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上總隼(かずさたかし) / 行政書士

ハヤブサ法務事務所

コラム

相続法改正⑥ ~預貯金の仮払い~

2020年2月10日

テーマ:相続

コラムカテゴリ:法律関連

⑤ 預貯金の払戻し制度の創設(改正民法909条の2)

平成28年12月19日最高裁判決により、「相続された預貯金は遺産分割の対象となり、遺産分割が終了するまでの間は、相続人全員の同意がない限り、相続人単独での払い戻しは原則としてできない。」とされました。
 その結果、亡くなった人の口座は凍結され、残された相続人は急ぎの支払いが困難になる事態がありました。この事情を考慮し、今回の相続法改正により「相続された預貯金について、相続人全員の同意がなくても、遺産分割協議前に払戻しが受けられる制度」が新設されました。
この制度は、次の二つの手続きにより利用することができます。

預貯金の仮払い制度の新設
(1)金融機関に対する仮払いの請求
共同相続人のうちの一人が金融機関の窓口で仮払いの請求をする場合は、

相続開始時の預貯金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分

を単独で払戻しをすることができる金額となります。但し、この計算式で算出した金額の範囲内であればいくらでも良い、というわけではありません。

この改正法の趣旨は、残された人が当面お金に困らないようにすることなので、改正法では、「標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案した額を限度」としています。また、「預貯金債権の債務者ごと(金融機関ごと、複数の口座がある場合は合算)の上限金額」を省令で定めることとしており、その上限額を150万円とする案が2018年9月28日に公表されました。

(2)家庭裁判所の保全処分を利用する
家庭裁判所では、仮払いの必要性があると認められる場合、他の共同相続人の利益を害さない限り、申立てによって仮払いが認められるようになりました。
この手続きは、引き出し額に上限はなく、申立額の範囲内で必要性が認められれば、特定の預貯金の全部を取得することもできる点がメリットですが、家庭裁判所への申立てなど煩雑な手続きをしなければならず、仮払いの必要性も明らかにしなければなりません。
どちらの手続きを利用するかは、相続人の必要な金額に照らして使い分けをすることになると考えられます。

※預貯金の仮払い制度については、2019年7月1日施行。




引用:法務省

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