に料理を提供したりフロントに立つ「接客・給仕」は4倍を超えています。4軒の飲食店、あるいは4施設のホテルがあったら1つしか人材が確保できていない状況です。製造業も業種によっては人手不足が深刻であり、検査や修理をする仕事は人手不足の傾向があります。




2008年に日本の総人口が減少に転じましたが、日本政府が2010年代から「高齢者の活用」「女性の活用」ということを推進しており、2010年代は労働力人口の減少はほとんど起こりませんでした。しかし高齢者の活用も女性の活用もかなり進んできたため、労働力人口を維持するにはそれ以外のターゲットに絞るしかありません。それが外国人労働者なわけです。実際に外国人採用を進めている企業は現在急増しており、2013年には留学生を採用していたのは16.9%でしたが、2018年には31%まで増えています。ここ5年で約2倍に増えました。皆さんに注目していただきたいのが、これが大企業ではなく、中小企業の数字である点です。



外国人労働者は2012年から急増しています。2012年の68万人から2018年には146万人とここ6年で約2倍となっています。特にここ最近では毎年20万人以上の外国人労働者が日本にて新しく就業しており、2019年の速報値も166万人と前年比+20万人となっていました。2020年は新型肺炎の影響もあり、外国人労働者の数は一時的には落ち込むものの、2021年以降は再び同様の規模で外国人労働者が増えてくることが予想されます。


さらに多くの外国人が日本で働けるように、昨年の4月に入管法が改正され、今回のテーマでもある「特定技能」ビザが新設されることになりました。既存のビザとはまた別に、日本政府は5年で34.5万人の外国人労働者を受け入れることを決めました。


ここでビザについて簡単に触れたいと思います。ビザは別名で「在留資格」と言います。日本に滞在することができる資格です。外国人はこの在留資格を持っていなければ日本に滞在することができません。現在、日本には何種類のビザ(=在留資格)があるでしょうか?正解は29種類です。意外に多いと言われるケースがあります。報道ビザや宗教ビザなどすごく細かく分かれています。いわゆる永住ビザも4種類に分かれています。この中で、日本で仕事ができるのは左の青色の枠と右上にある緑色の枠の2つだけです。オレンジの枠は留学生や観光客などで日本での仕事が禁止されています。そして今回、新しく仕事ができるビザとして「特定技能」ビザが新設されました。



2018年の外国人労働者の146万人のうち、約50万人の方が永住ビザで働いています。そして高度人材と言われる「技術・人文知識・国際業務ビザ(=通称:技人国ビザ)」は23万人、単純労働として働いている「技能実習生」が33万人、そして留学生のアルバイトが30万人です。留学生は就業することは禁止していますが、資格外活動の許可を取って週に28時間のアルバイトを行うことは認められています。ここに特定技能の34.5万人が加わります。日本で就業する方のほとんどはこの中のどれかのビザを保有しています。



ここまでの話を簡単に3点でまとめます。まず1点目は「日本社会は慢性的な人手不足の状況であること」です。労働力人口の減少数をカバーできるだけの労働力を確保することが難しいため、この人手不足トレンドは基本的には変わりません。今回の新型肺炎のように急速に景気が悪化した場合に、一時的に有効求人倍率等は落ちますが、本日発表があった2020年4月の有効求人倍率(ちなみに1.32倍でした)を見てわかるように、それでもまだ1.0倍を超えていて人手不足の状況には変わりありません。2つ目としては、「外国人の頼らざるを得ない状況であること」です。高齢者活用・女性活用が進み、次に政府として進めているのが外国人の採用です。最近では氷河期の世代の活用も打ち出してきました。外国人労働者の活用に関しては法律を変えてまで政府が本腰を入れて進めています。今後も急速に増えていくと予想できます。最後に「業種間での差が広がっていること」です。先ほどあげた4業種のようにとにかく人が足りないところもあれば、実は有効求人倍率が1.0倍を下回っている業種もあります。業種間での差はこれからも広がっていくと予想できます。


②特定技能制度について



では特定技能ビザがどのようなものであるかをご紹介します。特定技能ビザを知るためには類似するビザである「技術・人文知識・国際業務ビザ(=技人国ビザ)」いわゆる高度ビザと言われるものと、「技能実習生ビザ」単純労働が認められているビザのこの2つのビザをきちんと知らなければなりません。特定技能ビザができる前は、この2つに該当しないような仕事があり、グレーゾーンの範囲がありました。例えば、飲食店で接客業務を行う方やホテルのフロントに立つ方です。技能実習生で認められている仕事ではないし、高度人材にも該当しない。今までは、外国人観光客に対応するための「通訳をする人材」としてビザを通していました。


そこで2つに該当しないようなグレーなところの範囲を明確化して、単純作業ができるビザとしてこの特定技能ビザができました。技能実習生の仕事の範囲と技人国の仕事の範囲が一部かぶるような形で職種内容が設定されています。特定技能ビザができたことにより、今までグレーだった仕事でも、適切なビザでホワイトに働けるようになりました。



ではまず「技人国ビザ」について詳しく解説したいと思います。このビザは単純作業が不可です。基本的には大卒以上の専門的な知識が必要だと認められる仕事のみ可能です。半永久的に更新でき、10年働くと永住ビザに切り替える可能性があります。このビザを取得するためには、外国人労働者は大学を卒業する必要があり、例外として日本の専門学校を卒業していれば取得することができます。そして最も難しいのが、大学で学んだ内容と仕事内容の関連性が必要であることです。この条件を満たせず、ビザが通らなかったケースをよく聞きます。技人国ビザでいま日本にいるのは、中国人が最も多く、ベトナム、韓国、台湾、アメリカと続きます。理系であればエンジニアだったり、設計者、文系であればマーケティングや通訳業務などが該当します。



次に技能実習生を紹介します。現在では82職種146作業のみ認められています。どの職種でどの作業をするかをきちんと決めた上で来日します。あくまでも技術移転・国際貢献が目的であり、仕事を日本で覚えて本国でその技術を生かしてもらう意味合いが強い研修制度です。3年間で帰国するパターンが多いですが、最長5年間いることができます。このビザの最大の特徴は「転職できないこと」です。研修の意味合いがあるので、いろんな仕事を経験するのではなく、3年間しっかりと同じ会社で技術を学ぶというのがこのビザの狙いです。現地では送り出し機関、日本では管理組合を経なければならず、仲介業者を必ず2社挟まなきゃいけない特徴もあります。このビザはベトナム人がダントツで多く、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマーと続きます。



そして特定技能です。特定技能は14業種のみに認められており、スライドにある業種が該当します。この14業種合わせて34.5万人の受け入れですが、業種ごとに細かく人数が割り振られています。特に人手不足が深刻な、介護(60,000人)建設(40,000人)外食業(54,000人)宿泊業(22,000人)は、受け入れ人数が特に多くなっています。



では簡単に3つのビザの違いを踏まえて特定技能を紹介します。まずは期限が異なります。技人国ビザは半永久的に更新できるために期限はありません。また永住ビザにも切り替えることができます。一方で技能実習生は3年から5年と決まっており、3年で終える人がほとんどとなります。特定技能は5年間いることができますが、一部業種では永続的に更新することができます。技能実習生から特定技能に変更することも可能で、その場合は通算8年間日本にいることができます。

学歴の要件は技人国にはありますが、他の2つにはありません。その代わり、特定技能は日本語試験と技能試験が必要になります。仕事の内容としては技人国は専門的な仕事のみで、技能実習生は単純作業のみですが、特定技能は単純作業も可能であり、専門的な仕事も可能です。

給与水準については注意が必要です。全て日本人と同等の水準にしなければなりません。これは働き方改革の一環で同一労働同一賃金が基本となりますので、同じ仕事をするのであれば賃金水準は同一にする必要があります。ただ、技能水準が一定に達していない、コミュニケーションを行うために通訳を介さなければならず専門的な仕事を任せられないなど、合理的な理由がある場合は差別的な賃金水準を設けることは可能です。ただ基本は同一賃金同一労働である点は注意してください。

家族帯同は技人国の方は可能ですが、技能実習と特定技能は不可です。ただこれも一部の業種のみ特定技能で家族帯同が認められています。そして今からお伝えする点が一番大きな差になると思います。技能実習生は転職は不可能ですが、特定技能と技人国は転職が可能です。後ほどでもお話しさせていただきますが、ここの違いがあるので、企業としてもどのビザを使うべきなのかをきちんと考えなければなりません。

最後に技人国は海外の送り出し機関も日本の組合も不要ですが、技能実習生は両方とも必要になります。一方で特定技能に関しては現地での送り出し機関も日本での管理組合も不要になります。その代わり、登録支援機関といった機関に依頼してサポートしてもらうことも可能です。




では実際に特定技能の人材を採用するためにはどのような条件があるのかを紹介します。まずは本人の要件です。これは2つしかありません。1つは各14業種が実施する技能試験に合格する必要があります。あるいは技能実習生として3年間優良に研修を終えることができれば、そのまま特定技能に変更することも可能になります。もう一つの条件は日本語能力です。日本語能力試験4級(N4)程度の日本語力があることが求められます。これは日常会話が少しできるくらいの日本語とイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。

そして受け入れ機関、つまり企業の条件です。これは4つあります。まずは14業種の中で該当する仕事をさせていることです。これは14業種に該当すればなんでも受け入れられるというわけではありません。前に相談があったのですが、ゴルフ場の芝を刈ったりして管理する仕事は特定技能者として働くことができるか?と問い合わせがありました。確かに建設業に該当する仕事ですが、これは特定技能で認められる仕事ではないので不可能となります。2つ目は雇用契約を適切に結んでいること。先ほどのように賃金水準は、現在は厳しく見られるので注意してください。3つ目は今までに不正な外国人雇用がなかったこと、4つ目が適切な支援体制があることです。この4つ目が意外とネックなのです。



具体的に求められている支援体制はこのスライドの通りです。入国前から入国時の支援、そして入国した後も適切に支援していかなければなりません。これは支援内容の一部であり、外国人労働者の生活を適切に支援していかなければなりません。特にこの赤字で書いてあるところは、母国語での支援が推奨されています。なかなか難しいですよね。そのため登録支援機関に業務を委託して支援内容を全てやっていただくことも可能です。



以上が特定技能についての説明となります。
セミナーで話した後半部分である、『特定技能は「ホントウ」にいい制度なのか?』『新型肺炎によって特定技能はどうなるか?』については注目の在留資格「特定技能」徹底解剖セミナー(2020年5月28日開催)VOL.2にてご紹介させていただきます。
後半編はこちら

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